米ホワイトハウス(The White House)は6月1日、ドナルド・J・トランプ(Donald J. Trump)大統領が鉄鋼、アルミニウム、銅の輸入に関する関税措置を見直す大統領布告に署名したと発表した。国家安全保障上の脅威への対応を強化するとともに、農業、住宅、製造業分野への投資促進や米国内での関連製品生産拡大を狙う。
今回の措置では、コンバインやハーベスターなどの農業機械、および一部の設備機器に適用される関税率を従来の25%から15%へ引き下げる。また、既存の15%関税対象である産業機械の範囲を拡大し、通商協定締結国から輸入されるブルドーザーやフォークリフトなどの移動式産業機械も対象に加える。
さらに、外国メーカーが米国産鉄鋼・アルミニウムの使用を拡大することを促すため、設備機器に使用される鉄鋼・アルミニウム重量の85%以上が米国内で溶解・鋳造された材料である場合、関税率を10%とする優遇措置を導入する。
これらの関税変更は2027年12月31日までの時限措置として実施され、米国の産業基盤再構築に向けた短期的な設備投資を促進する方針。
同政権は、鉄鋼、アルミニウム、銅に対する通商拡大法232条(Section 232)に基づく関税措置について、米国の国家安全保障や重要産業の競争力維持、地域経済や雇用保護に寄与していると強調した。
ホワイトハウスによると、米国は2025年に世界第3位の鉄鋼生産国となり、トランプ政権の232条関税政策を背景に競合国を上回る成長を遂げた。現在、米国内では数十年ぶりとなる新たな製鉄所建設が進んでおり、鉄鋼産業の集積地域で雇用創出が進んでいる。
今後2年間で400万トン超の新たな粗鋼生産能力が稼働する見通しで、西バージニア州(West Virginia)、アーカンソー州(Arkansas)、サウスカロライナ州(South Carolina)などで大型投資が進行中という。
アルミニウムと銅分野でも投資が活発化している。センチュリー・アルミニウム(Century Aluminum)とエミレーツ・グローバル・アルミニウム(Emirates Global Aluminum)は、オクラホマ州(Oklahoma)で米国では数十年ぶりとなる新規アルミ精錬所建設に向けた合弁事業を発表した。
また、ハイランド・コッパー(Highland Copper)、アイバンホー・エレクトリック(Ivanhoe Electric)、リオティント(Rio Tinto)、ウィーランド(Wieland)などの企業も、米国内での銅鉱山開発や製錬、加工設備の拡張を進めている。
ホワイトハウスは、こうした設備投資や重要産業の競争力維持は232条関税制度の継続と強化によって支えられていると説明。国内メーカーと労働者が外国企業と公平な条件で競争できる環境を整備することが目的としている。
トランプ大統領は第1次政権時代から232条を活用し、国内鉄鋼・アルミ産業の弱体化を招いたとされる従来の自由貿易政策の見直しを推進。第2次政権でも鉄鋼、アルミニウム、銅のほか、トラック、自動車、木材、半導体、重要鉱物、医薬品などを対象に関税措置や通商交渉を進めている。
ホワイトハウスによると、2026年5月の米国製造業は過去4年間で最も高い成長率を記録し、5カ月連続で拡大した。政権は「アメリカ・ファースト(America First)」の通商政策が米国経済と国家安全保障の強化につながっているとしている。
また、関税政策と各国との交渉を通じて、米国内への製造業回帰や雇用創出を目的とした数兆ドル規模の民間・海外投資を呼び込んだとしている。