・脱炭素に向け大容量バッテリー導入とインフラ整備を推進
BHP:2026年6月26日
資源大手のBHPは、鉱山業界における最大級の技術課題の一つであるディーゼル駆動設備から電動設備への転換に向け、豪州で大型実証を進めている。安全性、信頼性、実用規模での運用成立を見据えた検証を進め、鉱山現場の電動化実装を加速する構えだ。
同社は西オーストラリア州ピルバラ地区のジンブルバー鉱山(Jimblebar)において、積載能力240トンクラスのバッテリー式電動ダンプトラック2台の試験運用を開始した。また、ポートヘッドランド(Port Hedland)には豪州初となる専用設計のバッテリー電気機関車が到着し、近く実証試験を開始する予定。
これら車両群に搭載される蓄電池容量は合計29MWh超となる見込みで、一般的な豪州家庭1世帯分の電力消費量に換算すると5年以上に相当する規模となる。BHPは、こうした取り組みを大規模鉱山の動力技術転換に向けた初期段階と位置付けている。
■電動化を脱炭素戦略の中核に位置付け
BHPは脱炭素戦略の柱として電動化を推進している。2030年度までに、自社操業資産における温室効果ガス(GHG)排出量(スコープ1・2)を2020年度比で30%以上削減する中期目標を掲げている。
2025年度時点で操業排出量は、調整後2020年度基準比で36%削減を達成。電力使用の再生可能エネルギー化も進み、チリ事業では2022年以降、使用電力の100%を再エネ化している。世界全体でも再エネ電力比率は70%を超えた。
豪州では、クイーンズランド州中部で操業するBHP三菱アライアンス(BHP Mitsubishi Alliance:BMA)が、2026年7月から需要予測ベースで100%再エネ電力へ移行予定。西オーストラリア鉄鉱石事業でも、ポートヘッドランド向け電力の一部について再エネ調達を確保しており、ピルバラ地域全体での大規模電源構想を検討している。
電力起源の排出削減が進んだ結果、現在ではディーゼル燃料が同社最大の操業排出源となっている。
■大型鉱山電動化は車両置換だけでは実現困難
BHPは、鉱山電動化は単純なエンジン置換では成立しないと説明する。
一般乗用車で普及するkW級バッテリーから、鉱山用ダンプや機関車に必要なMW級エネルギーシステムへ拡張するには、大規模な技術的飛躍が必要となる。
電動化には設備そのものだけでなく、充電設備や電力供給網、運用体制を含めたエコシステム全体の再構築が必要となるほか、高電圧直流バッテリーに伴う新たな安全リスク管理も不可欠となる。
同社では実装に向け、以下の観点を重視している。
・新技術導入に伴う安全リスクを把握し、安全な運用・保守体制を構築できるか
・操業要求を満たす速度で充電しながら、安定供給を維持できるか
・業界横断で共通課題に取り組むパートナー連携を構築できるか
■中国実績を活用し大型電動ダンプ技術を評価
バッテリー電動ダンプの技術進展は加速しているものの、車格や輸送条件、鉱山レイアウトによって成熟度には大きな差がある。
現時点で世界的に本格導入が進んでいるのは、主に中国市場を中心とした120トン未満クラスで、石炭鉱山や採石場など比較的短距離輸送用途が中心となっている。
こうした状況を踏まえ、BHPは徐工集団(XCMG)との包括契約(Global Framework Agreement)を締結。中国鉱山で数百台規模の電動ダンプ導入実績を持つXCMGの知見を活用し、バッテリー性能、充電方式、生産体制などを検証する。
■豪州で大型実証を本格展開
大型車両領域では、依然として高出力充電システムや電池構成技術の開発が進行段階にある。
この中で、BHPは昨年末、西オーストラリア州ジンブルバー鉄鉱山へ、キャタピラー(Caterpillar)のCat® 793 XE Early Learner バッテリー電動ダンプを導入。リオ・ティント(Rio Tinto)との共同で現地実証を進めている。
既に安全立ち上げを完了し、大規模鉄鉱石事業におけるディーゼル代替技術としての成立性を評価している。
またポートヘッドランドでは、ワブテック(Wabtec)のバッテリー電気機関車2両が到着済みで、さらに今月中にプログレス・レール(Progress Rail)のバッテリー電気機関車2両が追加投入される予定。
BHPはこれらの試験を通じ、大容量蓄電池が鉱山・鉄道環境下でどのように機能するかを検証するとともに、大規模電動フリートに必要な電力マネジメント技術を確立する方針。
さらに、走行中充電を可能とするダイナミックチャージング技術の試験も計画しており、現行電池性能の制約緩和と大型電動ダンプ実用化への貢献を期待している。
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