IHI、25年度売上は1.0%増の1兆6,434億円、26年度予想は11.4%増の1兆8,300億円

IHIが5月8日に発表した2026年3月期(2025年度)連結業績によると、受注高は原子力等エネルギー分野での需要拡大により、前期比11.6%増の1兆9,547億円と過去最高を達成した。

売上収益は、中核事業における事業譲渡に伴う減収や前期の大型工事進捗の反動はあったものの、防衛事業や民間向け航空エンジンの拡大、車両過給機での需要拡大・販価改善などにより、1.0%増の1兆6,434億円となった。

営業利益は、民間向け航空エンジンでの整備費用の増加や研究開発費等販管費の増加、資源・エネルギー・環境事業での一部海外事業の採算悪化等の影響はあったものの、原子力の採算性向上、車両過給機の構造改革費用の前期反動、運搬機械事業及び投資不動産の譲渡益計上もあり、220億円増益の1,655億円となった。

税引前利益は、為替円安の影響や持分法投資利益の増加により470億円増益の1,854億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は482億円増益の1,609億円だった。受注高・売上収益・営業利益・税引前利益・当期利益の全てにおいて過去最高値を達成した。

2025年度の世界経済は、一部地域では景気持ち直しの動きに足踏みがみられたものの、総じて底堅く推移した。欧州経済はエネルギーをはじめとするコスト高や中国における内需減速の影響から低迷し、中国経済も不動産市場の停滞を背景に低調な推移が継続した。一方、米国経済は中東関与などの政策運営を巡る不確実性の影響を受けつつも、AI関連投資や堅調な雇用環境が下支えとなった。わが国経済については、物価上昇の影響を受けながらも、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が継続している。

主力事業である航空・宇宙・防衛事業において、航空機需要が中長期的に増加することが見込まれる中、民間向け航空エンジンでは、運航時間の増加などを背景にアフターマーケット事業が拡大している。防衛事業では、地政学的リスクの高まりが続く中、防衛力強化政策を背景に、継続して大型案件への受注対応を進めている。今後見込まれる民間向け航空エンジンや防衛事業、宇宙事業の需要拡大に応えていくため、リソース確保を含む生産能力の増強とともに、世界トップレベルの生産効率実現に向けた取り組みを進めている。出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムについては、引き続きプログラムパートナーとともに整備能力増強を図り、地上駐機数の低減に向けた対応を進めている。エアラインへの負担軽減及び信頼回復に取り組んでいく。
 
事業ポートフォリオ改革の主要な取り組みとして、当連結会計年度においては、運搬機械事業、芝草・芝生管理機器事業及びIHI汎用ボイラのほか、IHI建材工業及び新潟トランシス株式会社、明星電気株式会社について、譲渡を完了した。また、持分法適用会社であるジャパン マリンユナイテッド株式会社の持分の一部を今治造船株式会社へ譲渡した。当社はこれまで環境変化に強い事業体質への転換と成長を目指し事業ポートフォリオ改革に取り組んできており、今後は持続的な高成長を実現するステージへと移行し、長期的な視点からさらなる飛躍を図っていく。
 
中核事業におけるライフサイクルビジネスは、中長期的に安定的な成長が見込まれるため、IHIグループの収益への貢献や投資原資の創出を図るべく、引き続き拡大に向けて取り組む。

■セグメント別の事業環境
<資源・エネルギー・環境>
中東情勢の緊迫化を受けたエネルギー供給上の地政学的リスクやインフレの常態化、米国の政策変更等による天然ガス回帰など不確実な情勢が続く中で、エネルギーの安定供給を確保するためのエネルギー安全保障の重要性が高まっている。一方、中長期的な対応としてのカーボンニュートラル社会の実現へ向けた大きな潮流は変わっていない。今後、経済成長だけでなくデータセンターやAI活用の拡大による電力・エネルギー需要の増大が見込まれる中、安定供給とカーボンニュートラルを両立させる原子力拡大の動きも強まっている。

この事業領域では、原子力発電の再稼働や原子燃料サイクルの実現へ向けた取り組み、除染廃炉などの着実な展開、小型モジュール炉(SMR)を始めとする革新原子炉の製造へ向けた取り組みの促進など拡大する原子力市場に対応していく。火力発電においては、豊富な実績と燃焼技術をベースに、燃焼時にCO₂を排出しないアンモニアの利活用促進やインフラ整備に取り組んでいる。

<社会基盤>
インフラの老朽化や気候変動による自然災害の激甚化への対応として国土強靭化計画が引き続き推進されている。道路ネットワーク機能強化や流域治水の推進に加え、橋梁をはじめとする既設インフラにおける予防保全型の維持管理や計画的な更新も進められている。一方、建設分野における人手不足は依然として深刻であり、省人化・自動化技術の導入やDXの推進を通じた生産性向上への取り組みが引き続き重要となっている。
この事業領域では、国内外において、交通インフラ、防災・減災、水管理の分野を中心にライフサイクルを通じた価値提供をさらに進めていく。加えて、AIやIoTを活用した点検・モニタリング技術など、デジタル技術を活用した革新的なソリューションを提供することで、強靭で持続可能な社会インフラシステムの構築に貢献していく。

