・関税影響として調整後営業利益ベースで63億円のマイナスを26年度予想に織り込み
日立建機が4月24日に発表した2026年3月期(2025年度)連結業績によると、売上収益は1兆4,054億9,300万円(対前年度増減率+2.5%)と増収となった。欧州や米州独自展開事業での販売が堅調に推移し、米州OEM事業やオセアニアでの減収を吸収した。利益項目については、販売価格引き上げによる増益効果が見られた一方、米国関税の影響や成長投資に伴うコスト増に加え、地域・製品構成差の悪化が下押し要因となった。この結果、調整後営業利益は1,329億5,100万円(同△8.3%)と減益となり、親会社株主に帰属する当期利益についても、調整後営業利益の減益により731億9,300万円(同△10.1%)となった。一方で、在庫の縮減等の取り組みによって、営業キャッシュ・フロー(1,642億円)およびフリー・キャッシュ・フロー(1,175億円)は前年度比でそれぞれ増加した。
日立建機グループは、2026年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「BUILDING THE FUTURE 2025 未来を創れ」のもと、①顧客に寄り添う革新的ソリューションの提供、②バリューチェーン事業の拡充、③米州事業の拡大、④人・企業力の強化、の4つの経営戦略を掲げて持続的な成長と企業価値の向上に取り組んできた。前中計期間(FY22→FY25)の振り返りとして、油圧ショベルの世界需要が6%減少する逆風下でも米州独自展開事業を中心に売上をFY22比1,406億円伸長させ、営業キャッシュフロー(3年累計)は265%増の3,811億円、ネットD/Eレシオは0.60から0.40へと改善した。
2025年度は、欧州売上が前年比26%増、米州独自展開事業も同9%増と堅調を維持した一方、米州OEM事業やオセアニアでの減収が影響した。バリューチェーン売上は部品・サービス、スペシャライズド・パーツ・サービスビジネス、レンタル事業の伸長により全社売上の44%を占める6,197億円(前年比4%増)と過去最高を更新した。財務面ではネット有利子負債を346億円縮減し、ネットD/Eレシオは0.40と前年の0.48から改善している。
なお、2024年3月期第4四半期より、IFRS会計基準に則り、スペシャライズド・パーツ・サービスビジネスセグメントにおけるノンコア事業を非継続事業に分類している。これにより売上収益、調整後営業利益、税引前当期利益は継続事業の金額を表示し、当期利益及び親会社株主に帰属する当期利益は継続事業及び非継続事業の合算を表示している。
■セグメントの業績
①建設機械ビジネス
2025年度における売上収益は1兆2,685億9,400万円(同2.0%)、調整後営業利益は1,214億8,100万円(同△6.4%)となった。欧州や米州独自展開事業での販売は堅調に推移し、販売価格の引き上げも寄与したが、米国関税を含むコスト増や地域・製品構成差の悪化が利益を下押しした。
②スペシャライズド・パーツ・サービスビジネス
当事業は主としてマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品サービス事業を行うBradken Pty Limited及びその子会社と、サービスソリューションを提供するH-E Parts International LLC及びその子会社で構成されている。2025年度における売上収益は1,452億2,600万円(同7.1%)と増収となった一方、調整後営業利益は114億7,000万円(同△24.2%)と減益となった。2024年12月に米国Brake Supply Co., INC.の事業買収を実施したことによる増収効果があった一方で、米国関税の影響に加え、一部主要顧客の投資抑制や競争環境の激化が利益を押し下げた。
なお、上記①②の売上収益については、セグメント間調整前の数値。
■今後の見通し
2027年3月期(2026年度)連結業績予想は、売上収益1兆4,300億円(前期比1.7%増)、調整後営業利益1,400億円(同5.3%増)、税引前当期利益1,330億円(同7.1%増)、親会社株主に帰属する当期利益800億円(同9.3%増)。
