日本精密、ASEAN軸に事業再編、海外生産・高付加価値化で収益基盤を再構築

日本精密は、主力の時計バンド事業を中心に、ASEANを中核とする生産・販売・開発体制の強化を進める。2025年度までの業績は、グローバルな価格競争の影響を受けつつも、海外生産への切り替えやコスト競争力の引き上げを通じて事業基盤の維持・改善を図った。会社側は、主力製品である時計バンドの値下げ圧力に対応し、量産品の海外生産移管を進めることで、グローバル市場で勝ち切るための原価対応を急いできたとしている。

■量産安定供給と採算改善を両立、加工一貫体制を強化

2025年度までの業績概況を見ると、事業の重心は「量産の安定供給」と「採算改善」の両立にあった。資料では、事業領域としてMachining、Forging、Forming、Casting、Press、Welding、Surface Treatment、DLCなどの加工機能が並び、単なる組立・供給ではなく、加工工程の内製・連携を含む一貫対応力が事業競争力の核になっていることがうかがえる。市場面では、Japan、Hong Kong、Cambodia、Vietnam、BtoC、BtoBなど複数の販路・拠点を組み合わせ、特定地域に依存しない体制づくりを進めてきた。

■時計バンド事業の構造転換、海外量産シフトを加速

部門別にみると、基幹の時計関連では、価格競争の激化に対応するため、製造拠点の最適配置と量産移管が進められた。とりわけ、ASEAN Projectの初期段階で構築したカンボジア、ベトナム拠点を活用しながら、海外生産の比率を高め、コスト優位性を確保する方向が明確である。時計バンドは同社の主力製品であり、利益確保のためには単純な数量拡大だけでなく、原価低減と品質安定の両立が不可欠であった。資料の記述からは、2025年度までの実績が、こうした構造転換の準備期間として位置づけられていたことが読み取れる。

■ベトナムを開発中核へ、ASEAN一体運営を推進

市場別では、日本を起点としながら、香港、カンボジア、ベトナムを結ぶASEAN連携が拡大している。特にベトナム拠点は、R&D機能を含む中核拠点として位置づけられ、量産だけでなく開発・試作・品質対応を担う存在へと進化している。カンボジア拠点も、量産・加工の受け皿として機能し、ASEAN全体を一つの生産・供給圏として運営する考え方が鮮明だ。こうした地域分散型の体制は、為替変動や地政学リスク、輸送コストの変動に対する耐性を高める意味でも重要となっている。

■「Next China」「Beyond China」で事業領域拡大へ

2026年度以降の見通しでは、同社はASEANを足場に「Next China」「Beyond China」へ展開を広げる方針を示す。これは、単純に中国代替を目指すのではなく、ASEANで確立した生産・供給・開発モデルをさらに他地域へ拡張し、グローバル供給網の中で存在感を高める構想とみられる。事業面では、既存の時計バンドに加え、関連する金属加工や表面処理技術を生かした周辺分野への展開余地もある。市場ごとに見ると、Japan、ASEAN、Hong Kongを軸にしながら、BtoCとBtoBの両輪で収益機会を広げる方向性が示されている。

また、資料では複数の市場調査を参照し、時計、サングラス、釣り具、EV関連など異なる分野の成長性に言及している。これは、既存の主力事業にとどまらず、ASEANで培った製造・開発機能を他市場向けに横展開する意図を示すものだ。とくに、加工技術、金属部品、表面処理、DLCといった技術要素は、時計以外の精密部材や周辺製品にも応用しやすく、今後の事業拡張の土台になる。

■中計「ASEAN Project III」、価値創造型モデルへ移行

中期経営計画「ASEAN Project III」は、2026年度から2031年度にかけての成長戦略として整理されている。基本方針は、ASEANを「価値創造」「価値生成」「価値最大化」の3段階で進化させ、製造機能の強化に加えて、R&D、品質、販売までを含む総合拠点化を進めることにある。単なるコスト削減策ではなく、海外生産の最適化を起点に、付加価値の高い製品群を増やし、利益体質を改善する構想である。

数値目標としては、2031年度に向けて、売上高や利益の拡大を目指す計画が示され、直近年度比での成長率改善が前提となっている。資料には、2031年度までの指標として、売上・利益関連のKPI、CAGR、各市場の拡大見通しが提示されているほか、2026年度から2031年度にかけて継続的な上昇を見込むグラフも示されている。具体的には、売上規模の拡大とともに、営業効率の改善、製造原価の低減、収益性の高い製品比率の引き上げが重視されている。

■R&D・工程技術を軸に収益モデルを高度化

事業別では、時計バンドを中心とする量産事業の競争力強化に加え、R&D機能の拡充が重要テーマとなる。資料では、RD/R&Dに関する記述が複数あり、NISSEY VIETNAMを中心に研究開発の役割を高める構想が示されている。これにより、単なる受託生産から、試作・設計改善・工程最適化を含む提案型の事業運営へ移行する狙いがある。加えて、カンボジアとベトナムの役割分担を明確化し、生産の効率化と市場対応力を高めることが、計画の実行面での柱となる。

市場(地域)別の目標としては、ASEANを中心に、Japan、Hong Kong、Cambodia、Vietnamの各拠点を連携させ、需要変動に応じた供給体制を構築する考え方が示されている。さらに、Beyond Chinaの方針の下で、ASEANで磨いた製造モデルを他地域へ展開していく意欲も読み取れる。これにより、特定市場の変調に左右されにくい、複線型の事業構造を作る狙いがある。

具体的な強化策としては、第一に海外生産比率の引き上げ、第二にR&D機能の強化、第三に加工・表面処理技術の高度化、第四にASEAN内の拠点連携、第五に新市場・新用途への展開が挙げられる。特に、MachiningやSurface Treatment、DLCなどの工程技術は、品質と差別化を左右する要素であり、同社の競争力の源泉となる。加えて、BtoC、BtoBの双方に対応できる営業・供給体制を整えることで、製品ポートフォリオの拡大にもつなげる考えだ。

総じて、日本精密の中期戦略は、時計バンド依存の事業構造を、ASEANを起点とした多機能型の製造・開発・販売体制へ組み替える取り組みといえる。2025年度までの実績は、その移行に向けた足場固めの段階であり、2026年度以降は、コスト競争力の確保と高付加価値化を両立しながら、成長市場への展開を加速する局面に入る。業界紙的に見れば、同社は「海外生産の最適化」と「技術・開発機能の内製化」を両輪に、収益基盤の再構築を進めている。

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