・英国内試験で時速177マイルを記録、8月にボンネビル挑戦
JCB :2026年6月17日
JCBは、水素燃料による陸上最高速度の世界記録樹立を目指すプロジェクト「JCBハイドロマックス(JCB Hydromax)」が開発段階を終え、実走試験へ移行したと発表した。車両は完成し、英国での走行試験を開始。試験では最高時速177マイル(約285km)を記録した。今後、米国ユタ州ボンネビルで国際自動車連盟(FIA)公認の水素陸上速度記録への挑戦を予定している。
同社は5月12日、英国スタッフォードシャー州の本社で、水素エンジン搭載車「JCBハイドロマックス」を公開し、世界記録挑戦計画を明らかにしていた。公開から約1カ月で車両開発を完了し、現在は英ケンブリッジシャー州の英空軍基地ウィタリング基地(RAF Wittering)で総合試験を進めている。
試験車両のドライバーは、世界最速記録保持者として知られるアンディ・グリーン空軍中佐(Andy Green OBE)。同氏の操縦により、試験では177マイル(約285km/h)に到達した。
来月には車両を米国ユタ州ボンネビル・ソルトフラッツへ空輸し、世界最大級の陸上速度競技イベント「スピードウィーク(SpeedWeek)」に参加。その後、FIA公認による世界水素速度記録への正式挑戦を行う。
JCBはこれまで約1億ポンド(約214億円、1ポンド=214円換算)を投じ、水素内燃機関技術の開発を推進してきた。現在では同技術を採用した油圧ショベルの量産も開始している。
JCBのアンソニー・バンフォード会長(Anthony Bamford)は、「12カ月前、この車は設計図上の構想だったが、今は実際に走行し英国で試験を進めている。次の本当の挑戦は、ボンネビルで世界記録を打ち立てることだ」とコメントした。
プロジェクト責任者であるJCBのライアン・バラード技術担当ディレクター(Ryan Ballard)は、「ここまで15万時間超の開発工数を投入した。今後は想定通りではなく、実際に車両が何を実現できるかを検証する段階になる。英国で積み重ねる試験や給水素、タイヤ交換の全てが、本番での成功につながる」と述べた。
また、FIAのモハメド・ベン・スライエム会長(Mohammed Ben Sulayem)は、「初の公式試験は新たな水素速度記録への重要な節目となる。JCBは技術革新と水素技術の限界を押し広げ、モータースポーツが将来のモビリティ発展に果たす役割を示している」と評価した。
プロジェクトは2025年6月、JCB、プロドライブ(Prodrive)、リカルド(Ricardo)、エクストラック(Xtrac)との技術会議から始動。約1年後の今年6月、全長32フィート(約9.8m)のJCBハイドロマックスが初めて水素燃料のみで走行した。
車両にはJCB製の量産ベース水素内燃機関を2基搭載し、総出力は1600馬力。現在JCB製油圧ショベルに搭載されているエンジンと同系統の技術を採用している。
設計面では徹底した軽量化と高性能化を追求した。配線総延長は約1kmに及び、多数の3Dプリント部品を採用。クランクシャフトは同社の448型水素・ディーゼルエンジンと共通部品を使用し、市販技術をベースに記録車両を構築した。
一方で最大の技術課題は高出力状態での耐熱性確保にある。ピストン冷却には毎秒1リットルの冷却油が必要となり、水素燃焼時の高温対策として専用排気バルブ技術も採用。チタン製ターボコンプレッサーは15万rpm超、約300℃で作動し、0.5秒ごとに浴槽1杯分相当の空気を供給する。
環境性能面では、記録走行1回当たりの水素消費量は約2kgにとどまり、副生成物として約18リットルの水を排出するという。
英国での試験では、パワートレイン、四輪駆動トランスミッション、クラッチ、ブレーキ、冷却系、専用制御電子機器に加え、水素補給やピット作業も含めた総合検証を実施している。
ボンネビルでハンドルを握るアンディ・グリーン氏は、地上最高速度763.035マイル(約1228km/h)の記録保持者であり、陸上で音速突破を達成した唯一の人物。2006年には「JCBディーゼルマックス(JCB Dieselmax)」でFIA公認ディーゼル陸上速度記録350.092マイル(約563km/h)を樹立しており、この記録は現在も破られていない。
JCBは今回、「JCBハイドロマックス」で2006年のJCBディーゼルマックスの350マイル超(約563km/h)の記録更新を目指す。新型車は先代より軽量、高出力、高速性能を実現したという。
今回の挑戦は、JCBが米テキサス州サンアントニオに建設中の総投資額5億ドル(約800億円、1ドル=160円換算)、延床100万平方フィート、敷地400エーカー規模の新工場開設を控える中で行われる。同工場では約1500人を雇用し、米国市場向け建設機械を生産する計画。
JCBは速度挑戦の歴史を持ち、2019年には「JCBファストラック(JCB Fastrac)」が世界最速トラクターとして135.191マイル(約218km/h)を記録。2014年には「JCB GT」がバックホーローダー最速記録72.58マイル(約117km/h)を達成している。
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