ヤンマーCE、静かなるデザイン革新の哲学を語る—-「人中心」の機械づくりとブランド体験の深化

ヤンマーコンパクト機器(Yanmar Compact Equipment、以下ヤンマーCE ) :2026年5月20日

ヤンマーホールディングスのデザイン本部長・土屋陽太郎氏と、同社ビジュアルコミュニケーショングループマネージャー・海道未奈氏が社内デザイン部門の構築に着手したのは2015年のことだった。当時、100年を超えるエンジニアリングの伝統に支えられた同社は、農業機械、コンパクト(小型)建設機械、マリン推進機、エネルギーシステムなど多様な事業を130カ国以上で展開しており、「この多角的な組織でデザインはいかに機能するか」という明確な課題を抱えていた。

■二人が導き出した答えは、まずは「聞く」ことだった。

「当時は自分たちのことを『デザイン伝道師(Design Preachers)』と呼んでいました」と土屋氏は笑う。二人は社内の各事業部を回り、エンジニアや製品開発チームと対話を重ね、機械がどのように生まれ、現場でどのように使われているかを徹底的に理解した。コーヒーを片手にしたミーティングが説教壇となり、会話そのものが手法となった。

「すべてはコミュニケーションです」と土屋氏は語る。「各事業部は製品も市場も顧客も異なります。現場の人々と時間を共有することで、デザインがどのように貢献できるかを理解していくのです」。

■製品デザイン:「人を中心に据えた機械」

ヤンマーの製品デザインの核心にあるのは、社内で「intrinsic design(本質的デザイン)」と呼ばれる哲学である。見た目から入るのではなく、機械が解決すべき「人々の課題」から設計を始める。「過酷な環境ではタフでなければなりませんが、オペレーターの傍らでは優しくあるべきです」と土屋氏は説明する。

建設現場、農場、漁船など過酷な現場で活躍するヤンマーの機械は、信頼性が命であると同時に、長時間作業するオペレーターの快適性・操作性も重要視される。現代のヤンマー製品は、広いキャビン、良好な視界、直感的なコントロール、低騒音化など「オペレーター中心」の設計を徹底。疲労を軽減し、「機械の中がオフィスのように快適で洗練された空間になる」ことを目指している。

この思想は将来機械のコンセプト開発にも反映されている。ヤンマーは近年、土地(農業)・都市(建設)・海(マリン)における新世代のコンセプトマシンを発表。2035年に向けたProduct Visionに基づき、各事業領域の「理想的な未来像」を具現化している。これらのコンセプトは表面的なスタイリングではなく、機能価値と目的を優先。電動化、自動化、代替動力などの技術を活用しつつ、常に「人に寄り添う直感性」を保つ設計が特徴だ。

この取り組みは国際的に高く評価され、2025年には世界的に権威あるRed Dot Design Awardを2件受賞。実世界の課題解決とユーザー体験の向上を両立した未来機器像を示している。

■ブランドを象徴する「Premium Red」

ヤンマーのデザイン哲学はビジュアルアイデンティティにも表れている。最も特徴的な要素が、2012年の創業100周年で導入された「Premium Red」だ。製品やブランドコミュニケーション全体で使用されるこの赤は、ヤンマーのデザイン言語を象徴するシグネチャーカラーとなった。

海道氏は「エネルギーと自信、そして創業以来の開拓者精神を体現しています」と説明する。同色は著名インダストリアルデザイナーのケン・オクヤマ(Ken Okuyama、本名:奥山清行氏)氏との協業により開発され、製品ポートフォリオ全体の強いビジュアルアイデンティティを構築。土屋氏自身もオクヤマ氏と共にプロジェクトに携わった。現在、Premium Redは多様な事業領域を跨いでヤンマーを強く結びつけ、際立つ存在感を発揮している。

■ビジュアルコミュニケーション:工学を「体験」へ翻訳

海道未奈氏が率いるビジュアルコミュニケーショングループは、ヤンマーの高度なエンジニアリングを、人々が理解し共感できる体験へと変換する役割を担う。彼女は以前、菓子メーカーに在籍した際、パッケージの誤植を発見して自ら工場へ赴き修正した経験を持ち、「デザインは生産段階まで責任を持つべき」との信念を持っている。

土屋氏は「美しい絵を描けるデザイナーは多いですが、海道はアイデアを最初から生産まで完遂できる。デザイン部門立ち上げ時に必要だったのはまさにそのマインドでした」と評価する。

現在、同グループは展示会、イベント、ブランド体験を通じて技術を「身近なもの」として伝え、「エンジニアリングが複雑だからこそ、人々が日常の仕事でどのように感じるかを理解する」ことを使命としている。

■技術と文化をつなぐデザイン

デザインは機械を超え、農業・建設・マリン産業を形作る技術と人々を結びつける体験を生み出している。

海道氏が挙げる事例の一つが、老舗酒蔵・沢の鶴との協業だ。ヤンマーの研究者が清酒用米の栽培負担を軽減する新品種を開発したことをきっかけに、海道チームは酒瓶とパッケージのデザインを手掛けた。QRコードによる生産透明性と、杉玉などの伝統的象徴を融合させることで、農業革新と日本文化のつながりを表現。「お米は日本文化の深層に根付いています。このようなプロジェクトを通じて、世界の人々に生産者の努力と文化のつながりを感じてもらいたい」と海道氏は語る。

また、2021年よりヤンマーグループ会社が大阪・長居公園を管理・運営する「ワクワクパーククリエイト(Waku Waku Park Create)」プロジェクトでは、食・スポーツ・アート・学びをテーマにした都市公園の再構築に参画。サイン計画、施設デザイン、来園者体験などを通じて、再生可能エネルギーや食品廃棄物リサイクルなどの環境取り組みを日常に根付かせる役割を果たしている。
未来を想像する

これら進化するビジョンの根底にある原則は極めてシンプルだ。それは、100年以上前、創業者・山岡孫吉が初のエンジンを生み出した原点と同じ問いである。

■「技術は、頼る人々の仕事をいかに良くできるか」

土屋氏と海道氏にとって、この問いは今もすべてのデザインソリューションを導く指針であり、機械、体験、パートナーシップを通じて世界を支える産業を支え続けている。

■Yanmar Compact Equipmentについて

ヤンマーコンパクト機器(Yanmar Compact Equipment)は、コンパクト建設機械(小型建設機械)分野のグローバルリーダー。ミニ・ミディ油圧ショベル、ホイールローダー、コンパクトトラックローダー、キャリアなどを主力に、幅広い製品とサービスを提供。日本発祥の技術を活かしつつ、アジア・欧州・北米に製造拠点を持ち、国際販売網を展開する。ゼロテールスイングコンセプトの普及など革新的な取り組みで知られ、「Building with you」のタグラインの下、信頼性と顧客満足を追求している。詳細は公式サイト(https://www.yanmar.com/global/construction)参照。

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