三井E&S、中期経営計画「Rolling Vision 2026」を策定、2028年度に売上高4,400億円・配当性向30%を目指す

三井E&Sは5月25日、新たな3カ年中期経営計画「三井E&S Rolling Vision 2026(RV26)」を策定・公表した。2025年度の好業績を土台に成長戦略を加速させ、2028年度には売上高4,400億円・営業利益420億円・配当性向30%の達成を目指す。グリーン・デジタル技術を両輪に、舶用推進システム・物流システム・保守メンテナンスの3事業を中核に据えた事業拡張戦略を明確化した。

  1. 2025年度業績概況――豊富な工事量を背景に計画を大幅に超過

■全社業績

2025年度(2026年3月期)の連結業績は、受注高3,158億円、売上高3,532億円、営業利益376億円(営業利益率10.7%)となり、前中計「Rolling Vision 2025(RV25)」の計画値(売上高3,400億円、営業利益率7.0%)を大きく上回った。旺盛な工事需要と財務規律の徹底が奏功し、ROICは16%に達してWACC(9%)を2年連続で上回った。自己資本比率も計画の39%から46.3%へ大幅に改善した。配当性向は5%から15%へ引き上げ、中間配当も初めて実施した。発行体格付はA-を取得している。

■事業別動向

【舶用推進システム】
アンモニア焚き二元燃料エンジンの開発が順調に進捗した。温室効果ガス(GHG)削減に対する海運業界の需要を取り込み、グリーン技術を軸とした受注が拡大した。

【物流システム(港湾クレーン)】
米国・アジア(日本除く)市場で受注が大きく増加した。2025年度の米国・アジア向け受注実績はポーテーナ11基、トランステーナ56基。遠隔・自動化クレーン率は7%と前年度の6%から上昇し、環境・デジタル対応製品への転換が進んでいる。なお、2024年4月に米国での港湾クレーン採用検討が浮上したことが株価上昇の一因となり、2025年6月の政府「骨太の方針」への造船再生盛り込みとも相まって株価は大幅に上昇した。

【成長事業(保守・メンテナンス)】
デジタル予防保全技術を活用した保守・メンテナンスビジネスが拡大した。港湾関連製品の自動化・システム化累計案件数は2025年度で509件となり、年度目標の460件を上回るペースで進捗している。

■環境目標の進捗

環境対応製品による累積CO2削減量は2025年度で81万t-CO2/年となった。年度目標88万tにはやや届かなかったものの、2030年度目標の1,000万t-CO2/年に向けて概ね順調に推移していると同社は評価している。

  1. 2026年度以降の見通し――保守的な初年度から2028年度に向け加速

■数値計画の全体像
2025年度実績 /2026年度計画 /2027年度計画 /2028年度計画

受注高 :3,158億円 /3,700億円 /4,000億円 /4,500億円

売上高:3,532億円 /3,700億円 /4,100億円 /4,400億円

営業利益 :376億円 /320億円 /380億円 /420億円

営業利益率 :10.7% /8.6% /9.3% /9.5%

自己資本比率 :46.3% /48% /48% /50%

2026年度は物価上昇や中東情勢の緊迫化など外部環境の不確実性を一定程度織り込み、営業利益は前年度実績比で減少する保守的な計画となっている。一方、2027年度以降は中核事業の成長加速と新規事業の拡大により、売上高・利益とも右肩上がりの回復軌道を描く。

■事業別・市場別の見通し

【舶用推進システム】
アンモニア等を燃料とする二元燃料エンジンの開発を加速させ、燃料供給装置・高圧LNGポンプ・オーバーハング型発電機といった周辺機器のビジネスを拡充する。海上輸送の脱炭素化需要を取り込み、エンジン単体から周辺システム全体を提案するソリューション営業に軸を移す。

【物流システム】
2026年度の受注金額は2025年度比で約10%増を見込む。遠隔・自動化クレーン率は2025年度の7%から2026年度に一旦5%程度へ低下するが、2027年度には14%まで急上昇する計画で、高付加価値製品への構成シフトが一気に進む見通し。生産能力の増強に向けては、ベトナムでの製造委託を活用し増産体制を構築中。米国・アジア市場でのシェア拡大を明確なターゲットに掲げる。

【成長事業(保守・メンテナンス)】
デジタル技術を活用した予防保全ビジネスの強化を最重点課題に位置付ける。2026年4月より、ドローン自動飛行ルート作成アプリ「ドローンスナップ」で取得した画像・動画をクラウド上で一元管理する「ドローンスナップクラウド」のサービス提供を開始した。世界的に老朽化が進むスチームタービン等への保守需要を取り込み、遠隔監視サービスとドローン点検システムを組み合わせた「点検プロセス全体のデジタル化」で競合との差別化を図る。

