オークマは5月8日、旋盤の旋削主軸を対象とした軸受診断機能を新たに開発し、2026年4月より販売を開始したと発表した。既存の「AI機械診断機能」に同機能を追加することで、送り軸・ミーリング主軸・旋削主軸という工作機械の主要要素を幅広くカバーする診断プラットフォームへと発展させた。
■ センサレスで旋削主軸を診断——世界初の技術を実用化
今回の最大の特長は、追加センサを一切必要とせず、CNC制御装置の内部情報のみで旋削主軸の状態を診断できる点だ。同社はこれを「世界初」(同社調べ、2026年4月時点)と位置づける。熟練技術者でも把握が困難なマイクロメートルオーダーの微細な状態変化を捉えることが可能であり、突発的な機械停止の予防保全に大きく貢献する。
従来の主軸軸受診断は、作業者によるセンサ取り付けや専用測定器を用いたデータ収集・分析が必要で、結果取得まで約1時間を要していた。新機能ではCNC制御装置内で計測・データ整理・判断を完結させることで、診断時間を約3分に短縮した。操作はOSP画面から実行でき、診断結果は色や表示サイズで視覚的に示されるため、保全の専門知識を持たないオペレーターでも直感的に状態を把握できる。
■ 高信頼性を支える3つの特許技術とエッジAI
診断精度の裏付けとなるのは、同社が長年にわたり現場で収集してきた55,000件以上の実機データだ。このデータを用いて学習・検証を繰り返し、自社製品の検査工程での実運用を通じて信頼性を高めてきた。
技術面では、データ収集・前処理・判断の診断プロセス全体をカバーする3つの特許技術を採用し、ノイズや機械個体差の影響を抑えた高精度な診断を実現している。またAIはクラウドや外部サーバーではなく、CNC制御装置(エッジ)に内蔵することで、工作機械が自律的に自身の状態を判断する仕組みを構築した。機械構造・駆動系の要素特性と制御系の特徴を融合するという、工作機械メーカーとCNCメーカーを兼ねる同社ならではのアプローチが、センサレスでの高精度診断を可能にしている。
■ 無人化・自動化時代を見据えた診断技術の進化
同社は2002年以降、工作機械の知能化技術を継続的に開発してきた。2016年にはAIをCNC制御装置に内蔵した「AI機械診断機能」を世界に先駆けて発表しており、今回の旋削主軸診断機能はその延長線上にある取り組みだ。
自動化ラインや夜間連続運転など、人が介在しない生産現場が広がる中、稼働状況の常時監視や状態判断を人手に頼ることは年々難しくなっている。同機能は「AI稼働分析」「AI加工診断機能」と組み合わせることで、稼働・加工・保全の各フェーズを包括的にカバーし、スマートマシンとしての自律性をさらに高める。
■ 適用機種と展開スケジュール
2026年7月の国内向け受注分より、LB EXシリーズ・MULTUS BⅡシリーズ・MULTUS Uシリーズへの標準適用を開始する。また、LU EXシリーズ・LT EXシリーズ・MULTUS B550・LAW-2S・LAW-FⅡにはオプション設定として提供される。
同社は今後も、現場知見を基にしたAIと、工学知見・設計・制御技術を融合した技術開発を加速し、単なる異常検知にとどまらず、診断根拠の提示や改善策の提案まで行えるソリューションの実現を目指すとしている。