日立建機は4月24日、新中期経営計画「LANDCROS 2028」を発表した。2027年4月に社名を「ランドクロス株式会社」へ変更するという節目を前に、「継承と進化」をキーワードに掲げ、2030年の業界トップスリー入りを最終目標とした積極的な成長戦略を打ち出した。
■ 大きな方針・方向性
新中計の根幹にあるのは、前中計(FY22〜FY25)で確立したバリューチェーン事業の拡大路線を継続しつつ、新たにマイニング事業の強化を成長の柱として加える点だ。前中計では、世界の油圧ショベル需要が6%減少する逆風下においても、米州独自展開売上を37%増、営業キャッシュフローを265%増と大幅に伸ばし、財務基盤の強化(ネットD/Eレシオ0.60→0.40)に成功した実績がある。
新中計ではこの土台の上に立ち、「事業を太く・強くする」大胆な成長投資と構造改革、さらに代理店・パートナー企業との「オープン戦略」を推進することで、事業拡大・企業価値向上・株価向上の三位一体の実現を目指す。また、2026年4月には伊藤忠商事が筆頭株主となる株主構成変更が実施されており、販売・レンタル・ファイナンス事業の共同推進やM&A・新規事業での協業など、成長の選択肢と実行力の拡大につなげる。
■ 数値目標——FY25実績からの大幅な飛躍を目指す
FY25(2026年3月期)実績と新中計FY28目標の主要指標を比較すると、その野心的な目標設定が浮き彫りになる。
売上規模については、FY28目標をCAGR(年平均成長率)9%相当の水準に設定し、2030年のトップスリー実現に向けた規模への到達を目指す。収益面では、調整後営業利益をFY25実績の1,330億円から2,000億円へと約50%増を計画。親会社株主に帰属する当期利益も732億円から1,200億円への拡大を目指す。営業キャッシュフローは3年累計で4,900億円(前中計3年累計は3,811億円)を見込む。
効率性指標ではROEをFY25実績の8.6%から11.5%へ、ROICを6.7%から9%へ改善させる目標を掲げた。株主還元については、連結配当性向40%以上を継続する方針だ。
■ 事業別・地域別の目標
重点事業として北米事業、中南米事業、マイニング事業、部品・サービス事業の4本柱を設定し、それぞれに具体的な売上目標を置く。
マイニング事業はFY25実績4,240億円からFY28目標5,500億円、FY30目標7,000億円へと大幅拡大を計画する。北中南米・アフリカを重点地域と位置付け、コア製品の強化とスペシャライズド・パーツ・サービスビジネス(SPS)など事業領域の拡大を図る。
米州独自展開事業はFY25実績2,297億円からFY28目標3,800億円、FY30目標6,000億円を目指す。北米は成長の第2フェーズとして製品ラインナップ拡大による販売シェア向上を目指し、中南米はFY25実績384億円からFY28目標800億円、FY30目標1,500億円と約4倍の規模拡大を視野に入れる。マイニングを中心とした販売体制の整備とSPSの強化を継続する。
部品・サービス事業はFY25実績3,222億円からFY28目標3,700億円、FY30目標5,000億円へ拡大する。北中南米・マイニング事業の拡大に伴う稼働台数増加に対応した捕捉率向上が主要施策となる。
■ 具体的な強化策
① オープン戦略の推進
直営含む約300社の代理店ネットワーク、約33万台のグローバル稼働データ、メカニック約9,000人という既存資産を最大限に活かしつつ、建設・マイニング機械需要の約40%を占めるパートナー商品領域での協創を拡大する。WIXIMや「LANDCROS Innovation Studios」などを活用し、アセットライト型で事業拡大を図る。
② 成長投資とインオーガニック成長
3年累計の資本配分として、営業CF4,900億円から設備投資(維持・更新)1,500億円と株主還元1,400億円以上を差し引いた手元資金2,000億円以上に、銀行借入等3,000億円(ネットD/Eレシオ0.7程度)を組み合わせ、成長投資合計5,000億円を実行する計画だ。オーガニック成長(北米販売シェア向上・マイニングSPS・中南米拡大・部品捕捉率向上・構造改革)に加え、他社協業やM&Aによるインオーガニック成長も積極推進する。研究開発投資は3年累計で1,300億円(前中計比約25%増)を計画する。
③ 技術・デジタル戦略
モノづくり技術とデジタル価値の統合による差別化を図る。33万台のグローバル稼働データを基盤に、ビッグデータ分析・対話型AI活用、リアルタイム・デジタルツインを駆使して、遠隔監視・予防保全、稼働状況に基づくサービス、鉱山マネジメント、電動化建機・電動ダンプトラックなどの革新的ソリューションを展開する。社内でも巡回サービス最適化や設計・生産プロセスの高度化にAIエージェントを活用し、事業競争力を強化する。
④ 環境・人的資本への対応
1.5℃シナリオに沿い、FY28までに生産(Scope1+2)42%削減、製品・購入品(Scope3)21%削減を目指す。サーキュラーエコノミー・ネイチャーポジティブの取り組みも強化し、CE・NP関連事業規模はFY25見通しで全社の62%(約8,700億円)に達する見込みだ。人的資本面ではエンゲージメントと、インクルージョン&ダイバーシティの各指標についてFY28までに3ポイントの改善を目標とする。
「日立建機」から「LANDCROS(ランドクロス)」へのブランド転換は、単なる社名変更にとどまらず、製造業の枠を超えた「革新的ソリューションプロバイダー」への変革を象徴するものだ。伊藤忠商事との戦略的連携を追い風に、同社が2030年の業界トップスリー入りという高い目標を実現できるか、今後3年間の取り組みが注目される。