・2030年度純利益100億円目標
東洋エンジニアリングは6月19日、2026~2030年度を対象とする新中期経営計画「社会基盤を支え、次なる成長を創る」を発表した。長期ビジョン「TOYO VISION 2040(EPCの枠を超え、社会価値を共創・実装するパートナーへ)」の実現に向けた最初の5年間と位置づけ、EPC(設計・調達・建設)で培った実行力を核に、運転・保全(O&M)まで含むプラントライフサイクル(PLC)全体へ事業領域を広げる方針を打ち出した。
■2025年度までの業績概況
前中期経営計画(2021~2025年度)では、肥料・尿素ライセンスやEPs案件を中心に非EPC粗利が着実に成長し、2025年度の非EPC粗利構成比は25%以上の目標を達成した。インド・中国など主要拠点の粗利構成比も45%以上の目標をクリアし、拠点単位の収益貢献が進んだ。一方、CN(カーボンニュートラル)事業の投資決定の遅れにより新規事業領域の粗利構成比は目標未達となった。
業績面では、2025年度に一部の国内案件およびブラジル発電案件の損失を一過性費用として織り込んだ結果、連結当期純利益は赤字(特別損失計上前のベースで前年から大幅減)となり、3年間平均で連結当期純利益50億円以上、2030年度100億円という前中計のKGI(最終目標指標)は未達に終わった。ROE(自己資本利益率)も2025年度10%以上の目標に届かなかった。連結売上高は、FPSO事業の合弁会社OFS(Offshore Frontier Solutions)を含む事業規模で目安としていた3,000億円規模を達成している。
部門別では、全社横断型のリスク審査体制の構築や共創型EPCへの転換、FPSO(浮体式洋上石油・ガス生産貯蔵積出設備)EPC事業による安定収益基盤の確立、DX基盤整備とAWP(Advanced Work Packaging)実行基盤の構築、GX(グリーントランスフォーメーション)技術の社会実装やグリーンアンモニア等の新規事業展開を推進した。ただし過去の損失案件の教訓を踏まえ、品質関連損失コストの拡大が課題として残り、2023年に事業ポートフォリオ委員会、2025年1月にプロジェクト管理本部を発足させるなど、リスク管理体制の高度化を進めてきた。
■2026年度以降の事業環境見通し
既存事業領域では、肥料がインド・サブサハラ・中南米・中央アジアを中心とした人口増加に伴う新設・改造需要の拡大を背景に投資が旺盛。石油化学・化学はインド・米国でエチレン関連の設備投資が継続する一方、中国の供給過剰により汎用品分野では投資選別が進む。FPSOは中南米・アフリカでの深海油田開発需要が中長期的に継続する見通し。発電はエネルギー転換とデータセンター需要を背景に設備投資が拡大し、アジアでは地熱・バイオマス・廃棄物発電等の再エネ案件形成が進展。医薬は国内バイオ医薬市場が補助金を背景に活況で、インド市場の成長による案件拡大も期待される。
新規事業領域では、先端素材・ファインケミカル、次世代型地熱、プラント省エネ・GHG削減、海洋資源開発・重要鉱物の各分野で投資拡大基調にある一方、燃料アンモニア・水素やSAF(持続可能な航空燃料)・合成燃料分野は支援制度や国際海運規制の動向待ちで投資判断がやや慎重化している。
同社は、CAPEX増大や技術・調達・許認可リスクの多層化により、従来の競争入札型EPCでは初期段階の不確実性を十分に織り込めなくなっていると分析。顧客とコントラクター双方が構想段階からリスク・コスト・工程を可視化する「共創型EP・EPC」への進化が必要だとしている。
■中期経営計画の方針と数値目標
新中計の基本方針は「社会基盤を支え、次なる成長を創る」。肥料・石油化学・FPSO・GXなど社会に不可欠な主力事業(収益エンジン)で稼ぐ力を高め、そこで得た技術・人財・資金を、バイオ医薬、先端素材・ファインケミカル、O&M、次世代型地熱、重要鉱物といった将来の成長ドライバー領域へ振り向ける「フロー型×ストック型」の二軸収益モデルを掲げる。
数値目標(KGI)は、2030年度の連結当期純利益100億円(2025年度は損失計上、2026年度見込みは60億円)、ROEは各年度12%以上を維持。ストック型ビジネスの粗利構成比率は2030年度に10%とし、2040年には40%まで拡大する青写真を示した。KPIとしては、共創型EP・EPC受注件数比率を2030年度に50%以上、先端素材・ファインケミカル、バイオ医薬、O&Mの粗利構成比率を同年度30%以上とする目標を設定した。配当性向は25%以上を想定する。
