日本精工(NSK、東京都品川区、市井明俊社長・CEO)とアトム(東京都江東区、青木俊介社長)は8月20日、国産ヒューマノイドAIロボットの開発・実装に向けた包括的なパートナーシップに関する基本合意書(MOU)を締結したと発表した。精密部品の量産技術とフィジカルAIを組み合わせ、国内一貫体制の構築と産業基盤の確立を目指す。
両社が取り組む協力内容は主に2点。第1に、NSKが開発するヒューマノイド向けアクチュエータをアトムの実機に搭載し、共同で性能検証を進める。実機評価で得た知見を製品開発にフィードバックし、国産アクチュエータの性能向上と量産課題の解決を加速させる。第2に、NSKの製造現場を活用し、アトムのヒューマノイドによるフィジカルAIデータの共同収集を実施する。実際の生産環境に由来するデータを用いて、基盤モデルの性能向上と高度な作業が可能なロボット開発を目指す。
背景には、ヒューマノイドロボット産業が日本経済の次の競争力源泉になるとの見通しがある一方、国内で本格的な立ち上げを担うプレイヤーが限られ、部品の海外依存が供給安定と量産化の課題となっている点がある。NSKの精密部品開発・量産能力とアトムのAI・ロボット技術を融合させることで、国内での開発・実装体制を整え、実データの効率的収集を可能にする狙いだ。両社はこれを日本のヒューマノイド産業全体の発展に向けた取り組みの一つと位置づけ、幅広い産業連携を視野にグローバル競争力の基盤づくりを進める方針を示している。
市井社長は「ヒューマノイドは日本の製造業が培ってきた精密技術の真価を発揮する領域。ベアリングやボールねじで培ったトライボロジー技術を礎にアクチュエータ開発に取り組み、人と共に働く社会の実現に必要なハードウェアの信頼性・耐久性を追求する。部品供給の面から産業を支え、日本発の産業が世界で競争力を持つ基盤づくりに貢献したい」とコメントした。
青木社長は「フィジカルAIとハードウェアの質の高い融合は世界的にも成功事例が限られる。精密部品で世界をリードするNSKの技術と当社の基盤モデル開発力を掛け合わせ、国産最高品質のヒューマノイドを実現する。日本発のリーダーとしてのポジションを確立し、産業全体を牽引するとともに、ハードウェアメーカーやサプライチェーンの成長機運を高める旗頭となる」と述べた。
NSKは1916年に日本初の軸受を生産して以来、軸受や自動車部品、精機製品で産業を支えてきた。軸受分野で世界第3位、ボールねじや電動パワーステアリングでも世界をリードする。アトムは2025年11月設立のスタートアップで、双腕二足の機体と環境認識・判断・行動生成を担うフィジカルAI基盤モデルを自社開発。多様な環境に適応し人間と現場で働けるロボットの実現を目指し、日本のGDPを1%引き上げることを目標に掲げている。