・30トンクラス電動ショベルで実証、稼働時間53%延長を確認
ダンフォス(Danfoss):2026年6月2日
ダンフォス・スコットランド(Danfoss Scotland、ダンフォス・パワーソリューションズ=Danfoss Power Solutions傘下)は、30トンクラスのバッテリー式電動油圧ショベルを用いた「デクストリーム・マックス(Dextreme Max)」システムの実証試験結果を発表した。試験では、代表的な作業サイクルにおいて消費電力を35%削減し、1回の充電当たりの稼働時間を53%延長できることを確認した。
同プロジェクトは英国政府から429万ポンド(約9.2億円、215円換算)の助成金を受けて実施されたもので、大型油圧ショベルの電動化を加速する技術として期待されている。
デクストリーム・マックスは、油圧システム内のエネルギー損失を削減するとともに、従来は失われていたエネルギーを回収することで、油圧ショベルのエネルギー消費を最大50%削減することを目指している。
システムの中核となるのは、デジタル・ディスプレースメント(Digital Displacement®)技術を採用した油圧ポンプ・モーター「DDP1X0D」。複数の独立制御可能な吐出口を備え、アクチュエーターごとに個別供給を行うことで流量配分による損失を排除する。また、ブーム下降時などに発生するエネルギーを回収できることも特徴だ。
今回の開発は、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(Department for Energy Security & Net Zero)が推進する「レッドディーゼル代替フェーズ2(Red Diesel Replacement Phase 2 Competition)」プログラムの支援を受けて進められた。同制度は建設、鉱山、採石業界向けの低炭素技術開発を支援するもので、総額10億ポンド規模の「ネットゼロ・イノベーション・ポートフォリオ(Net Zero Innovation Portfolio)」の一環として実施されている。
実証機には、デベロン(Develon)の30トンクラスクローラーショベル「DX300LC-7」を採用した。もともとはディーゼルエンジン仕様だったが、オランダのスタード(Staad B.V.)が電動化を担当し、エンジンをダンフォス・エディトロン(Danfoss Editron)の永久磁石同期モーター「EM-PMI375」、インバーター「EC-C1200」、モーターコントローラー「MC050」、および140kWhバッテリー3基で構成される電動パワートレインへ換装した。
さらにダンフォスの技術陣は、従来の斜板式油圧ポンプをデジタルディスプレースメント方式の「DDP180D」ポンプ・モーターに置き換えた。
ブーム、アーム、バケット、旋回の4つの主要油圧機能は、ポンプに備えられた10個の独立制御ポートから供給される。各ポートはデジタルディストリビューターである「ギャングブロック(Ganging Block)」によって動的に再配分され、必要な作業機能へ最適な油圧容量を割り当てる。
また、ブーム機能には油圧Hブリッジとして機能する専用バルブを新たに開発し採用した。これにより独立した流量制御を実現し、キャビテーション防止、圧力増幅、オーバーラン動作時のエネルギー回収が可能となった。
性能評価では、JCMASエアグレーディング試験およびJCMASエア掘削・積込み試験(ISO/AWI TS 11152-2相当)を実施した。
その結果、標準仕様の電動ショベルと比較して、
・エアグレーディング作業:バッテリー消費電力量49.2%削減
・エア掘削・積込み作業:同31%削減
を達成した。いずれも作業サイクル時間への影響はほぼなかった。
作業比率を「グレーディング30%、掘削70%」と想定した場合、デクストリーム・マックスは作業効率をほぼ維持したままバッテリー消費電力を35%削減できるという。
これにより、同一容量のバッテリーで稼働時間を53%延長できるほか、従来機が3基のバッテリーを必要とする条件でも、同等の稼働時間を2基のバッテリーで実現できる可能性がある。
ダンフォス・パワーソリューションズのデジタルディスプレースメント部門シニアディレクターであるアラスデア・ロバートソン(Alasdair Robertson)氏は、「今回の結果は、デジタル油圧アーキテクチャーが大型建設機械の電動化における課題を克服できる可能性を示している。電動ショベルは応答性や操作性、静粛性、ゼロエミッション運転といった利点を持つが、デクストリーム・マックスはさらに稼働時間、生産性、総保有コストの面でも優位性を提供できる」と述べた。
そのうえで、「今回の成果は非常に有望だが、さらなる改善余地がある。今後もシステム最適化を進め、エネルギー削減効果と顧客価値を最大化していく」としている。
なお、ダンフォスのデクストリームシリーズは段階的な導入が可能で、
・デクストリーム・スワップ(Dextreme Swap)
・デクストリーム・フレックス(Dextreme Flex)
・デクストリーム・マックス(Dextreme Max)
の3段階で展開される。
このうち、ポンプ交換のみで導入可能な「スワップ」と、ポンプ吐出口の柔軟な制御による高効率化を図る「フレックス」はすでに商用化されている。今回のプロジェクトにより、最上位システムである「マックス」の実用化に向けた開発が大きく前進した。
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