三菱マテリアル(東京都千代田区)は7月31日、連結子会社であるH.C.スタルク・タングステン(H.C. Starck Tungsten GmbH)のドイツ・ゴスラー工場で、タングステンリサイクル能力を増強するため約5,000万ユーロ(約93億5,000万円、1ユーロ=187円換算)を投資すると発表した。新設備は2026年内に着工し、2028年中の完成を予定している。
今回の投資では、ゴスラー工場のタングステンスクラップ処理能力を現在の年間約5,000トンから約7,000トンへと約5割引き上げる。これにより欧州における重要鉱物の安定供給と資源循環基盤を強化するとともに、リサイクル原料の活用拡大を図る。
H.C.スタルク・タングステンは、三菱マテリアルが2024年に連結子会社化したH.C.スタルク・ホールディング(H.C. Starck Holding GmbH)の中核事業会社で、100年以上の歴史を持つ世界有数のタングステンメーカー。欧州、北米、中国でタングステン粉やタングステンカーバイド粉などを製造・販売するほか、日本にも販売網を持つ。使用済み超硬工具などから回収したスクラップを原料とするリサイクル事業も展開しており、世界最大級のリサイクル能力を有している。
タングステンは超硬工具をはじめ幅広い産業で使用される重要鉱物である一方、鉱石資源が一部地域に偏在し、近年は地政学リスクの高まりから安定供給の重要性が増している。現在、ゴスラー工場で使用するタングステン原料の約80%はリサイクル由来となっているが、設備増強後は工場で使用する原料のほぼ全量をリサイクル原料で賄える見込みだ。
三菱マテリアルグループは中期経営戦略(2026~2028年度)で「資源循環ビジネスで未来を創る企業へ」を基本方針に掲げ、2030年度までに欧州、米州、アジア、日本のタングステン製品製造拠点におけるリサイクル原料使用比率100%の実現を目標としている。今回の投資は、その実現に向けた中核施策の一つとして位置付けられ、欧州におけるタングステン資源循環基盤の拡充と重要鉱物の安定供給強化を目指す。
■プロジェクト概要
・事業名:H.C. Starckタングステンリサイクル能力増強プロジェクト
・事業主体:H.C.スタルク・タングステン(H.C. Starck Tungsten GmbH)
・所在地:ドイツ・ゴスラー工場
・投資額:約5,000万ユーロ(約93億5,000万円)
・工事内容:タングステンスクラップ処理設備の新設・能力増強
・処理能力:年間約5,000トン→約7,000トン
・着工:2026年内
・完成予定:2028年中
H.C.スタルク・タングステンのハディ・セイエダ(Hady Seyeda)CEOは、「今回の投資はゴスラー工場だけでなく当社全体にとっても重要な節目となる。工場で使用するタングステン原料のほぼ全量をリサイクル原料で賄えるようになることで、一次原料の供給環境悪化の影響を大幅に低減できるほか、ドイツおよび欧州における真の循環型社会の構築にも大きく貢献する」とコメントしている。