・リサイクル工程の効率化と安全性向上に寄与
リープヘル (Liebherr):2026年5月4日
リープヘル・ヴェルツァーンテクニーク(Liebherr-Verzahntechnik GmbH)は5月4日、電動モビリティの普及拡大に伴い需要が高まる高電圧バッテリーのリサイクル・再処理分野向けに、自動分解システム「LHDismantle」を開発したと発表した。5月4日から7日までドイツ・ミュンヘンで開催される環境技術見本市「IFAT」で披露する。
同システムは、高電圧バッテリーの分解工程を自動化する産業用ソリューションで、自動ねじ外しからモジュール化されたターンキーシステムまで幅広く対応。電池の取り外し・分解工程を効率化し、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に貢献する。
電動車両用バッテリーのリユースやリサイクルにおいては、初期工程としてバッテリーの分解が不可欠だが、従来は手作業が中心で、時間・コストの増大や安全リスクが課題となっていた。さらに、回収量の増加と高電圧機器を扱える人材不足も深刻化している。
また、バッテリーを破砕後に銅、ニッケル、コバルト、マンガン、リチウムといった有価金属を回収するには複雑な冶金プロセスが必要となるため、近年は分解段階での高精度な処理によって回収率と材料品質を高める取り組みが進んでいる。「LHDismantle」はこうしたニーズに対応する。
同システムは、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)の支援を受けた研究プロジェクト「ツィルケル(ZIRKEL)」の成果を基に開発された産業用分解セルで、多数のボルト接合部を非破壊で自動的に緩める工程を実現。従来は手作業に依存していた安全上重要な工程を自動化する。
バッテリー管理システム(BMS)はバッテリー筐体を開放後でなければ停止できず、高電圧接点の露出によるリスクが存在するが、「LHDismantle」はこの工程を自動化することで作業者の危険曝露を低減し、安全かつ再現性の高い後工程処理を可能にする。
一方で、バッテリー分解の自動化には、形状やねじ仕様の異なる多様な電池への対応や、汚れ・腐食・損傷による認識難易度の高さなど技術的課題がある。特にカメラベースの認識では信頼性確保が難しいとされるほか、高電圧に対応した厳格な安全設計も求められる。
「LHDismantle」は特許取得済みの触覚式ねじ外し技術と自動位置補正機能を採用し、汚れや腐食、損傷の影響を受けにくく、高い工程信頼性を確保。自動工具交換機能により異なるねじにも対応し、取り外したねじは旋回ユニットまたは排出モジュールで安全に回収する。
操作は直感的なユーザーインターフェースで行い、ねじ外し工程の状態をリアルタイムで可視化。バッテリー種別や作業プログラムはデータベースから選択可能で、新規部品への対応も迅速に行える。さらにデジタルツインを活用し、新型バッテリーの分解プロセスを事前にシミュレーション・検証することで、立ち上げ時間の短縮とリスク低減を実現する。
リープヘル・ヴェルツァーンテクニークのオートメーションシステム担当プロダクトマネージャー、ヴィクトル・バイアホーフ(Viktor Bayrhof)氏は、「未知のバッテリーパックに対してはリバースエンジニアリングで仮想モデルを構築し、最適な工具と分解手順を導き出す」と説明する。
同社は、ねじ外し技術に加え、高電圧バッテリーの搬送・保管・ハンドリングまで含めた包括的なソリューションも提供。「LHDismantle」はパレットハンドリングシステム(PHS)などと連携し、加工機や手動作業ステーションとも統合可能で、エンドツーエンドのプロセス構築を支援する。フライス加工やレーザー切断など外部設備の組み込みにも柔軟に対応する。
現在、同システムはドイツ・ケンプテンのテックセンターで公開されており、実証サイトへの導入準備も進めている。リサイクル企業は実運用環境で自動化技術を検証でき、同社は実データを基に改良を重ねることで、双方にメリットのある開発体制を構築する。
ヴィクトル・バイアホーフ氏は、「これまで自動化の経験が少ない企業にとっても、リスクを抑えて導入できるソリューションだ」としている。
電動化の進展に伴い拡大するバッテリーリサイクル市場において、「LHDismantle」は拡張性の高いターンキーシステムと組み合わせることで、生産量の増加に柔軟に対応し、効率的な循環型経済の構築を支える中核ソリューションとして位置付けられる。
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