シャープと豊田自動織機、疑似量子アニーリングで自動倉庫の出庫計画を高速化

・算出時間を従来比5分の1に

シャープと豊田自動織機は9月4日、疑似量子アニーリング(Simulated Quantum Annealing:SQA)技術を活用し、自動倉庫における最適な出庫計画を高速に算出する基盤技術を共同で確立したと発表した。大規模物流センターを対象とした検証では、従来の計算手法と比較して、最適な出庫計画の算出時間を約5分の1に短縮できることを確認した。両社は同成果について共同で特許を出願中である。

物流業界では、EC市場の拡大などを背景に荷量が増加し、物流センターの大規模化が進んでいる。一方、人手不足を背景に、自動搬送ロボットなど多台数の自動物流機器を活用した省人化・効率化への需要も高まっている。

こうした自動倉庫を効率的に運用するには、設備能力、商品の出荷期限、搬送経路、在庫配置など、多数の条件を考慮した搬送計画が必要となる。しかし、条件が増えるほど組み合わせの数が膨大となり、最適な計画の算出に時間を要することが課題となっていた。

シャープはこれまで、膨大な組み合わせの中から最適解を高速に導き出すSQA技術の開発を進めてきた。特に、自動搬送ロボットの多台数制御や経路最適化への適用を通じ、自動倉庫の運営効率化に関する技術・知見を蓄積している。

一方、豊田自動織機は、自動運転フォークリフト、自動倉庫、高速仕分けシステムなどを組み合わせた物流ソリューションを展開しており、倉庫や工場、配送拠点など幅広い物流現場で自動化・効率化を進めている。

今回の共同検証では、豊田自動織機の物流ソリューションで構成される大規模物流センターを対象とした。取り扱い荷量が1日10万個以上となる同センターで、出庫計画の算出にシャープのSQA技術を適用し、その有効性を検証した。

検証では、設備能力や出荷期限など出庫経路の選択に影響する各種条件を数値化し、それぞれの重要度に応じて重み付けする手法を考案。物流現場における複数の条件を総合的に評価できるようにするとともに、SQA技術による計算で最適な出庫計画を短時間で導き出す計算モデルを構築した。

その結果、最適な出庫計画の算出に要する時間を、豊田自動織機が従来使用していた計算手法に比べて約5分の1に短縮した。同一の出庫条件および計算環境で比較した結果であり、計画策定に伴う作業者の待ち時間削減や搬送作業の整流化などが期待される。

また、今回の成果を踏まえ、出庫計画だけでなく、入庫計画や在庫配置などを含む、さらに大規模かつ複雑な条件下においても、最適解を高速に導出できる可能性を確認した。

SQAは、量子コンピューティング技術を用いて膨大な組み合わせの中から最適解を探索する「量子アニーリング」の計算アルゴリズムを、一般的な汎用コンピュータ上で疑似的に再現する技術である。専用の量子コンピュータに依存せず、既存のコンピュータ環境で組合せ最適化問題への適用を図れる点が特徴となる。

両社は今後、実運用環境での検証を進めながら、本技術の社会実装を目指す。さらに、自動倉庫における出庫計画にとどまらず、入出庫や在庫配置など適用領域の拡大を図り、物流現場のさらなる自動化・効率化につなげる考えである。

なお、本成果は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成により得られたものである。

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