川崎重工、23年度の売上収益は7.2%増の1兆8,492億円、24年度予想は21.7%増の2兆2,250億円

・受注高は2.3%増の2兆834億円、24年度予想は13.3%増の2兆3,600億円

 川崎重工業が5月9日に発表した2024年3月期(2023年度)業績によると、連結受注高は前期比459億円増加(2.3%増)の2兆834億円、連結売上収益は前期比1,236億円増収(7.2%増)の1兆8,492億円、事業利益は前期比361億円減益(43.9%減)の462億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比276億円減益(52.3%減)の253億円となった。また、事業利益率は2.5%、税後ROICは2.8%、ROEは4.2%となった。なお、 現状の資本コスト(WACC)は4~5%台と推計しているが、直近の株価動向を考慮すると今後上昇の可能性があるとしている。

 世界経済は、米国では良好な雇用情勢や所得環境により個人消費を中心に堅調さを維持しているが、不動産不況が長期化する中国経済や地政学リスクの増大等、先行きは引き続き不透明な状況。国内においては、物価上昇を上回る賃上げ等による消費マインドの改善が見込まれ、設備投資の拡大やインバウ ンド需要により緩やかな景気回復が続くものの、日銀の政策変更による金利の上昇や、それに伴う為替相場の変動など経済への影響に注視が必要。

 このような経営環境の中で、2023年度における川崎重工グループの連結受注高は、車両事業、精密機械・ロボット事業などでの減少となったものの、航空宇宙システム事業などでの増加により増加となった。
 連結売上収益については、車両事業、航空宇宙システム事業などが増収となったことにより、全体でも前期比で増収となった。
 事業利益は、エネルギーソリューション&マリン事業などでの増益はあったものの、航空宇宙システム事業、パワースポーツ&エンジン事業、精密機械・ロボット事業での悪化などにより、前期比で減益。親会社の所有者に帰属する当期利益は、事業利益の減益などにより減益となった。

 川崎重工2024年3月期通期データ

■セグメント別業績の概要
<航空宇宙システム事業>
 航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、引き続き需要増が期待される。民間航空機については、航空旅客需要はほぼコロナ前水準に回復しており、この機体のコロナリバウンド需要が旺盛なことから、機体・エンジンともに需要が増加している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品が増加したことなどにより、前期に比べ3,470億円増加の6,926億円となった。
 連結売上収益は、民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を一括計上したものの、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品などが増加したことなどにより、前期に比べ473億円増収の3,961億円となった。
 事業損益は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品などの増収による増益はあるものの、民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を一括計上したことなどにより、前期に比べ298億円悪化して150億円の損失となった。
<車両事業>
 車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの収束により利用者数が回復し、国内外で鉄道車両への投資が再開している。一方で、足元への影響は限定的ではあるものの、電子部品を中心とした機器調達の長期化等、 収束が見えつつも注視が必要。中長期的には、海外市場では都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道 インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれる。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車等の大口案件を受注した前期に比べ2,244億円減少の887億円となった。
 連結売上収益は、国内向け車両が減少したものの、米国向け車両が増加したことなどにより、前期に比べ640億円増収の1,959億円となった。
 事業利益は、国内の操業低下があったものの、増収による増益などにより、前期に比べ23億円増益の37億円となった。
<エネルギーソリューション&マリン事業>
 エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界的なカーボンニュートラルの実現を目指す動きの影響を強く受け、川崎重工が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加している。また、国内外の分散型電源需要及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続している。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの供給安定性など足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費の高止まり等による受注、売上収益へ の影響には注視が必要。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向け艦艇用機器や国内ごみ焼却設備などの受注はあったものの、LPG/アンモニア運搬船の受注の多かった前期に比べ373億円減少の4,016億円となった。
 連結売上収益は、LPG/アンモニア運搬船を中心とした船舶海洋分野やエネルギー分野を主要因として、前期に比 べ386億円増収の3,532億円となった。
 事業利益は、船舶海洋分野の持分法投資利益の増加、エネルギー分野の増収による増益などにより、前期に比べ 280億円増益の319億円となった。
<精密機械・ロボット事業>
 精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国以外の地域における建設機械市場については堅調に推移したが、中国建設機械市場は、不動産不況の長期化等の影響により需要が低迷した。ロボット分野では、半導体製造装置向けロボットの需要の低迷が底を打ち、2024年度からAI関連やグリーン投資関連等の新たな需要を取り込みつつ、回復していく。一方で、一般産業用ロボットは、最大の需要国である中国の景況が依然として低調であり、在庫調整が長期化しているが、人件費上昇や労働力不足による自動化需要は確実に高まっている。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、中国建設機械市場向け油圧機器や産業用ロボット全般が減少したことなどにより、前期に比べ486億円減少の2,133億円となった。
 連結売上収益は、中国建設機械市場向け油圧機器や産業用ロボット全般が減少したことなどにより、前期に比べ 247億円減収の2,279億円となった。
 事業損益は、減収に加え、操業低下の影響などにより、前期に比べ107億円悪化の19億円の損失となった。
<パワースポーツ&エンジン事業>
 パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、主要市場である米国と欧州では需要は堅調に推移してい るものの、前年度のサプライチェーン混乱が収束し各メーカーの供給量が増えた結果、市場競争が激化している。また、レクリエーション需要が弱まっていることから、欧米以外は全般的に中大型二輪市場が縮小しつつある。
 このような経営環境の中で、連結売上収益は、北米向け四輪車と欧州向け二輪車が増加したものの、中国、東南 アジア向け二輪車と汎用エンジンが減少したことなどにより、前期並みの5,924億円となった。
 事業利益は、固定費の増加や、米国向け四輪車に係るリコール関連費用(※)の計上などにより、前期に比べ234 億円減益の480億円となった。
※ 米国向け四輪車の一部機種におけるリコールに関し、米国消費者製品安全委員会から制裁金を課す旨の通知を 受領したもの。

<その他事業>
 連結売上収益は、前期に比べ28億円減収の835億円となりました。 事業損益は、前期に比べ29億円改善して11億円の利益となった。

■ 今後の見通し
 2025年3月期の連結業績については、売上収益は航空宇宙システム事業における防衛需要の増加及びパワースポーツ&エンジン事業における四輪増産等による増収により、前期比4,008億円増(21.7%増)の2兆2,500億円となる見通し。
 事業利益は昨年度に実施したPW1100G-JMの運航上の問題に係る損失一括処理の反動に加え、上記の増収効果や各セグメントにおいて利益率改善に向けた取組みが進んでいることにより、前期比838億円増(181.4%増)の1,300億円、親会社の 所有者に帰属する当期利益は780億円(207.4%増)、税後ROIC は6.7%、ROEは11.5%となる見通し。
 連結受注高は、パワースポーツ&エンジン事業における増収及び車両事業における海外案件の受注等により、前期比2,765億円増(13.3%増)の2兆3,600億円となる見通し。

 なお、業績予想における為替レートは、1ドル=140円、1ユーロ=150円を前提としている。

 川崎重工業の2024年3月期決算短信

 決算説明資料