日本製鋼所、中期経営計画「JGP2028」をアップデート、防衛・電力/原子力向け需要取り込みで29年3月期売上高4,000億円目指す

日本製鋼所(JSW)は7月13日、2025年3月期を初年度とする中期経営計画「JGP2028」のアップデートを改めて発表した。地政学リスクの高まりやAI・データセンター需要の急拡大など、策定時から大きく変化した事業環境を踏まえ、防衛関連機器、電子デバイス、素形材・エンジニアリング(電力・原子力)を成長領域と位置付け、財務目標を上方修正した。

■2025年度までの業績概況

26年3月期(25年度)の連結業績は、売上高2,748億円、営業利益253億円(営業利益率9.2%)、ROE9.5%と、24年3月期実績(売上高2,525億円、営業利益180億円)から増収増益を確保した。

事業セグメント別に見ると、産業機械事業では防衛関連機器が322億円(25.3期)から469億円(26.3期)へ急伸したほか、電子デバイス他も277億円から416億円へ大きく伸長し、増益をけん引した。一方、樹脂製造・加工機械は722億円から729億円とほぼ横ばいで推移し、EV市場の成長減速に伴うセパレータフィルム関連の設備投資停滞が影響した。素形材・エンジニアリング事業は384億円から397億円とほぼ横ばいで推移した。

市場別では、防衛省による装備品需要の拡大、AI・データセンター関連投資の急増を背景とした電子デバイス・電力機器向け需要が業績を下支えした一方、EV市場の減速や地政学リスクの高まりによる中国・欧州の設備投資停滞が樹脂機械事業の重荷となった。

■2026年度以降の見通し

27年3月期(26年度)は、売上高3,100億円(当初計画3,200億円対比△100億円)、営業利益270億円(同+10億円)、営業利益率8.7%を予想。売上は樹脂製造・加工機械(EV関連投資停滞)が計画未達となる一方、防衛関連機器(720億円)や電子デバイス他(450億円)が計画を上回る見込みで、営業利益は当初計画を上回る見通しとなった。

部門別には、防衛関連機器は装輪装甲車の量産開始やミサイル発射筒の増産体制構築により高水準の需要が続く。電子デバイス他はG8世代OLEDパネル向けレーザアニール装置(F-ELA)やデータセンター向けプリント基板用プレス機の需要拡大が続く見通し。素形材・エンジニアリングは高効率火力発電・原子力発電向けロータシャフト需要が中計想定を大幅に上回るペースで推移する。

■中期経営計画(成長戦略)のアップデート

・方針・方向性
JSWは2033年度に売上高5,000億円規模の企業グループへの成長を目指しており、その通過点となるJGP2028では、地政学リスク、エネルギー政策の変容、AI普及によるデータセンター増加という3つの構造変化を成長機会と捉え直し、防衛関連機器、電力・原子力製品、電子デバイス、フォトニクスへの重点投資にシフトする方針を明確化した。

・数値目標
29年3月期の財務目標は、売上高4,000億円(当初計画3,800億円対比+200億円、+5.3%)、営業利益400億円(同370億円対比+30億円、+8.1%)、営業利益率10.0%(同+0.3ポイント)、EBITDA550億円(同+32億円)に上方修正。ROE10~11%、配当性向35%は据え置いた。

セグメント別では、産業機械事業は売上高3,150億円(当初計画3,180億円)とほぼ横ばいながら、防衛関連機器(520億円、当初370億円)や電子デバイス他(520億円、当初370億円)が計画を大きく上回る一方、樹脂製造・加工機械(850億円、当初1,230億円)は下方修正となった。素形材・エンジニアリング事業は売上高800億円(当初585億円)、営業利益160億円(当初114億円)と、電力・原子力製品の需要拡大により大幅な上方修正となった。

■事業別・市場別の具体的強化策

・樹脂製造機械:中国市場の投資再開とインド・中東等成長地域への経営資源重点配分。中国・インドで営業体制とパートナー網を拡充。

・樹脂加工機械:EV需要の減速を受けつつも、ESS(蓄電池)向け需要の増加を捉え、高強度・薄膜化に対応したセパレータフィルム製造装置を投入。

・成形機:欧州での電動化需要とインドの高級機市場を取り込み、プラスチック射出成形機のグローバルシェアを拡大。マグネシウム射出成形機はフィジカルAI(人型ロボット)向け新型機を27年3月期に投入予定。

・防衛関連機器:広島・室蘭・名機の各製作所による適地生産・相互補完体制を強化し、装輪装甲車の量産およびミサイル発射筒の増産に対応。将来装備品としてレールガンの研究試作も推進。

・電子デバイス他:OLEDパネル向けF-ELA装置は既存クリーンルームの拡張と新設(28年3月期稼働予定)により供給能力を増強。データセンター向け高多層プリント基板用プレス機、次世代パッケージ基板用ラミネーターも開発強化。

・素形材・エンジニアリング:高効率火力発電(GTCC)向けロータシャフトの設備能力を1.5倍に増強、原子力製品の生産能力は29年3月期までに倍増する計画。子会社・室蘭銅合金(JX金属との合弁)ではデータセンター向け高性能チタン銅の供給体制を強化。

・フォトニクス(新規事業):窒化ガリウム(GaN)結晶、ニオブ酸リチウム(LN)結晶の量産化・顧客評価を加速するため「フォトニクス事業室」を新設し、事業化フェーズへ移行。

■投資・財務戦略

JGP2028期間中の累計キャッシュ・アロケーションは3,230億円(当初計画2,570億円から増額)とし、設備投資1,115億円(電子デバイス、電力・原子力製品向けを重点強化)、研究開発投資360億円、M&A投資250億円などに充当する。有利子負債は一時的に増加し28年3月期末に1,362億円、ネットD/Eレシオ0.29まで上昇するが、29年3月期末には431億円、0.17まで改善する見通し。自己資本比率は45%以上を維持し、財務健全性を確保するとしている。

同社は、防衛・電力・原子力・電子デバイスといった成長領域への重点投資により一時的にROICスプレッドが悪化するとしつつも、中長期的な企業価値向上とROE10~11%の実現を目指す方針を示した。

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