三菱重工、2024事業計画が大幅前倒し進捗、2026年度事業利益5,400億円見通し

・レジリエンス領域で成長加速

三菱重工業は5月27日、2024年度から始まった中期事業計画(24事計)の進捗を公表した。2025年度に受注高・事業利益・当期利益・キャッシュフローが過去最高を更新し、事業利益率とROEの目標を1年前倒しで達成したことを明らかにした。2026年度は事業利益5,400億円(当初計画4,500億円超)、事業利益率10%、受注残を着実に消化しながら高水準の収益基盤を確立する方針だ。

■2025年度までの業績概況

エネルギー・防衛分野を中心とした伸長事業が牽引し、受注残は13兆円を超過した。特にGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)、原子力、防衛の3分野が好調で、生産能力の大幅強化が奏功した。

  • GTCC:1,000を超えるカイゼンにより生産能力を3割増強。J形ガスタービンの受注が急増し、アフターサービス(AS)需要も拡大。
  • 防衛:飛昇体(ミサイル等)のリードタイムを1/3に短縮。名古屋新工場建設やフィジカルAIを活用した自動検査を推進。
  • 原子力:使用済燃料キャスクの製造能力を25%向上。設計ツール標準化でエンジニアリング工程を30%短縮。

一方、プラント・インフラ、インダストリアルソリューション、航空・防衛・宇宙の一部ではサービス高度化やシナジー創出を進め、全体として高利益体質への転換を加速させた。

市場別では、海外受注が堅調に推移。特に米国でのGTCC・水素混焼プロジェクト、欧州でのCO₂回収、英国原子力案件などが寄与した。

■2026年度以降の見通し

2026年度は売上収益5.4兆円、事業利益5,400億円(利益率10.0%)、ROE12%を計画。キャッシュイン2.6兆円(計画比1.1兆円増)を見込み、成長投資1.2兆円と株主還元0.3兆円を継続する。

伸長事業は受注残の確実な遂行を最優先に、Factory Innovation Center(FIC)を活用した縦横の全体最適(ITO:Innovative Total Optimization)を推進。共通基盤(設計・製造技術、デジタル・AI、サプライチェーン)を強化し、リードタイム短縮と収益力向上を図る。

成長領域ではデータセンター関連(冷却モジュール、高セキュリティ型エッジデータセンター)とレジリエンス基盤(CO₂回収、排熱利用ヒートポンプ、次世代地熱ORCなど)を本格事業化。社会インフラの強靭化ニーズを取り込む。

■中期経営計画の方向性と具体策

基本方針は「高利益体質と成長投資の好循環」。これを支える2本柱は全体最適(ITO)と領域拡大である。

  1. 全体最適(縦×横)
    • 縦:各事業のバリューチェーンスリム化(業務プロセス化、デジタル・AI活用、製造自動化)
    • 横:事業間リソース共有(人材、技術、購買)、横断タスクフォース
    • 成果:無駄のないリソース拡充と新たな利益創出
  2. 領域拡大
    • 共通基盤を活かしたレジリエンス分野への展開(安全・安心、エネルギー安定供給、モノづくり基盤再構築、BCM強化)
    • オープンイノベーションとパートナリングを積極活用
    事業別強化策:
  • エネルギー:GTCCの大型化・水素対応、原子力の新設・バックエンド、CO₂回収との組み合わせ
  • 防衛・宇宙:ミサイル増産、艦艇、航空機関連、衛星・無人機
  • プラント・インフラ:廃棄物発電、セメント工場向けCO₂回収、水素製造プラント
  • インダストリアルソリューション:データセンター冷却・電源、物流・ロボティクス、Supercomputing展示
    人的基盤強化も並行。モノづくり人材を2.4倍に拡大し、DI(デジタルイノベーション)人材19,000人体制を構築。AIによる技能伝承(暗黙知の形式知化)やVR教育を積極展開。
    伊藤栄作社長CEOは「事業環境の変化により当社が貢献できる領域が拡大している。レジリエンスをキーワードに、共通基盤を活かしたポートフォリオ経営で飛躍的な成長を実現する」と強調した。

三菱重工は次期中期計画に向けて、数値目標のさらなる具体化を進める方針。防衛・エネルギー需要の拡大と生成AI・フィジカルAIを活用した製造革新を背景に、機械・重工業界における存在感を一段と高めていく。

ニュースリリース