2027年3月期の油圧ショベル需要について、アフリカやアジアを含む一部地域では前年の好調の反動による若干の減少を見込む一方、主力地域である北米や欧州では前年度の堅調な需要を維持する見通しで、グローバル全体では概ね前年度並みと見込む。マイニング機械需要も同様に前年度と同等の水準で推移する見込みで、石炭・鉄鉱石向けは弱含みも、銅・金鉱山向けは底堅く推移する見通し。
収益面では、米国関税によるコスト増やブランド切り替えに伴う費用(ブランドプロモーションコスト△168億円、ブランドスイッチングコスト△100億円)が増益の逆風となる。しかし、米州独自展開事業の拡大やマイニングトラック・スペシャライズド・パーツ・サービスビジネスの増収による製品構成差改善、原価低減および販売価格引き上げにより、増収・増益を見込む。
なお、中東情勢の緊迫化による影響については、状況が極めて流動的であることから現時点では未織込みとしている。
業績見通しの前提となる為替レートは、米ドル150円、ユーロ178円、人民元22.1円、豪ドル107円。上記の業績改善見通しと安定的なキャッシュ創出を踏まえ、2027年3月期の年間配当は過去最高となる1株当たり190円(前期比15円増)を計画している。
■米国関税の影響について
今回の2027年3月期業績予想には、関税影響として調整後営業利益ベースで63億円のマイナスを織り込んでいる(関税コストの増加△210億円に対し、販売価格引き上げ147億円で一定程度を吸収)。日立建機の米国向け事業は日本の工場からの完成品・部品の輸出がほぼ100%を占め、第三国からの輸出は僅少であることから、相互関税の停止後は2026年4月より鉄鋼・アルミ派生品として一律25%の関税が適用されている。また、米国向けOEM事業では相手先が関税を負担する契約条件となっている。なお原価への影響額の増加は適用税率の変更と関税未適用の現地在庫の減少等に起因するとしており、レンタルビジネスの強化や原価低減などの対応を継続して実施するとしている。
■中期経営計画「LANDCROS 2028」について
日立建機は今回、2029年3月期を最終年度とする新3カ年中期経営計画「LANDCROS 2028」を発表した。2030年の業界トップスリー実現を見据え、①北米事業、②中南米事業、③マイニング事業、④部品・サービス事業の4つを重点事業と位置づけ、大胆な成長投資と事業ポートフォリオ戦略を推進する。FY28の定量的目標として調整後営業利益2,000億円以上、ROE11.5%以上、ROIC 9%以上を掲げるとともに、3年累計の営業CFは4,900億円を目指す。また、手元資金2,000億円以上に銀行借入等3,000億円(ネットD/Eレシオ0.7程度)を加え、成長投資に5,000億円を振り向ける計画。
同計画では代理店・パートナー企業とともに創る「オープン戦略」を新たな柱に据え、製造業の枠を超えたソリューションプロバイダーへの変革を目指す。
また2027年4月1日付で商号を「ランドクロス株式会社」に、コーポレートブランドを「LANDCROS」に変更する予定で、2026年4月には伊藤忠商事が筆頭株主となる株主構成変更も実施された。成長投資の柱はマイニング事業拡大(FY25実績4,240億円→FY28目標5,500億円→FY30目標7,000億円)、米州独自展開事業(同2,297億円→3,800億円→6,000億円)、中南米事業(同384億円→800億円→1,500億円)、部品・サービス事業(同3,222億円→3,700億円→5,000億円)であり、M&Aや他社協業を通じたインオーガニック成長も積極的に推進する方針。
加えて先崎正文社長は、本中計を「社名変更を伴う新たな船出を成功させる3年間」と位置づけ、「ブランド変更を未来に向けた変革の起点とする」と強調した。前中計期間中は油圧ショベルの世界需要が減少する厳しい市場環境下にあったが、米州独自展開の進展や部品・サービス事業の拡大により売上成長と財務体質の改善を実現したと総括。その要因として、バリューチェーンの拡大とソリューションの進化が業績を牽引した点を挙げた。
新中計では、こうした成果を基盤に「継承と進化」をキーワードとした成長ストーリーを描く。バリューチェーン事業の強化によるリカーリング収益の拡大に加え、マイニング事業を戦略の柱として一段と強化。さらに、オープン戦略と大胆な成長投資を組み合わせることで、事業拡大と企業価値向上を加速し、2030年の業界トップスリー実現を目指す方針を示した。
コメントを投稿するにはログインしてください。