酒井重工、中期経営計画2031を策定、売上420億円・営業利益55億円へ

・道路ローラ世界一流ニッチ企業目指す

酒井重工業は8月7日、2031年3月期を最終年度とする「中期経営計画2031」を公表した。道路建設機械、特に締固め用ローラを主力とする同社は、「道路建設機械における世界一流のグローバルニッチ企業」をビジョンに掲げ、成長が続くローラ市場で製品投入力とエリア別戦略による売上拡大、隣接領域進出、事業運営高度化を通じた収益性向上を目指す。

■2025年度までの業績概況
2021年6月公表の「中期的な経営方針」では、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE8.0%、DOE4.0%を目標とした。実績は売上高275億円、営業利益16億円、ROE5.7%、DOE3.0%と未達に終わった。ただし2024年3月期には売上高330億円、営業利益33億円、ROE9.0%を一時達成し、目標を前倒しで実現した時期もあった。その後、外部・内部要因の影響で最終着地が下振れした。

地域別では海外が大きく伸長した。2021年3月期から2026年3月期にかけて海外売上は85億8,200万円から150億3,500万円へ75.2%増。特に北米は32億4,500万円から72億5,200万円(123.5%増)、インドネシアは5億8,600万円から26億6,000万円(353.4%増)と大幅拡大した。中国は減少したものの、国内は130億4,200万円から125億500万円(4.1%減)と高シェアを維持。全体売上は216億円から275億円へ27.4%増となった。

テーマ別では、新製品開発による海外売上・市場シェア拡大が進んだ。北米では大型舗装用振動ローラの売上増や緊急ブレーキ「Guardman」の上市、ASEANではインドネシアを中核とした拡販と鉱山領域参入が成果を上げた。国内では高シェア維持に加え、電動ローラや自動運転ローラ(ARMs)の開発を推進。一方で、利益の安定成長には改善余地が残り、自動運転・電動製品の早期事業化や営業生産性向上、中国メーカー低価格品への対応、研究開発の海外ニーズ対応力などが課題として指摘された。

■2026年度以降の見通しと中期経営計画

グローバルなローラ需要は、主要3市場(日本・北米・ASEAN)で短期的な変動を内包しつつ中長期で持続成長する見通しだ。

日本では流通在庫調整が2026年から底入れし、国土強靭化投資・防衛関連予算増額、インフラ老朽化に伴う維持・補修需要が追い風。北米は金利上昇による在庫調整はあるものの、道路整備予算拡大やデータセンターなど民間建設需要が底堅い。

ASEANは市場回復基調ながら中国製品流入による競争激化が続く。テクノロジー面では建設現場の自動化・省人化ニーズが拡大する。

こうした環境下、中期経営計画2031では3つの柱を据える。

  1. 研究開発による高付加価値製品の投入(次世代技術製品=ICT/自動化、安全、電動化、省人化の開発加速、市場性・競争優位性を見極めた迅速な上市)
  2. 隣接領域への進出・拡大(防衛・防災・河川堤防および鉱山領域への既存製品展開と同領域向け製品開発)
  3. 運営体制の最適化・アフターサービスの強化(次世代製品への営業リソース選択と集中、サービス体制構築による顧客接点強化と部品販売促進)

数値目標は、2026年3月期実績(売上275億円、営業利益16億円、ROE5.7%)に対し、2029年3月期に売上365億円・営業利益40億円・ROE8.0%、2031年3月期に売上420億円・営業利益55億円・ROE10.0%を掲げる。5年間の研究開発費は約50億円を投じる。

■地域別戦略の具体策は以下の通り。

国内(成熟市場の質的成長):高付加価値製品による市場創造と営業生産性1.5倍化。自動運転ローラ(ARMs)や電動ローラの営業推進・開発、緊急ブレーキ対応機種拡大、未開拓の防衛・防災・河川堤防領域への営業強化と同向け製品開発、SalesforceやAI活用による効率的営業とニーズ発掘を進める。主力はダム用大型振動ローラ(ARMs対応)、土工用ローラ(SVシリーズ)、緊急ブレーキ対応機など。

北米(成長市場の深耕):高収益性を維持しながらの市場シェア向上。政府・業界団体への技術営業、空白地域ディーラー開拓、ディーラー教育強化、高付加価値製品(緊急ブレーキ、タイヤ振動・高周波振動ローラ、マカダムローラなど)のデモツアー実施、在庫最適化と遠隔管理システムを活用したサービス向上を図る。

ASEAN(変化する需要を捉えるモデル展開):コアモデル投入による新規顧客開拓・離反顧客奪回とマージン改善、鉱山対応製品の積極営業、補修保全工法(CAE)の行政認証促進による補修市場取り込み、キャビンなど現地高需要オプションの内製化、緊急対応体制と巡回点検による部品販売促進を展開する。主力は10〜20t土工用ローラ、大型舗装用振動ローラ、切削機など。

研究開発では、規制対応に加え市場性・競争優位性を重視したテーマ選定と迅速上市を徹底。緊急ブレーキの新機種対応、AIカメラ搭載安全機能、政府重点市場向け製品拡充、ASEAN向けコアモデル投入などを進める。

キャッシュアロケーションでは、2027〜2031年3月期に営業CF140〜150億円を見込み、成長投資(研究開発約50億円、設備投資25〜30億円、機動的枠15〜25億円)を90〜105億円優先配分。有利子負債も積極活用する。株主還元は配当性向50%の成果還元とDOEを意識した安定配当を継続し、60〜70億円を見込む。ROE向上と持続的成長によるPER向上でPBR1倍超を目指す方針だ。

同社は1918年創業の道路建設機械スペシャリストとして、多種多様な材料の締固め技術や振動・防振技術、多品種少量生産体制を強みとする。今回の計画は、これらの強みを次世代技術と隣接領域でさらに磨き、ユーザー・協力会社・社員・ステークホルダー全体の豊かな生活に貢献する「ありたい姿」の実現に向けた具体的な道筋を示したものと言える。

ニュースリリース