<産業システム・汎用機械>
中国によるレアアース輸出規制や中東情勢の緊迫化を背景に地政学リスクは一段と高まっており、エネルギー価格の乱高下と物流コストの高騰は常態化している。国際サプライチェーンは安全保障リスクを踏まえた再編が進み、事業を取り巻く環境は引き続き不透明な状況が見込まれる。一方で、EVの普及ペースは鈍化しているものの産業界におけるカーボンニュートラルへのニーズは依然として高い状況にあり、先進国で進行する労働生産人口減少に伴う人手不足とともに、産業分野における中長期的な構造的トレンドとなっている。

この事業領域では、脱炭素や人手不足等の産業界が抱える課題をビジネス機会と捉え、顧客のライフサイクルに応じた価値提供を拡大していく。加えて、プロセス最適化、モビリティ変革や自動化・省人化等のニーズに対応した付加価値の高いソリューションを提供することで、持続可能かつカーボンニュートラルな産業界の発展に貢献していく。

<航空・宇宙・防衛>
民間向け航空エンジン事業では世界の旅客需要が堅調に伸びる中、アフターマーケットでの収益が拡大を継続している。また、防衛予算の増額、宇宙産業の市場拡大の流れを受け、防衛・宇宙事業においても、新たな価値創造を図り競争力向上を目指していく。各事業とも中長期的な市場成長が見込まれる一方で、足元では地政学的リスクはかつてない速度で変化し、サプライチェーンの混乱や物価高騰などの影響が生じている。当社グループは、環境の変化に打ち勝つ事業体質構築に向け、デジタル基盤の活用等による生産効率改革や業務構造改革をさらに推進し、成長を加速していく。

この事業領域では、出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加整備への対応に加え、今後の需要拡大への対応を進めているが、特にサプライチェーンの強靭化や、鶴ヶ島工場における修理棟建設などアフターマーケット分野での対応強化に注力している。加えて、次期戦闘機(GCAP)用エンジンの国際共同開発や現行のPW1100G-JMの改良プログラムに独自技術をもって貢献するとともに、将来のカーボンニュートラルに向けた次世代航空機に関する技術の開発を進めている。

■連結業績見通しについて
世界経済は、先行きが不透明な状況が続く中、ウクライナや中東情勢を巡る地政学的リスクの高まりや、中国経済における内需停滞に伴うデフレ懸念に加え、米国政権の政策動向に関する不確実性への注意が必要な状況だ。また、中東情勢に起因するエネルギー価格高騰の長期化などによる景気下振れリスクや金融資本市場の変動等の影響にも留意する必要がある。わが国経済については、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復が期待される一方で、外部要因の影響について引き続き注視が必要な状況だ。

IHIグループは、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく各種取り組みを推進し、構造改革について一定の目途をつけることができた。2026年度からは、2040年を見据えた中長期の方向性の実現に向けて、飛躍的な成長ステージへと移行する。2026年度から2028年度までの3か年を、2029年度以降の営業利益・営業キャッシュ・フロー及び2032年度以降のフリーキャッシュ・フローの大幅な拡大を見据えた、先行投資と財務基盤強化に集中的に取り組む期間と位置付けた。その初年度となる2026年度においては、成長を牽引する民間向け航空エンジン・防衛・原子力といった成長事業を主な対象として、キャパシティ拡充に向けた投資を計画的に実行する方針だ。

成長事業である民間向け航空エンジン・防衛分野においては、世界の航空機需要の拡大が確実視される中、民間向け航空エンジンにおける小型~大型・超大型クラスに至るベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画している。今後の需要増加が期待されるアフターマーケットでの事業拡大を目指し、整備事業では自動化やDXの高度化等による生産性向上を図ることで高品質なサービスを迅速に提供する体制の構築を進めている。鶴ヶ島工場においては修理棟を新たに建設し、付加価値の高い部品修理需要の取り込みを拡大していく。原子力分野においては、再稼働・再処理に係る国内のライフサイクルビジネス需要を確実に取り込むとともに、海外新設案件の獲得によるトップライン成長の実現に向けて生産能力の増強を進めていく。

育成事業であるアンモニア分野においては、燃料の製造から貯蔵・輸送及び利活用に至るまでのバリューチェーン構築を推進することで、カーボンフリー社会の実現に貢献していく。また、宇宙分野においては、衛星コンステレーション構築の取り組みなど宇宙関連事業の拡大を図っていく。
 
2027年3月期の連結業績については、売上収益1兆8,300億円(前期比11.4%増)、営業利益2,400億円(同45.0%増)、税引前利益2,300億円(同24.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,650億円(同2.5%増)となる見通し。業績見通しにおける為替レートは、1米ドル=145円を前提としている。

IHIの2026年3月期決算短信

決算説明資料

決算説明会・中長期の方向性