川崎重工業が11月11日に発表した2026年3月期第2四半期(中間期、4〜9月)業績によると、連結受注高は前年同期比1,201億円増加(前年同期比13.4%増)の1兆154億円、連結売上収益は前年同期比1,120億円増収(同12.7%増)の9,962億円、事業損益は前年同期比120億円減益(同74.8%減)の357億円の利益、税引前中間損益は前年同期比116億円(同49.0%増)改善して353億円の利益、親会社の所有者に帰属する中間損益は前年同期比84億円改善(同61.6%増)して220億円の利益となった。
世界経済は、米国関税政策の影響による物流・為替動向の変動や長期化する中国経済の停滞、地政学リスクの増大等の懸念があり、先行きは依然として不透明な状況。国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等により、内需主導で緩やかな景気回復が持続すると見込まれる。一方、海外景気の下振れリスクや為替相場の変動など経済への影響には注視が必要。このような経営環境の中で、中間期における同社グループの連結受注高は、防衛省向けやボーイング向け、民間機向け航空エンジンの増加、エネルギー事業や船舶海洋事業の好調により、全体でも増加となった。
連結売上収益については、航空宇宙システム事業、車両事業、エネルギーソリューション&マリン事業、精密機械・ロボット事業、パワースポーツ&エンジン事業などでの増収により、全体でも前年同期比で増収となり、過去最高を記録した。利益面に関しては、事業損益は、円高や関税コストの上昇等により前年同期比で減益となった。親会社の所有者に帰属する中間損益は、期末の円安進行に伴う為替差益計上等により、前年同期比で改善となった。
■セグメント別業績の概要
<航空宇宙システム事業>
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、引き続き需要増や採算性の改善が期待される。民間航空機については、航空旅客需要は回復から成長のフェーズに移行しており、機体・エンジンともに需要が増加している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向けやボーイング向けなどが増加したことにより751億円増加の2,851億円となった。連結売上収益は、防衛省向けやボーイング向け、民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、84億円増収の2,425億円となった。事業損益は、増収はあるものの、為替レートが円高に推移した影響やエンジンMRO事業参入に伴う固定費の増加、民間機向け航空エンジン(新造)の台数増などにより、前年同期に比べ152億円減益の101億円となった。
<車両事業>
車両事業を取り巻く経営環境は、インバウンドの復調等により鉄道車両への投資が再開されている。海外市場では、大都市における混雑緩和対策のための都市交通整備などに伴い需要が見込まれる。一方で、電子部品を中心とした機器調達の長期化には注視が必要。中長期的には、海外市場における交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に安定した成長が見込まれる。
このような経営環境の中で、連結受注高は、北米向けが減少したものの、アジア向けが増加したことなどにより前年同期並みの277億円となった。連結売上収益は、国内向けや米国向けが増加したことにより、前年同期に比べ323億円増収の1,193億円となった。事業利益は、増収などにより、前年同期に比べ33億円増益の49億円となった。
<エネルギーソリューション&マリン事業>
エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界的なカーボンニュートラルの実現を目指す動きの影響を受け、LNG回帰に伴うトランジションソリューションや、KCC(Kawasaki CO₂ Capture)などの脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加している。一方、米国関税政策の影響による物流・為替動向や、原材料価格や資機材・燃料費、人件費の継続的な上昇等には注視が必要。
このような経営環境の中で、連結受注高は、前年同期にLPG/アンモニア運搬船を複数隻受注した反動はあるものの、防衛省向けの増加や海外LNGタンクの受注などにより264億円増加の2,375億円となった。連結売上収益は、エネルギー事業や船舶海洋事業など各分野での増収により、前年同期に比べ273億円増収の1,873億円となった。事業利益は、増収などにより、前年同期に比べ78億円増益の199億円となった。
<精密機械・ロボット事業>
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械(油圧機器)分野では、不動産不況の長期化等により需要が低迷していた中国建設機械市場は、輸出機を中心に回復が本格化している。特に鉱山用の大型機向けや、アフリカ、東南アジア地域への輸出向けに注文数が増加。また欧州建機市場の停滞は底を打ち、緩やかな回復傾向にある。
ロボット分野では、汎用ロボットは米国関税政策や中国の景気低迷に伴い需要は依然低調も、人件費上昇や労働力不足を背景として自動化需要は確実に高まっている。半導体製造装置向けロボットは、AI分野の成長を主因に2024年度後半から需要は回復傾向にある。
このような経営環境の中で、連結受注高は、中国建設機械市場向け油圧機器が増加したものの、自動車向けロボットが減少したことにより前年同期並みの1,262億円となった。連結売上収益は、中国建設機械市場向け油圧機器や半導体製造装置向けロボットの増加などにより、前年同期に比べ75億円増収の1,170億円となった。事業利益は、増収や持分法損益の改善などにより、前年同期に比べ23億円改善して42億円の利益となった。
<パワースポーツ&エンジン事業>
パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、主要市場である米国では二輪車は高いシェアを維持しているが、四輪車は中長期的には市場成長を見込むものの、足元はローン金利や燃料価格上昇の影響を受けやすいレクリエーションモデルの販売が軟化している。欧州では新排ガス規制試行前の駆け込み販売の反動により小売市場は一時的な減少に転じている。東南アジアでは一部地域で増加傾向が見られるも、依然としてスポーツセグメントは低水準で推移している。
このような経営環境の中で、連結売上収益は、為替レートが円高に推移した影響はあるものの、北米向け四輪車や先進国向け二輪車の増加などにより、前年同期に比べ394億円増収の2,927億円となった。事業利益は、増収はあるものの、為替レートが円高に推移した影響や増産投資に伴う固定費の増加や販売促進費の増加、米国関税政策の影響などにより、前年同期に比べ100億円減益の48億円となった。
<その他事業>
連結売上収益は、前年同期に比べ29億円減収の371億円となった。事業利益は、前年同期に比べ1億円増益の17億円となった。
川崎重工業グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素・大型CO2回収事業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を着実に進めている。
■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
2026年3月期連結業績は、売上収益2兆3,400億円(前期比9.9%増)、事業利益1,450億円(同1.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益820億円(同▲6.8%減)。
連結受注高は、防衛省向けやボーイング向け、民間機向け航空エンジンの増加、海外LNGタンクの受注や発電設備の増加、新興国向け二輪車の増加や米国パワースポーツ市場の需要が従来予想を上回って推移している状況を考慮し、前回公表値から3,000億円増加の2兆5,300億円となる見通し。
売上収益は前回公表から上方修正し、2兆3,400億円と過去最高を更新する見通し。事業利益は関税等の影響により、前回公表値1,450億円(過去最高)から変更なし。事業利益は、特に航空宇宙システムにおいて、下期に売上が偏る防衛省向けの売上構成比の上昇や、民間航空エンジンの整備台数増加に伴うアフターセールス比率の上昇により、例年にも増して下期偏重を見込む。
業績予想における為替レートは、1ドル=145円、1ユーロ=165円を前提としている。なお、税後ROICは6.9%となる見通し。年間配当金予想は150円を据え置く。
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