■事業戦略:5つの柱
事業戦略は「①共創型EPC戦略」「②重点地域戦略」「③高付加価値領域戦略」「④新技術・事業開発戦略」「⑤O&M戦略」の5本柱で構成される。
①共創型EPC戦略では、顧客の企画段階から参画し、FS・FEED(基本設計)段階でリスクを精査した上で、設計成熟度の向上に合わせて段階的にランプサム契約へ移行する「Lump Sum Conversion」方式を、先端素材やFPSO分野で実績ある手法として他分野へも展開する。あわせて、本社専門部隊による受注前リスク審査の徹底、履行中プロジェクトの週次モニタリング、独立したプロジェクト支援チームによる早期是正支援体制を構築し、不確実性に強い遂行体制への転換を図る。
②重点地域戦略では、グループ最大の収益・キャッシュ創出拠点であるToyo-India(インド・ムンバイ、従業員約2,200名、売上高約300百万米ドル)を起点に、中央アジア・サブサハラ・中東への展開を推進。Toyo-China(先端素材EPC)、Toyo-Malaysia(重要鉱物・CN燃料)、IKPT(インドネシア・地熱)、OFS(FPSO)、TPS(日本・医薬/ファインケミカル/O&M)、Toyo-Korea(半導体・CN)など各拠点の専門性を生かした地域展開を進める。Toyo-Indiaは1976年設立から50年、累計案件実績600件超の実績を持つ。
③高付加価値領域戦略では、先端素材・ファインケミカル分野で日系化学メーカーの海外進出を構想段階から支援し、インド市場での受注拡大を狙う。バイオ医薬分野では、国内子会社TPSが受注粗利の30~40%を占める主力事業に成長しており、日本で培った技術・顧客基盤をToyo-Indiaへ展開してインド市場にも参入する。
④新技術・事業開発戦略では、前中計で培ったGX技術の社会実装・収益化を加速する。グリーンメタノール(NTPCと連携)、小型アンモニア分解によるクリーン水素製造技術(中部電力・日本精線と連携)、廃プラスチック油化(タイSCGCと連携)について、ライセンス展開・EPC受注・事業参画・運転保全(PLC)という多様な収益化モデルでの商業案件形成を目指す。次世代型地熱では米国GreenFire Energy社と協業し、同軸二重管クローズドループ技術を日本・インドネシア・フィリピン・ケニア等へ展開。重要鉱物分野では、レアアース製錬で培った技術を基盤に、微生物を活用した低濃度レアアース回収技術の研究開発を進め、資源循環型サプライチェーンの構築を目指す。
⑤O&M戦略では、60年以上のプラント建設・試運転実績とインドの運転・保全人財プールを活用し、アフリカ・中央アジア等で安定操業・保全高度化に関するO&M需要を取り込む。O&M専門企業との協業も活用する方針。
■経営基盤戦略
事業戦略を支える経営基盤として「人財・組織戦略」「DX/AX戦略」「財務戦略」の3つを重点に位置づける。
人財・組織戦略は「Base and Beyond」をコンセプトに、EPC(Base)を核とした専門人財から、PLCへの能力拡張を担う共創越境人財への転換を図る。2026年4月には、エンジ・技術総括本部と工事本部の再編・統合、技術・事業開発本部の新設、O&Mソリューション営業部・先端産業営業部の新設など、事業戦略と連動した組織改編を実施した。
DX/AX戦略では、TOYO AWPやGDOC(2026年4月にToyo-India内に設立したグローバル・デジタル・オペレーション・センター)を活用し、EPC実行力の進化、PLC領域での価値創出、経営意思決定支援の高度化を図る「AXイニシアチブ」を推進する。
財務戦略では、営業キャッシュフローの配分を株主還元(配当性向25%以上)、財務基盤強化、成長投資(人的資本・O&M/PLC新領域・R&D・M&Aなど)にバランス良く振り向け、資本コストを上回るROE12%の実現・維持を目指す。2025年度の損失を踏まえ、中計前半は財務基盤の回復・安定化を優先する考えを示した。
同社は今後、地政学・経済・環境・技術・社会の外部環境変化に応じて戦略を定期的に見直す「ローリング型経営」を採用し、固定的な前提に基づく計画運用から脱却するとしている。
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