日本精工(NSK)は9月10日、同社が持つ色素増感太陽電池(DSSC)技術を応用した次世代型エネルギー学習教材「色素増感太陽電池実験キット PEC-TOM03」を製品化し、ペクセル・テクノロジーズ(神奈川県川崎市)が 2026 年 10 月 1 日より試験販売を開始すると発表した。販売数量は 1,000 個限定。小学生から社会人研修まで、STEAM 教育や SDGs 教育の教材としての活用を想定しており、世界初となる「自分で描いた絵を太陽電池として利用し発電を体験できる教材」として注目される。
開発の背景:トライボロジー知見を再生可能エネルギー教育へ展開
NSK は長年培ってきた軸受グリースや保持器開発で得た有機材料の知見、およびトライボロジー技術を再生可能エネルギー分野へ展開する取り組みを進めている。本教材はその一環で、2024 年に藤沢市と東北大学で開催した子ども向け科学講座で採用した教材をペクセルと連携して改良。実用的な教材として販売可能なレベルに到達したため、試験販売に踏み切った。
製品の特長:自由なデザイン性と発電プロセスの体験を両立
本教材の最大の特徴は、付属の専用色素ペン(3 色)で描いた絵そのものを太陽電池として機能させ、発電体験ができる点にある。従来の太陽電池工作キットは「単色パネルを組み立てる」など自由度が低く、発電体験も「電子オルゴールを鳴らす」など一過性のものが多かった。これに対し、本キットは電気を「ためる」「電圧を変える」「使う」という一連の流れを体験可能で、再生可能エネルギーの利活用プロセスを実践的に学べる。
技術解説:薄色電解液と表面改質で「描ける太陽電池」を実現
自由なデザイン性と発電性能の両立を可能にしたのは、NSK 独自の 2 つの技術。
• 独自の薄色電解液: 電解液は太陽電池内部で電気を流す役割を担うが、従来は濃色で色素の色を損なう要因となっていた。NSK は電解液の構成材料と配合を最適化し、色素本来の色味を表現可能な薄色電解液を開発した。
• 色素ペンの染色を促進する表面改質技術: 酸化チタン膜はそのままでは色素ペンでの筆記時にインクが定着せず、摩擦で膜がはがれる問題があった。NSK はインクジェット印刷にも適用可能な独自のインク受容層を表面に形成し、色素ペンによる自由なデザイン描画を可能にした。
また、教材の一部には神田工業の液晶ディスプレイ製造技術を活用した部材も採用されている。
市場動向と教育ニーズ:STEAM・SDGs 教材としての広がり
国内ではペロブスカイト太陽電池の実証導入が公共施設などで進むなど、次世代太陽電池への関心が高まっている。一方、教育現場では STEAM 教育や SDGs 教育の教材需要が拡大しており、本キットは再生可能エネルギーへの理解を深める機会を提供するツールとして、小学校から企業研修まで幅広い層での活用が期待される。NSK は本教材を通じて、カーボンニュートラル社会の実現を担う人材育成に貢献する方針だ。
■製品概要
• 製品名: 次世代型エネルギー学習教材『色素増感太陽電池実験キット PEC-TOM03』
• 販売元: ペクセル・テクノロジーズ株式会社
• 販売開始: 2026 年 10 月 1 日(試験販売・1,000 個限定)
• 想定用途: STEAM 教育、SDGs 教育、企業研修など
• 特記事項: 世界初の「自分で描いた絵を発電に利用可能な太陽電池教材」(NSK 調べ、2026 年 8 月時点)