・税率は10~12.5% 繊維は数量枠も導入へ
米国政府:2026年7月23日
米通商代表部(USTR)は7月23日、強制労働によって生産された物品の輸入を禁止・実効的に取り締まっていないとして、通商法301条に基づく制裁関税の発動を正式に決定した。対象は日本、EU、中国、韓国、台湾、英国、カナダ、メキシコなど計60の国・地域。関税率は品目ごとに10%または12.5%とし、一部品目は適用除外とするほか、繊維・アパレル分野では関税割当(TRQ)制度を新設する方向で調整を進める。産業機械や部品を含む幅広い品目が対象となり、対米輸出に依存するメーカー各社は対応を迫られそうだ。
■発端は今年3月の調査開始
USTRは今年3月12日、対象60カ国・地域が強制労働による生産品の輸入禁止措置を導入・実効化していないとして301条調査を開始。6月2日には、各国・地域の対応が「不合理であり米国の通商を阻害している」との認定を公表した。これを受けてUSTRは7月7~9日に公聴会を開き、1,600件超の意見書と100人超の証言を集めたうえで、今回の関税措置を大統領覚書として確定させた。
■税率は3区分、EU・日本などはMFN税率と合算
関税率は対象国・地域の対応状況に応じて3段階に分かれる。
・10%適用:アルゼンチン、バングラデシュ、カンボジア、カナダ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、インド、インドネシア、ヨルダン、マレーシア、メキシコ、パキスタン、スリランカ、英国、トリニダード・トバゴの17カ国・地域。輸入禁止規定はあるものの実効的な取り締まりが不十分な国や、相互貿易協定で是正を約束した国が中心。
・MFN税率との合算方式:EUと台湾は最恵国(MFN)税率と合わせて合計10%に、日本・韓国・スイスは合計12.5%になるよう301条関税を上乗せする。すでにMFN税率がこの水準に達している品目については追加関税はゼロとなる。
・12.5%適用:上記以外の全対象国・地域(中国、ロシア、サウジアラビアなど)。
このほか、公表後に新たに輸入禁止措置を導入したカンボジア、グアテマラ、ホンジュラス、インド、スリランカ、トリニダード・トバゴと、協定上の是正を約束したヨルダンについては、対応を評価する形で税率を10%に据え置いた。
■原材料や供給が限られる品目は適用除外
USTRは、国内供給が不足するおそれのある原材料、経済全体に混乱を及ぼしかねない品目、米国内で十分な量を生産できない品目などについて、覚書の付属書(Annex)に基づき関税を適用除外とする。産業機械分野で使用される特定原材料や部材が対象に含まれる可能性があり、今後発表される付属書の詳細が注目される。
■繊維・アパレルは数量枠(TRQ)を新設へ
バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、マレーシアの4カ国については、米国産綿花・繊維製品の輸入拡大を促す狙いから、当初3年間の関税割当(TRQ)を導入する方針も示された。米国産原料の使用実績に応じ、一定数量までは301条関税を免除する仕組みで、USTRは9月1日をめどに制度を稼働させる考え。制度開始までは、対象となる繊維・アパレル品目にも10%の関税を暫定適用する。
■各国措置は「相互に独立」、一部無効でも他は継続
覚書は、60カ国・地域に対する措置がそれぞれ独立した行政行為であることを明記し、仮に一部の国に対する関税や適用除外が法的に無効と判断されても、他の国・地域への措置には影響しないとする分離条項(セベラビリティ条項)を盛り込んだ。
■今後の展開
USTRは今後、関税分類変更などを反映するため関税率表(HTSUS)を改正するとみられる。対米輸出を手がける機械・部品メーカーにとっては、原産地ごとの適用税率や適用除外品目の精査が急務となる。特にEU・日本・韓国・台湾・スイス各国からの輸出案件では、既存のMFN税率次第で実質的な負担増が左右されるため、通関実務での確認作業が求められそうだ。
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