荏原製作所が5月15日に発表した2026年12月期第1四半期(2026年1月1日〜3月31日)の連結業績は、受注高・売上収益・営業利益・純利益のいずれも第1四半期として過去最高を更新する好決算となった。売上収益は2,463億1,100万円(前年同期比15.8%増)、営業利益は267億4,900万円(同18.4%増)、税引前利益は269億4,000万円(同16.7%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益(純利益)は183億2,200万円(同16.0%増)だった。1株当たり四半期利益は40円13銭(前年同期34円18銭)となった。
なお、IFRSを採用しているため「経常利益」の区分はなく、税引前利益がこれに相当する。
受注高は3,249億5,100万円(前年同期比62.6%増)と大幅に伸長した。精密・電子セグメントにおけるAI向け需要の急拡大と、環境セグメントでの大型案件受注が主な押し上げ要因となった。
■経営成績等の概況
第1四半期において、国内経済は個人消費や設備投資の持ち直しにより緩やかな回復が続いた。世界経済も中国の停滞リスクを抱えつつも持ち直し傾向にあったが、中東・ウクライナ情勢の長期化、米国の関税政策、米中対立に伴う半導体輸出管理規制の強化といった地政学リスクは引き続き注視が必要な状況にある。
こうした環境下で荏原製作所グループは、2026年を初年度とする3カ年中期経営計画「E-Plan2028」を策定し、「全体最適を通じた持続的価値創造の実現」をテーマに経営基盤の強化を進めている。
業績の増減要因を営業利益ベースで分析すると、エネルギーを除く全セグメントでの増収効果がプラス133億円の押し上げ要因となり、主に環境セグメントでの収益性改善がプラス20億円を上乗せした。一方で、ベースアップを含む人件費増加や設備投資に伴う減価償却費の増加が固定費増加として合計マイナス119億円の下押し要因となったが、増収効果がこれを上回り、最終的に前年同期比41億円増の267億4,900万円の営業利益を確保した。為替の影響はプラス7億円だった。
■セグメントごとの経営成績
精密・電子セグメントは、AIを中心とした半導体需要の急拡大を背景に、顧客の工場稼働率上昇と増産投資拡大が追い風となった。受注高は1,512億2,500万円(前年同期比104.4%増)と倍増を超える伸びとなり、売上収益は829億4,900万円(同32.9%増)、セグメント利益は135億3,100万円(同63.9%増)、営業利益率は16.3%(前年同期比3.1ポイント改善)と大幅な増益を達成した。CMPを中心とする装置の受注が前倒しも含め大幅に増加し、ロジック/ファウンドリ向けに加えてメモリ向けもAI需要を背景に拡大した。ただし、案件ミックスやS&S(サービス&サポート)比率の低下が収益性をやや下押しした面もある。
エネルギーセグメントは、中東情勢の影響による一部案件の遅れや部品出荷・指導員派遣の停滞、水素事業関連費用の計上などが響き、唯一の減収減益セグメントとなった。売上収益は465億7,500万円(前年同期比4.2%減)、セグメント利益はマイナス16億6,600万円(前年同期は19億7,900万円の黒字)と赤字に転落した。受注高は557億5,200万円(同31.7%増)と製品分野を中心に回復しており、下期での巻き返しが期待される。
建築・産業セグメントは、海外では欧米・アジアでの受注が堅調、国内ではサービス&サポートの受注が好調に推移した。売上収益は630億7,500万円(同12.0%増)、セグメント利益は44億800万円(同1.8%増)と小幅増益だったが、材料費高騰による収益性悪化と人件費増加が増収効果を相殺する形となり、営業利益率は7.0%(同0.7ポイント低下)にとどまった。
インフラセグメントは、国内公共向けを中心に受注残高を順調に消化して増収を達成した。売上収益は232億7,100万円(同8.1%増)、セグメント利益は61億2,600万円(同9.4%増)、営業利益率は26.3%(同0.3ポイント改善)と高水準を維持した。受注高は147億8,300万円(同26.4%減)と前年同期を下回ったが、これは前年同期に大型案件を複数受注した反動によるものだ。
