・マルチエージェント統合制御基盤を開発、HMAXを進化
・異種設備・ロボットを横断制御
日立製作所は7月16日、米エヌビディア(NVIDIA)と、フィジカルAI(Physical AI)を活用した製造現場や社会インフラ運用の高度化に向けて協業すると発表した。両社は、日立のAIソリューション群「HMAX by Hitachi(HMAX)」の進化を目的に、複数のAIエージェントを統合制御する「マルチエージェントオーケストレーション技術」を開発する。
今回の協業では、日立製品だけでなく、異なるメーカーの設備・機器や既存システムを含めたベンダーフリーの統合制御環境を構築し、現場全体の最適化と自律化を目指す。ロボット、モビリティ、エネルギー、産業設備など幅広い分野でフィジカルAIの社会実装を加速する。
日立は、社会インフラ向け知能基盤モデル「IWIM(Integrated World Infrastructure Model)」と、NVIDIAの世界基盤モデル「NVIDIA Cosmos」を接続し、デジタルツイン上で設備・機器の動作を事前検証できる環境を構築する。これにより、AIによる制御判断の安全性や信頼性を高め、ミッションクリティカルな現場への適用を進める。
また、NVIDIAの「Agent Toolkit」「NVIDIA NeMoClaw/OpenShellセキュアランタイム」「NVIDIA Nemotronモデル」などとIWIMを連携させ、複数のAIエージェントを安全に統合管理する「マルチエージェントオーケストレーションプラットフォーム」の構築を進める。
同基盤では、各企業が保有する機密情報や独自ノウハウを保護するソブリン性(データ主権)を確保しながら、異なるAIや設備を柔軟に接続できるオープンなアーキテクチャを実現する。
■HMAXをフィジカルAI基盤へ発展
日立は2024年に発表した「HMAX」について、NVIDIAのGPUコンピューティング技術やエッジAI技術を活用しながら機能強化を進めてきた。今回の協業により、HMAXを単体設備の高度化だけでなく、現場全体を自律的かつ協調的に制御するプラットフォームへ発展させる。
その中核を担うのが、日立独自の「Physical AI FDE(Forward Deployed Engineer)」である。これは、GlobalLogic(グローバルロジック)が持つデジタルエンジニアリング力と、日立が長年培ってきたOT(制御・運用技術)や社会インフラ分野の知見を融合した専門家組織である。
Physical AI FDEは、顧客現場に入り込み、AI適用領域の検討からシステム構築、実証までを伴走する。レガシー設備から最新型ロボットまでを連携させ、現場環境に応じた自律化ソリューションを提供する。
■NVIDIA CosmosとIWIMを連携、デジタルツインで安全検証
両社は現在、社会インフラ領域へのフィジカルAI導入に向け、「マルチエージェントオーケストレーションプラットフォーム」の技術検証を進めている。
検証項目は以下の3点。
① 社会インフラ知識と世界基盤モデルの連携
日立のIWIMとNVIDIA Cosmosを接続し、設備の物理的制約や安全ルールをデジタルツイン上でシミュレーションする。AI特有の誤判断(ハルシネーション)による誤作動を抑制し、安全な制御判断を実現する。
② セキュアな統括AIエージェントの構築
NVIDIA NeMoClawを活用し、複数のAIエージェントを管理する統括エージェント環境を検証する。オープンプロトコルによる設備間通信やタスク移譲を可能にするとともに、サンドボックス機能などにより情報漏えいや不正アクセスを防止する。
③ 設備・現場状況のリアルタイム把握と協調制御
NVIDIA NemotronのマルチモーダルAIモデルを活用し、現場や設備の状態をリアルタイムに分析。制御バルブ、四足歩行ロボット、小型カメラロボットなど、多様な機器を状況に応じて最適制御する技術を検証する。
■産業横断型フィジカルAIエコシステム形成へ
日立は今後、NVIDIAとの協業を通じて、産業用ロボットなどのグローバル企業を含むパートナーとのフィジカルAIエコシステム形成を推進する。
日立製作所の德永俊昭執行役社長兼CEOは、「フィジカルAIの価値は、多様なAIやシステムを統合制御し、現場全体の自律化と最適化を実現することにある。NVIDIAとの協業により、オープンでセキュアな基盤を構築し、フィジカルAIの社会実装を大きく前進させる」とコメントしている。
一方、NVIDIAロボティクス兼エッジコンピューティング担当バイスプレジデントのDeepu Talla(ディープゥ・タッラ)氏は、「日立のOTとドメイン知識、NVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティング、世界基盤モデル、エージェントAI技術を組み合わせることで、HMAXを産業分野で安全かつ高度な運用を実現するプラットフォームへ進化させる」と述べている。
日立は、HMAXとPhysical AI FDEを軸に、製造業や社会インフラ分野におけるAIトランスフォーメーション(AX)を推進し、持続可能な産業発展への貢献を目指す。
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