・生産性向上を加速
川崎重工業は7月16日、米半導体大手エヌビディア(NVIDIA Corporation)と、フィジカルAIおよびデジタルツイン技術を活用した「次世代デジタルシップヤード」の実現に向けたコラボレーションを開始したと発表した。商船の設計から建造、将来的には運用・保守までを一体的にデジタル化し、造船業界の生産性向上と建造能力の拡大を目指す。
今回のプロジェクトでは、川崎重工が長年蓄積してきた造船現場のデータやノウハウ、ロボット技術と、エヌビディア(NVIDIA)の「NVIDIA Omniverse」「NVIDIA Isaac」「NVIDIA Cosmos」などのAI・シミュレーション基盤を組み合わせ、坂出工場(香川県坂出市)を対象に、商船建造をワンストップで支える次世代生産システムの構築を進める。
国内造船業界では、熟練技能者の減少や人手不足が深刻化する一方、脱炭素対応船の需要拡大を背景に、生産能力の強化が急務となっている。川崎重工はこれまで、BOM(部品情報)とBOP(工程情報)に基づく商船DXやデジタルシップヤードの推進に加え、国土交通省・内閣府事業の一環として造船所向けAIロボットの開発にも取り組んできた。
今回の協業では、これらの取り組みをさらに発展させ、AI、ロボット、自律システム、デジタルツインを融合した高度な造船システムの実現を目指す。
■主な取り組みは4分野で構成される。
第1に、デジタルツイン技術を活用した次世代デジタルシップヤードの構築である。設計・生産工程を仮想空間上で再現することで、手戻りリスクの低減や工程最適化を図る。
第2に、AIロボット導入環境の整備である。NVIDIA Isaacプラットフォームを活用し、ロボットの動作計画や経路生成、シミュレーションを行い、溶接、塗装、検査、搬送などへの迅速な導入を実現する。また、施工・検査データとAIを連携させることで、施工条件の最適化や品質判定精度の継続的な向上も目指す。
第3に、エージェントAIを活用した造船プロセスの効率化である。設計、調達、製造、品質管理など各工程にAIを適用し、作業支援と生産性向上を図る。
第4に、船舶ライフサイクルへの適用である。建造時のデータを就航後の運航、保守、改造へと連携し、ライフサイクル全体を支援する基盤の構築を目指す。
まずは坂出工場で技術実証を進め、得られた成果を他の大型構造物の製造現場へ展開するとともに、引き渡し後の船舶運航やメンテナンスの効率化にもつなげる考えだ。
エヌビディア(NVIDIA)のロボティクス&エッジAI担当バイスプレジデント、ディープ・タラ(Deepu Talla)氏は、「造船は世界でも最も複雑な製造業の一つであり、フィジカルAIは船舶の設計・建造の新たなあり方を切り開いている。川崎重工の知見と現場データをNVIDIA Omniverse、Cosmos、Isaacと組み合わせることで、設計から建造までをつなぎ、AIロボットの訓練・検証をシミュレーション上で行うことが可能となり、次世代造船所の実現に貢献できる」とコメントした。
川崎重工業の橋本康彦社長は、「NVIDIAとの協業は、造船業におけるAI活用を新たな段階へ進める重要な取り組みである。長年培ってきた造船技術と先進的なAI・シミュレーション技術を融合し、設計、生産最適化、技能継承を高度化するとともに、未来の造船業を支える新たな価値創出に挑戦する」としている。
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