環境セグメントは、国内公共向け廃棄物処理施設の設計・調達・建設(EPC)案件での大型受注と、運転管理・メンテナンス(O&M)の拡大が重なり、受注高は324億9,400万円(前年同期比860.7%増)と桁違いの伸びとなった。売上収益は301億3,800万円(同28.4%増)、セグメント利益は61億7,400万円(同103.2%増)、営業利益率は20.5%(同7.6ポイント改善)と全セグメント中最大の改善幅を記録した。
地域別売上収益では、台湾・韓国・その他アジアが574億円(前年同期比75.2%増)と突出した伸びを示し、AI向け精密・電子製品の販売拡大を反映した。日本は999億円(同18.9%増)で最大の構成比41%を占める一方、中東は75億円(同41.9%減)と中東情勢の影響を強く受けた。北米も257億円(同15.2%減)と減収となった。
■連結業績予想(今後の見通し)
2026年12月期通期の連結業績予想については、2026年2月13日公表値から修正を行った。売上収益予想は1兆200億円(前期比6.4%増)、営業利益予想は1,250億円(同9.8%増)と変更なしとした。一方、税引前利益予想は1,420億円(前回予想比201億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益(純利益)予想は995億円(前回予想比129億円増・前期比29.8%増)へと大幅な上方修正を行った。1株当たり当期利益の予想は217円91銭となる。
今回の修正の主な理由は、持分法適用共同支配企業である水ing株式会社の全株式をインフロニア・ホールディングス株式会社へ2026年7月1日に譲渡することに伴う利益計上を見込んだためだ。同株式譲渡により、2026年12月期の連結損益計算書において金融収益34億円ならびに持分法で会計処理されている投資の売却益172億円を計上する見込みとなっている。なお、この株式譲渡は荏原・日揮ホールディングス・三菱商事の三社株主体制における共同判断によるもので、水インフラ分野の事業環境変化を踏まえ、水ingのさらなる企業価値向上に資する最適な株主への移行を判断したものだ。
第2四半期累計(上半期)の業績予想は、受注高を前回公表の5,180億円から5,770億円(前年同期比27.8%増)へと大幅に引き上げた。これは環境・エネルギー・精密・電子セグメントにおける受注増勢を反映したものだ。なお、業績予想の前提為替レートは1米ドル=145円、1ユーロ=175円、1人民元=20円と変更していない。
中東情勢の業績への影響については、2026年4月末時点の情報に基づいた試算として、2026年上期への直接影響額は合計マイナス21億円、通期ではマイナス14億円と見積もっており、現時点での影響は限定的と判断している。主な影響はエネルギーセグメントでのS&S売上遅延(上期マイナス14億円)と建築・産業セグメントでの原材料価格高騰・リードタイム延伸(通期マイナス10億円)で、いずれも業績予想に織り込み済みとしている。
年間配当金は1株当たり66円(第2四半期末33円・期末33円)を予定しており、前期の59円から7円増配となる。
■中長期の計画・ビジョン
荏原製作所は2026年を初年度とする3カ年中期経営計画「E-Plan2028」を新たに策定した。「全体最適を通じた持続的価値創造の実現」をテーマに掲げ、グループ全体最適による経営基盤の強化を通じてグローバル競争力と収益性を高めることを目指している。
通期の営業利益率目標は12.3%(前期実績11.9%)、ROIC(投下資本利益率)は11.8%、ROEは18.8%を見込んでいる。
精密・電子セグメントでは、AI関連を中心とした半導体製造装置市場(WFE)が10%以上の成長を見込んでおり、ロジック/ファウンドリおよびメモリ向け投資の拡大が継続すると見ている。エネルギーセグメントでは、LNG市場は6%台、エチレン市場は3%台の成長を見込みつつ、アンモニア・水素・CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)等の脱炭素関連市場の商用化移行を中長期の成長機会として捉えている。インフラセグメントでは海外水インフラ市場の4%台成長と、地球温暖化・異常気象を背景とした排水ポンプ需要の増加を見込んでいる。
資本的支出は2026年12月期通期で990億円を計画しており、成長分野への戦略的な投資継続と財務健全性の両立を図る方針。
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