・BCP強化とサステナブル工場で供給安定化へ
DMG森精機は4月10日、グループのマグネスケール(東京都江東区)が、4月9日、奈良県大和郡山市に奈良事業所を開所したと発表した。高精度リニアエンコーダ「レーザスケール」の専用生産拠点として、半導体製造装置向け需要の急拡大に対応する生産能力増強と、事業継続計画(BCP)の強化を目的とした新工場だ。投資額は約117億円、敷地面積1万3,220㎡(約4,000坪)、延床面積1万7,622㎡(約5,331坪)の地上3階・地下1階建てとなる。
レーザスケールは、最先端半導体製造装置の位置決めに不可欠な基幹要素の一つ。検出ヘッドでは、回折格子スケールからの回折光を活用した格子干渉計原理により、記録ピッチよりも細かい信号周期を実現。さらに、温度・気圧・湿度の環境変化を光学的にキャンセルする独自原理を組み合わせ、高分解能かつ極めて高い安定性を確保している。
信号処理面では、干渉信号の高分解能内挿と精密な波形補正により、内挿誤差を極限まで抑制。スケール本体は、発売以来一貫してホログラフィック干渉露光法を採用しており、優れたリニアリティ(直線性)が最大の特長だ。これにより、半導体微細化や後工程の積層化・高精度化が進む中で、pm(ピコメートル)レベルの位置検出を支える位置決めセンサーとして高い評価を得ている。
従来の生産を担ってきた神奈川県伊勢原事業所との相互バックアップ体制を構築することで、地政学的リスクや自然災害時の供給途絶を防ぐサプライチェーンを強化。両拠点を合わせた年間生産能力は6万軸に到達する見込みで、2030年にマグネスケール全体の売上高300億円を目指す。
新工場では、生産効率と品質の両立に向けた先進的な取り組みも導入。AGV(無人搬送車)と生産管理システムを連携させた自動搬送システムを採用し、部材から仕掛品までの工程間搬送を完全自動化。自律走行による最適ルート選択で、リードタイム短縮と生産性向上を実現する。
環境面では、製造工程の脱炭素化を最優先課題に位置づけ、2026年2月より工場屋根に大規模太陽光発電パネルを設置。発電容量約491kW、年間想定発電量約54万kWhの電力全量を工場に供給し、空調・照明の全電力を賄う。これにより、年間約225トンのCO₂排出削減を見込む。再生可能エネルギーを活用した「次世代型スマート工場」として、持続可能な生産体制を確立した。
マグネスケールは1969年創立(現社名でのDMG森精機グループ入りは2010年)。本社は東京都江東区で、代表取締役社長は大野治氏。レーザスケール、マグネスケール、デジタルゲージの開発・生産・販売を手掛け、国内生産拠点は伊勢原事業所(神奈川)、伊賀事業所(三重)に加え、今回の奈良事業所が新たに加わった。
同社は「生産能力の増強と同時に、クリーンエネルギー活用によるサステナブルな工場運営を通じて、最先端半導体市場の成長に技術と供給の両面から貢献していく」としている。半導体後工程の需要拡大や生成AI・データセンター向け半導体投資の活況を背景に、高精度位置検出技術の重要性は今後さらに高まると見られる。
■プロジェクト概要
所在地:奈良県大和郡山市上三橋町355-1
開所:2026年4月
敷地面積:13,220㎡
延床面積:17,622㎡
投資額:約117億円
建物:地上3階・地下1階
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