日本政府、MBKPによる牧野フライス買収に中止勧告、安保上の懸念理由に

工作機械大手の株式会社牧野フライス製作所(東証プライム:6135)に対するMMホールディングス株式会社(公開買付者)による株式公開買付け(TOB)について、財務大臣および経済産業大臣は2026年4月22日付で、外為法第27条第5項に基づく中止勧告を発出した。同社および公開買付者が4月23日に相次いで開示した。

■高精度工作機械が安保上のリスクと判断

勧告の根拠として両大臣が挙げたのは、牧野フライス製作所が製造する高性能工作機械の機微性。同社の製品は軍事転用の可能性が特に高い機微な貨物として輸出に際して経済産業大臣の許可を要するリスト規制品であり、日本の防衛装備品メーカーにも広く採用されている。

また、同社が保有する調達情報や営業情報についても、単独では機微性が認められない情報であっても、他の情報と組み合わせることで国家安全保障に関わる機微情報となり得るとした。さらに当局は、公開買付者による機微情報へのアクセスを制限しようとすれば、企業価値向上に必要な情報へのアクセスも困難になるという構造的な矛盾を指摘。「公開買付者の投資目的と両立しない」と結論付け、本件取得が外為法第27条第3項に規定する「国の安全等に係る対内直接投資等」に該当すると判断した。

なお勧告においては、公開買付者の全株式を保有するケイマン諸島籍ファンドの存在については言及があったものの、MBKパートナーズ株式会社およびそのグループ企業(MBKPグループ)の属性や資本構成については一切触れられていない。

■約10カ月の協議も実らず、公開買付者は「大きな驚き」

公開買付者は2025年6月にTOBを公表して以来、約10カ月にわたり当局とクリアランス取得に向けた協議を続けてきた。対米外国投資委員会(CFIUS)の実務を参照しつつ、安全保障上の懸念を払拭するリスク軽減措置の提示なども行い、2026年6月下旬の買付け開始を見込んでいた。それだけに、今回の勧告受領について公開買付者は「大きな驚きをもって受け止めている」とコメントしている。

■5月1日までに応諾か拒否かを通知

公開買付者は外為法第27条第7項の規定に基づき、2026年5月1日までに本件勧告を応諾するか否かを両大臣へ通知する予定としている。応諾の場合はTOBの断念となり、拒否の場合は命令手続きへ移行する可能性がある。現時点で公開買付者は「今後の対応を検討中」としており、その判断が注目される。

■牧野フライスは企業価値向上策を独自に検討

一方、牧野フライス製作所は、TOBの行方にかかわらず企業価値および株主共同の利益の最大化に向けて、企業価値向上策や増配・自己株式取得といった株主還元策の強化を含む「あらゆる選択肢」を検討していると表明した。なお、2025年6月に締結した公開買付契約書は、現時点でいずれの当事者も解除しておらず、有効に存続している。

牧野フライス製作所は横型・立型マシニングセンタをはじめとする高精度工作機械で国内外に高い評価を持つ。今回の政府判断は、先端工作機械の外資取得に対する安全保障審査の厳格化を改めて示すものとして、業界内外で広く注目されている。

ニュースリリース(開示情報1)
ニュースリリース(開示情報2)