  1. 中期経営計画の骨格――グリーン×デジタルで2030年ビジョンへ

■基本方針と方向性

同社の企業理念は「エンジニアリングとサービスを通じて、人に信頼され、社会に貢献する」こと。2030年ビジョンとして「マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と人口縮小社会の課題解決を目指す」を掲げる。RV26はこれを具体化するものであり、「マーケティング(Marketing)とイノベーション(Innovation)の両輪」を経営の基軸に据え、社会・顧客の潜在ニーズをデジタル技術で把握し、グリーン・デジタル技術による解決策を提供するサイクルを回すことで、受注と利益の持続成長を狙う。

■キャッシュフロー配分と財務目標

RV26の3年間(2026〜2028年度)における営業キャッシュフローは累計約1,000億円を見込む。このうち約70%(約700億円)を成長・開発投資に、約30%(約300億円)を株主還元・財務基盤の強化に充てる。

成長投資の内訳は事業成長投資に約450億円、事業開発投資(うち研究開発投資約50億円を含む)に約250億円を計画する。設備投資は2025年度実績91億円から2026年度136億円、2027年度149億円へと大幅に積み上げ、物流システム事業の増産体制整備や舶用推進システムの開発加速に振り向ける。

財務指標の目標はROIC10%・ROE12%を3年間維持し、配当性向は2026年度20%→2027年度25%→2028年度30%と段階的に引き上げる。

■事業別の具体的強化策

【保守・メンテナンスビジネスの拡大(デジタル活用)】
既設設備の老朽化が世界規模で進む中、同社はデジタル予防保全技術を武器に保守・メンテナンス事業の拡大を図る。具体的には遠隔監視サービスによるリアルタイムの稼働状況モニタリングと、ドローンを用いた自動点検・クラウド管理の組み合わせにより、顧客の保守コスト削減と設備稼働率向上を支援するサービスモデルを展開する。保守・点検分野における品質・精度の向上と効果の定量把握を通じ、継続的な収益基盤として育成する方針。

【舶用推進システム事業(グリーン技術の深化)】
アンモニア焚き二元燃料エンジンの開発を中核に据え、LNG・アンモニアなどのグリーン燃料に対応した推進システム全体のソリューション化を推進する。燃料供給装置や発電機など周辺機器の拡販も積極的に展開し、エンジン単体売りからシステム提案型ビジネスへの転換を加速させる。2030年度の環境対応製品による累積CO2削減目標1,000万t-CO2/年(従来仕様製品比)の達成に向け、技術開発への集中投資を継続する。

【物流システム事業(増産体制の確立と製品拡充)】
米国・アジア市場での旺盛な港湾インフラ需要に対応するため、ベトナムへの製造委託を柱とする増産体制の構築を急ぐ。製品戦略面では、環境対応型クレーン(グリーン)と遠隔・自動化クレーン(デジタル)の2軸で製品ラインナップを拡充し、高付加価値製品の比率を高める。遠隔自動トランステーナの開発を推進するとともに、港湾デジタルソリューション(CTMS等)の世界展開も視野に入れる。

■人材戦略

マーケティングとイノベーションを推進する人材基盤として、多様性の確保を重視する。女性比率は従業員全体で2030年度までに10%(現状8.0%)へ、外国人比率は同7%(現状4.4%)へ引き上げることを目標に掲げる。中途採用を年間60〜70人規模で継続するほか、海外大学生の採用を強化し、2026年度の初任給は全学歴で6%以上引き上げた。入社5〜10年目を対象とするジョブローテーション制度の定着を図り、社内の人材流動性と成長機会を高める。エンゲージメントサーベイを導入し、男女・新卒・中途・国籍別の意識差を可視化しながら職場環境の継続的な改善につなげる。

■まとめ

三井E&Sは、2025年度の計画超過という良好な実績を基盤として、「グリーン×デジタル」を軸とした成長戦略を一段と加速させる。特に保守・メンテナンスビジネスのデジタル化、アンモニア対応二元燃料エンジンの開発加速、物流システムの増産・製品拡充という3本柱が事業成長の中核を担う。財務面では3年累計約1,000億円のキャッシュを戦略的に再配分し、成長投資と株主還元を両立させる方針で、2028年度の配当性向30%達成を明確な約束として掲げた。

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