三菱重工グループの RECO、「M-CAS」装置を愛媛県へ納入

・原子力防災分野に新たな可搬型ソリューション

三菱重工グループの再処理機器(RECO、東京都港区)は10月10日、原子力災害時の屋内退避設備として開発した可搬型陽圧テント装置「M-CAS(Movable-Clean Air Shelter)」を、愛媛県より受注したと発表した。本装置は、災害時に避難が困難な要配慮者や孤立地区住民の一時退避空間を迅速に確保することを目的としたもので、設置場所を選ばない高い機動性と、短時間での展張性を兼ね備えている。

■能登半島地震の教訓を反映、迅速展開型の陽圧空間を実現

M-CASの開発背景には、2024年1月の能登半島地震における避難困難事例がある。建物の倒壊や道路寸断により、要配慮者の長距離移動が困難となったことを受け、RECOは「設置場所を選ばず、少人数で展開可能な屋内退避設備」の必要性に着目。従来の建物気密化方式に代わる可搬型陽圧空間として、M-CASを設計した。

本装置は、空気を送るだけで自立するエアテント構造を採用。外部フレームを排除することで、設営作業の簡素化と軽量化を実現しており、大人2名で約5分以内に展張可能。事前工事不要で、体育館・公民館・集会場など多様な施設への設置に対応する。

■モジュール構成で柔軟なレイアウト設計が可能

M-CASは、居室テント(幅6m×奥行8m×高さ2.5m)とユーティリティテント(奥行4m、1~3室構成)を自由に組み合わせることで、小規模から大規模までの陽圧エリアを柔軟に構築できる。居室テントには簡易ベッド10台の設置が可能で、ユーティリティテントはトイレ、支援者休憩、備蓄品置き場など多用途に対応する。

空気浄化ユニットは、テントの自立と内部陽圧化を1台で担い、装置一式は小型トラックまたはSUV車1台で輸送可能。防災倉庫での保管から指定避難所への迅速な搬送・展開を想定した設計となっている。

■実証訓練で高評価、自治体支援の新たな選択肢に

本年8月31日に新潟県柏崎市で実施された原子力防災訓練では、試作機がコミュニティセンター内に設置され、参加住民からは「設営の容易さ」「空間の快適性」に高い評価が寄せられた。RECOは今後も、自治体・事業者との連携を通じて、原子力災害時の屋内退避支援体制の強化に貢献していく方針。

ニュースリリース