・カーボンソリューション事業の構造改革で
IHIは9月28日、連結子会社の独シュタインミュラー・エンジニアリングの全持分を、独投資会社ムターレスの完全子会社に譲渡すると決議した。譲渡日は10月中旬の予定。同社を取り巻く事業環境の悪化を受け、海外カーボンソリューション事業の構造改革の一環として実施する。
譲渡するのはシュタインミュラー・エンジニアリング(Steinmüller Engineering GmbH)の持分100%。譲渡先はムターレス(Mutares SE & Co. KGaA)の完全子会社であるムターレス・ホールディング106(mutares Holding 106 GmbH)で、譲渡後のIHIの持分比率は0%となる。譲渡価額は非開示だが、公正なプロセスを経て決定したとしている。
シュタインミュラー・エンジニアリングは、燃焼・焼却、排ガス処理、熱交換、エンジニアリング・コンサルティングの4分野で、E(設計)、EP(設計・調達)、EPC(設計・調達・建設)の各サービスを提供してきた。本社はグンマースバッハ(Gummersbach)で、2003年4月の設立。従業員数は8月末時点で165人。代表はシュテファン・ハメル(Stefan Hamel)氏が務め、IHIから役員1人を派遣している。IHIとの間には資金貸付や債務保証などの取引がある。
IHIは譲渡理由として、欧州の火力発電関連投資が石炭焚きから脱炭素や廃棄物発電へ大きくシフトしたことを挙げた。同社が当初想定していた褐炭焚きボイラ関連の事業機会は大幅に縮小した。プロジェクト遂行リスクの増大や、エンジニアリング分野の競争激化も背景にある。IHIは戦略的選択肢を幅広く検討し、ムターレスと協議を重ねてきた。
ムターレスは、改善余地のある事業を買収し、自社の投資・コンサルティング施策や追加買収を通じて発展を支援する上場産業持株会社。IHIは、ムターレスのポートフォリオとのシナジーや継続的な投資により、同社の競争力強化と持続的成長が可能と判断した。
業績面では、直近3年間の売上高が2024年3月期に3,264万ユーロ、25年3月期に1,305万ユーロ、26年3月期に4,211万ユーロと大きく振れた。総資産は同順に4,960万ユーロ、4,675万ユーロ、4,885万ユーロ。資本金は300万ユーロ。純資産や営業利益は譲渡先の意向で非公表だが、適時開示上の軽微基準内としている。
ムターレスは2008年2月設立で、本社はミュンヘン。代表はロビン・ライク(Robin Laik)CEO。2026年6月末の連結ベースで、純資産は7億3,840万ユーロ、総資産は56億5,720万ユーロ、従業員数は3万5,000人。大株主はライク一族が21%、経営陣・監査役会が9%で、残り70%が浮動株。IHIとの間に資本・人的・取引関係はない。
本件により、IHIは2027年3月期の連結決算でその他の費用として約140億円を、個別決算で特別損失として約170億円を計上する予定。8月5日公表の同期通期連結業績予想(売上収益1兆8,400億円、営業利益2,500億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,720億円)に変更はない。
IHIは、成長領域へ経営資源をシフトし、カーボンソリューション事業で引き続き高成長を目指す方針。