ABBロボティクス、ドゥニア・イノベーションズとメトラー・トレドの技術を活用

・AI自己駆動ラボで材料研究を最大10倍高速化

ABB :2026年9月2日

グリーン水素や工業用CO₂利用など、エネルギー転換の鍵を握る材料研究は、依然として開発のボトルネックとなっている。ベルリンに拠点を置くデータ駆動型材料研究の専門企業ドゥニア・イノベーションズ(Dunia Innovations)は、AIアルゴリズムとABBロボティクス(ABB Robotics)製ロボット、メトラー・トレド(METTLER TOLEDO)製精密計測機器を組み合わせた先進的な「AI自己駆動ラボ」エコシステムを構築。材料開発サイクルを大幅に短縮し、工業スケールへの展開を可能にするイノベーションを加速させている。

モデルと現実のギャップを埋める
ドゥニア・イノベーションズのミッションは、デジタル上のAIモデルと物理的な実験の間にあるギャップを埋めることにある。AIモデルは数十年かけて蓄積された膨大なデータベースにアクセスできる一方、材料科学の現場では構造化され機械可読なデータが依然として不足している。従来の材料研究は、探索可能な化学空間が狭く、組み合わせの拡大はコストと時間がかかる。歴史的データは断片的で記録が不統一なケースが多く、多くの研究室では手作業による記録や実験フローが主流だ。

次世代クローズドループ材料研究
このボトルネックを解消するため、同社はマルチモーダルAIモデルと柔軟なロボティクス、高精度ラボ機器を統合したクローズドループ型「AI自己駆動ラボ」システムを構築した。AIモデルが新たな材料組み合わせを設計し、実験で検証。標準化されたロボットセルが実験準備・ハンドリング工程を高い一貫性で自動化し、得られた測定データをリアルタイムでアルゴリズムにフィードバックすることで、継続的な学習と最適化を実現する。

システムの核となるのは、「Design-Make-Test-Analyze」(設計・作製・試験・解析)クローズドループを支えるモジュラー型ロボットセルだ。ABBロボティクスの協働ロボット「ゴファ」(GoFa)とメトラー・トレドの精密機器を組み合わせ、安全な人とロボットの協働、高い再現性、ワークフロー変更への迅速な適応を両立している。コンパクトでクリーンな設計と、ロボットスタジオ(RobotStudio)ソフトによる直感的なプログラミング・シミュレーションにより、セルの迅速な導入が可能となった。

このロボットセルは、固体分注、液体分注、分散といった材料科学で汎用的な単位操作を高い再現性で自動化する。

ドゥニア・イノベーションズ共同創業者のマーカス・ツェー・キアット・ン(Marcus Tze-Kiat Ng)氏は「結局のところ、シミュレーションの価値は現実との近さに依存する。堅牢なデータセットは実験から生まれる。だからこそ、モデル上のアイデアから実際の測定までの道筋を劇的に短縮することが極めて重要だ」と強調する。

■材料イノベーションを加速

秤量や試料調製、混合といった反復的な手作業は、専門家1人あたり1日最大3時間を要する。ABBのロボットを導入することで、これらの工程を始業前に自動完了でき、専門家は実験設計やデータ解析など人間の専門性が必要な業務に集中できるようになる。

同氏は「最小の実験努力で最大の知見を得るのが目標だ」と述べる。実際の成果として、ある実験ではAIベースの自動化システムにより20サイクルで目標を達成。従来の逐次的アプローチでは200回超の反復が必要だったと推定される。

ABBロボティクスのサービスロボティクス事業ライン・マネージングディレクター、ホセ・マヌエル・コリャドス(Jose-Manuel Collados)氏は「ロボットはAIの物理的な具現化であり、AIの真の価値はデジタル知能が現実世界で確実に行動を駆動できるときに初めて発揮される。ABBロボティクスの柔軟なロボットとドゥニアのAI駆動型材料発見プラットフォームを組み合わせることで、研究者はDesign-Make-Test-Analyzeサイクル全体を自動化・加速でき、AI自己駆動ラボの基盤を築く。これにより、より多くの実験、より良いデータ、より速い学習が可能となり、画期的な材料をラボから工業スケールへ迅速に移行させられる」とコメントしている。

コスト削減効果も大きい。最近のグリーン水素プロジェクトでは、AI主導のアルゴリズムにより、白金やルテニウムといった高価な金属を必要としない電極材料の組み合わせを特定。グリーン・クリーンプロジェクトの設備投資を抑え、経済的に持続可能なエネルギー転換に近づける役割を果たしている。

現在のロボットセルは、包括的でモジュラーなラボアーキテクチャの青写真となる。次のステップとして、同社は標準化された3つのセルを自律移動マニピュレータ(AMM)で物理的に接続し、完全自動化されたエンド・ツー・エンドの材料研究ラインを構築する計画だ。

これは始まりに過ぎない。中期的には、材料研究のデータセンター「ギガラボ」(Gigalab)を構想。サーバークラスタの代わりに最大60台の自動化セルを配置し、30日ごとに市場投入可能な新材料を生み出すことを目指している。

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