ABBロボティクス、NVIDIAと共同でフィジカルAIの製造業への活用指針を提示

ABB:2026年7月17日

チューリッヒ発、ABBロボティクス(ABB Robotics)は7月17日、エヌビディア(NVIDIA)と共同で、フィジカルAI(Physical AI)が精密製造にもたらす変革効果をまとめたホワイトペーパーを公開した。従来の自動化では変化への対応速度が十分ではないと指摘し、フィジカルAIを迅速に導入するための手法を提案。ロボットビジョンを導入の重要な入り口と位置付け、製造現場における高度な自律化と柔軟性の実現を目指す。

ホワイトペーパーでは、生成AI(Generative AI)の進展により、ロボットは事前に定義された作業を繰り返す存在から、状況を理解し、適応し、リアルタイムで学習する「自律・多用途ロボティクス(Autonomous Versatile Robotics:AVR)」へ進化すると説明している。

ABBロボティクスインダストリーズ事業部マネージングディレクターのクレイグ・マクドネル(Craig McDonnell)氏は、「フィジカルAIはロボットの役割や活躍する現場、創出する価値を根本から変える。合成データで学習したデジタルツインと実機とのギャップを埋めることは大きな技術的飛躍であり、高精度なデジタルツインを産業向けエンジニアリングプロセスに組み込むことで、自律・多用途ロボティクスの可能性を最大限に引き出せる」としている。

また、NVIDIAロボティクス・エッジAI担当バイスプレジデントのディープ・タラ(Deepu Talla)氏は、「シミュレーションや合成データ、高速コンピューティング、AIモデルを組み合わせることで、製造業はより多くのシナリオを事前検証でき、例外的なケースへの対応を早期に進められる。デジタル空間と現実世界の間で継続的に学習するループを構築することが重要だ」と述べている。

ホワイトペーパーは、アジアインフォ(AsiaInfo)、デロイト(Deloitte)、スカイ・インテリジェンス(SKAI Intelligence)の協力を得て作成された。設計段階でロボットビジョンのリスク評価を行う「デジタルファースト」のエンジニアリング手法を提案しており、デジタルツインや用途別の合成データ、AI検証を実機導入前に実施することで、問題を早期に発見・解決し、再利用可能なエンジニアリング資産として蓄積できるとしている。さらに、実運用データを継続的にデジタルモデルへ反映することで、閉ループ型の継続的な最適化を実現する。

ABBロボティクスは、この考え方を支える「フィジカルAIツールチェーン(Physical AI Toolchain)」の開発も進めている。シミュレーションデータ、合成データ、実環境データを組み合わせた継続学習ワークフローにより、ロボットをプログラムするのではなく学習させるアプローチを実現する。オープンで柔軟なAIエコシステムを通じて、ユーザーはABBの産業ノウハウと最適なAIモデルやデータを組み合わせ、産業用途に求められる精度と拡張性を確保できるという。

また、ホワイトペーパーでは、AIを活用した自動化を大規模展開するために、リファレンスアーキテクチャー、AI検証、ロボット検証、継続的フィードバックを組み合わせる重要性についても解説している。

今回の発表は、ABBロボティクスとNVIDIAが2026年3月に締結した戦略的パートナーシップの成果の一つとなる。この協業により開発された「ロボットスタジオ・ハイパーリアリティ(RobotStudio HyperReality)」は、ABBのオフラインプログラミング・シミュレーションプラットフォーム「ロボットスタジオ(RobotStudio)」と、エヌビディア・オムニバース(NVIDIA Omniverse)の高精度な物理シミュレーション技術を融合したソリューションである。

これにより、長年の課題であった「シム・トゥ・リアル(sim-to-real)」のギャップを解消し、メーカーはフィジカルAIを活用したロボットアプリケーションを、より迅速かつ高い信頼性で設計・検証・導入できるようになるという。

ABBロボティクスは、ロボットスタジオ・ハイパーリアリティ(RobotStudio HyperReality)について、先行顧客での実証試験を経て、2026年後半に世界6万人以上のロボットスタジオ(RobotStudio)ユーザーへ提供を開始する予定としている。

ニュースリリース