・米国内製造投資総額約15億ドル規模へ、電力網強化と雇用創出を加速
日立製作所のエネルギー事業会社である日立エナジーは9月15日(米国・クリスタルスプリングスおよびスイス・チューリッヒ)、米ミシシッピ州ガルマンに5億2,800万米ドル(約818億円、以下155円換算)を投じて新たな変圧器製造工場を建設すると発表した。この投資は同社にとって1拠点への過去最大規模となり、ペンシルベニア州、バージニア州、テネシー州で進めている主要プロジェクトを含めると、米国製造事業への投資総額は約15億米ドル(約2,325億円)に達する。
新工場は既存のクリスタルスプリングス工場から約10キロメートルの場所に建設され、規模は既存工場の約2倍。完成後は現在の生産能力を2倍以上に拡大し、700人超の雇用を創出する計画。建設は2026年後半に開始、変圧器の本格生産は2029年を予定している。生産移管後も既存工場の建屋は倉庫や研修施設などとして継続活用され、地域への長期的なコミットメントを示す。
この投資は、急速に拡大する米国の電力需要に対応するための動きだ。先進製造業の拡大、産業の電化、データセンターの増設など電力多消費型産業の成長に加え、電力網の近代化・拡張が背景にある。日立エナジーは「電力需要は急速に増加しており、それに対応するためには電力網の拡充が不可欠」と強調。100年以上にわたる米国での電力網構築の歴史(ウェスチングハウス・エレクトリック、ABBパワーグリッド事業を経て日立へ)を礎に、米国内サプライチェーンのレジリエンス向上と強靭な電力網構築に貢献するとしている。
米政府・州関係者からも歓迎の声が相次いだ。ダグ・バーガム米国内務長官兼国家エネルギードミナンス評議会議長は「これはまさに、米国のエネルギー優位性を高め、米国とすべての米国民のより強い未来を確かなものにする投資」と評価。クリス・ライト米国エネルギー長官も「より経済的で信頼性が高く、安全な電力供給が必要だ。日立による今回の新たな投資は、その実現に貢献する」と述べた。リー・ゼルディンEPA長官は「トランプ大統領のリーダーシップのもと、米国が投資と事業展開に適した場所であることを改めて示すもの」とし、規制負担の軽減と許認可の迅速化を進める方針を示した。
ミシシッピ州のテート・リーブス知事は「日立エナジーは米国内のどの地域も選べた中で、ミシシッピ州を選んだ。650人を超える新たな雇用が創出され、拡大する需要に対応するための国内製造能力が強化される」と喜びを表明。ロジャー・ウィッカー米上院議員も「数百人の雇用を創出し、電力網を強化するとともに、米国の製造能力の拡大に貢献する」と評価した。
日立側からも強いメッセージが出ている。日立製作所の徳永俊昭執行役社長兼CEOは「米国政府との強固なパートナーシップのもと、ミシシッピ州知事をはじめとする関係者に多大なるご支援をいただいたことに深く感謝する。日立グループは2020年以降、140億ドル以上を米国に投資してきた。今回の投資拡大はこれをさらに加速させ、米国のエネルギーの未来を支える」と述べた。日立エナジーのアンドレアス・シーレンベックCEOは「米国における当社最大規模の投資であり、今後数十年にわたり米国の成長を支える電力インフラの整備に対する取り組みを示すもの」と位置づけている。
先行する米国内投資も相次いでいる。2026年6月にはバージニア州サウスボストンで4億5,700万米ドル(約708億円)を投じた大型電力用変圧器工場の拡張工事に着工(米国最大規模、825人の新規雇用予定)。2025年8月にはテネシー州アラモで1億600万米ドル(約164億円)を投じて変圧器部品の生産能力を拡大(100人以上の雇用創出)。2025年4月にはペンシルベニア州ウェストモアランド郡で7000万米ドル(約109億円)の拡張計画を発表した。これらを合わせると、変圧器製造分野への投資はかつてない規模となり、1,600人以上の雇用創出につながる。
ミシシッピ州開発庁のビル・コーク・エグゼクティブディレクターは「信頼性の高いエネルギーインフラは経済成長を支える最も重要な要素の一つ。日立エナジーによる投資は、米国内における変圧器の生産能力を拡大し、重要な製造サプライチェーンを強化するとともに、ミシシッピ州に長期的な機会をもたらす」と指摘した。
日立エナジーは世界140カ国以上で事業を展開し、約5万6,000人の従業員を擁するグローバルリーダー。スイスに本社を置き、電力・産業・データセンター・交通分野の顧客と長期的なパートナーシップを築いている。今回の投資は、国内製造の強化、熟練技能者の育成、重要インフラの拡充を通じて、ミシシッピ州および米国全体の持続的な経済発展と長期的な投資促進に寄与する。