獺祭と三菱重工、宇宙空間での清酒醸造試験に成功、月面醸造に向けた概念実証を達成

獺祭(だっさい)と三菱重工業は4月28日、月面での清酒製造を目指す「獺祭MOONプロジェクト」の第一弾ミッションを完了し、国際宇宙ステーション(ISS)において人類初となる宇宙空間での清酒醸造試験に成功したと発表した。ISS「きぼう」日本実験棟内で月面重力を模擬した環境下においてアルコール発酵過程を確認し、宇宙における発酵技術の概念実証を達成した。

本ミッションでは、両社が共同開発した専用の醸造装置と清酒原材料を、H3ロケットおよび新型補給機HTV-X1でISSへ輸送。JAXAの実験設備を活用し、約2週間にわたり発酵試験を実施した。発酵後のもろみは地球へ帰還し、獺祭の本社蔵で製品化されたことで、一連の工程が完結した。

実験の結果、宇宙環境で生成されたもろみのアルコール度数は12%に到達し、月面重力条件下でも地上と同様の製造プロセスによる清酒醸造が可能であることを確認。一方で、発酵速度は地上に比べて緩慢となる傾向が見られ、重力条件が発酵動態に影響を与えることも示唆された。詳細なメカニズムについては今後の研究課題とする。

装置面では、三菱重工が開発した宇宙用醸造装置が安定稼働を確認。攪拌機構により発酵を促進しつつ、温度やアルコール濃度などを各種センサでモニタリングできる設計とし、宇宙環境下でのプロセス制御技術の有効性を示した。

帰還したもろみ約260gからは清酒116mlが製造され、「獺祭MOON-宇宙醸造-」として完成。このうち100mlはチタン製ボトルに充填し、1億1,000万円(税込)で販売。収益は日本の宇宙開発へ寄付される予定としている。

また、副産物である酒粕については東北大学の協力のもと成分分析を実施し、宇宙環境下における酵母の遺伝的変化や発酵特性の違いを検証する。これにより、将来的な宇宙産業における発酵技術の応用展開を視野に入れる。

同プロジェクトは、将来の月面生活におけるQOL向上を目的に、月面での酒蔵建設と清酒製造を目指す取り組み。今回のミッションはその第一段階として、宇宙での醸造プロセスの成立性を検証したものとなる。

ミッション遂行にあたっては、JAXAの「きぼう」有償利用制度を活用し、有人宇宙システム(JAMSS)、スペースBD(Space BD)、デジタルブラスト(DigitalBlast)などが技術支援を実施。輸送には国産ロケットH3およびHTV-X1を使用し、ISSでの作業も日本人宇宙飛行士が担当するなど、オールジャパン体制で進められた。

さらに、醸造装置開発ではあいち産業科学技術総合センターやインタフェース、工房大倉、原料加工ではサタケなどが参画。物流では日本通運、日本航空(JAL)が協力するなど、多数の国内企業・機関がプロジェクトを支えた。

■プロジェクト概要
プロジェクト名:獺祭MOONプロジェクト
目的:月面での清酒製造技術の確立およびQOL向上
実施場所:ISS「きぼう」日本実験棟(JAXA)
内容:月面重力模擬環境下での清酒発酵試験
試験期間:約2週間(2025年11月~12月)
輸送手段:H3ロケット7号機/HTV-X1補給機
成果:アルコール度数12%の発酵確認、宇宙用醸造装置の有効性検証
今後:発酵メカニズム解析および宇宙産業への応用検討

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