安川電機、AIロボット「MOTOMAN NEXT」で人手に依存する領域に挑む

・多品種少量生産や食品分野の自動化を加速、バイオ実験・箱詰め・透明物ピッキングで実証

安川電機は6月23日、産業用ロボットの新境地を拓くAIロボット「MOTOMAN NEXT」を活用したソリューションを発表した。従来のロボットでは自動化が困難だった「人の五感や経験に基づく曖昧な判断」を伴う作業領域にAIを融合し、自律的な認識・判断・動作を実現。機械関連業界で深刻化する人手不足や技能伝承の課題解決に向け、注目を集めている。

■産業用ロボットの限界を超えるオープンプラットフォーム

産業用ロボットはこれまで製造現場の自動化に大きく貢献してきた。しかし、自然由来の試料や多様な商品、透明・不定形物などの扱いでは、作業者の目視判断や柔軟な対応が不可欠で、人材確保や品質のばらつきが課題となっていた。

これに対し安川電機が開発したMOTOMAN NEXTは、AIロボティクスを実現するプラットフォームだ。ロボット本体に自律制御ユニット(ACU: Autonomous Control Unit)を内蔵。視覚・力覚センサーやGPUを標準搭載し、ロボット自身が環境変化を認識・判断し、リアルタイムで動作を計画・実行する。ユーザーやパートナーは必要な機能をソフトウェアパッケージとして容易に構築・組み込み可能で、「Easy to Use」を徹底した設計となっている。

同社は本プラットフォームを活用した3つの活用事例を公開。多品種少量生産や食品分野を中心に、高効率化の可能性を示した。

■事例1:バイオ実験分野 ― 細胞の状態をAIが自律判断

バイオ実験では、自然由来の試料の形状や状態が毎回異なり、作業者による目視判断に依存していた。特に細胞培養の「継代」作業では、細胞の分散度合いや内容物の混ざり具合を判断し、剥離・回収する必要がある。感染リスクも伴うため、自動化のニーズが高い。

MOTOMAN NEXTでは、カメラ画像をAIが解析し、細胞の塊の大きさや分布を認識。最適な剥離軌道を計画して実行する。細胞の状態変化にも柔軟に対応し、ばらつきの少ない安定作業を実現。蓄積したデータを活用したAI再学習により、さらなる効率向上も期待できる。この技術は資源・リサイクル分野の目視選別作業などへの展開も有望だ。

しかし事例2:箱詰め作業 ― ネットスーパー需要に対応する柔軟自動化

多品種商品の箱詰めでは、重い物は下に、割れやすい物は上に配置するといった人の無意識の判断が求められる。従来のルールベースではシステムが複雑化し、実運用が難しかった。

MOTOMAN NEXTは商品の大きさ・重さ・特性情報を基にAIが配置を判断・計画。NVIDIAのIsaac SimおよびIsaac Labを活用したシミュレータ上で強化学習を行い、短時間で効率的なモデルを構築した。仮想環境で学習したモデルをそのまま実空間に適用可能で、注文変動にも柔軟に対応する。物流分野の積付け作業などへの応用が期待される。

■事例3:透明・不定形物のピッキング ― AlliomWorks CupLoaderとの連携

食品充填機などへの透明カップ投入作業は、スタックされたカップの状態が多様で、従来ビジョンでは認識が困難だった。

株式会社エイアイキューブのソフトウェアパッケージAlliomWorks CupLoaderをMOTOMAN NEXTに組み込み、AIがカップの連なり方を認識し、安定把持ポイントを算出。多種類のカップに対応し、曲がった状態でも確実に取り出し・投入を実現する。パッケージには学習済みAIモデルとGUIが含まれており、AI未経験のユーザーでも容易に導入可能だ。MOTOMAN NEXTのオープンプラットフォーム特性により、外付けPC不要で運用負担を大幅に軽減している。

フィジカルAIで社会課題解決へ
安川電機はMOTOMAN NEXTシリーズを通じて、認識・推論・計画を備えた「フィジカルAI」の普及を推進。日刊工業新聞社「2025年 第68回 十大新製品賞」本賞や「ものづくり日本大賞」受賞歴も持つ。

同社関係者は「人手作業の自動化に貢献し、AIロボティクスを軸とした新たな価値創造に挑戦する」と意気込む。機械業界では、多品種少量生産や食品・医療・物流分野でのロボット適用拡大が加速しそうだ。

関連製品:MOTOMAN NEXT-NHC12、AlliomWorks CupLoader
キーワード:多品種少量生産、Easy to Use、高効率化、ロボット、食品
(本記事は安川電機公式テクニカルレポート2026 No.3に基づく)

画像は、ニュースリリース参照