独キオン(KION)、フィジカルAIで実運用の成果を披露

・GXO仏拠点で自律走行車が稼働、デジタルツインで立ち上げ期間を大幅短縮

キオン(KION):2026年10月21日

独産業車両大手のキオン(KION)は10月21日、エヌビディア(NVIDIA)が開催する「GTCベルリン2026(GTC Berlin 2026)」で、機械が実環境を認識・判断して自律的に動くフィジカルAI(Physical AI)が、サプライチェーンの現場で具体的な成果を上げていることを示した。仏拠点での自律走行車の日常運用や、デジタルツインによる立ち上げ期間の短縮などを紹介している。(フランクフルト・アム・マイン=Frankfurt am Main)

■仏拠点で自律走行車が日常運用に

キオンは、物流大手GXOのエピノワ(Épinoy)物流施設で、自律走行車の車両群を日常業務に組み込むことに成功した。2026年初めに試験導入を行い、現在は複数の自律走行車が作業員や他の機器と並行して効率的に稼働している。現場での導入に要する時間は60%以上短縮されたという。

ロブ・スミス(Rob Smith)CEOは「フィジカルAIは、シミュレーションや検証から実運用まで、サプライチェーン全体のソリューションを統合的に進めるための戦略的な推進力だ。キオンの業界・自動化の知見とエヌビディアの技術を組み合わせ、設計、導入、展開を前進させている。顧客は稼働中の業務への影響を抑えながら、導入の加速と予見性の向上、事業の強靭性強化を図れる」とコメントした。

■デジタルツインで立ち上げを数日に

キオンはフィジカルAIを、AIによる意思決定とフォークリフトなどの産業車両、倉庫ロボットを組み合わせ、シミュレーション環境と実環境の両方で自動化を設計・検証・展開するために活用している。

中核となるのが、AIを活用したデジタルツインだ。高度なシミュレーション技術に、顧客の現場で取得した空間情報を加えて構築する。自律走行車やソフトウエアは、実機を導入する前にこの仮想環境で学習、試験、最適化を行える。検証工程の多くをシミュレーションに移すことで、立ち上げ(コミッショニング)期間は数週間から数日程度に短縮でき、稼働までの時間と投資回収までの時間を早められるとしている。

安全面では、エヌビディアと、生産性向上だけでなく自律機器が作業員と共存して安全に動作することを支援するAIの概念づくりを進めている。基盤には、同社の「ヘイロス(Halos)」ブループリントを採用し、これを自社ソリューションに組み込んでいる。

■パートナーとのエコシステム拡大

キオンは、ハードウエア、ソフトウエア、計算能力を強化するため、技術パートナーとの連携を広げている。エヌビディア、アクセンチュア(Accenture)などと、シミュレーションや計算処理、空間認識、知覚、自律運用の分野で知見を持ち寄り、顧客向けの革新を加速させる考えだ。

アクセンチュアとは2年前から、エヌビディアのAI・シミュレーション技術を使ったサプライチェーン最適化や将来型倉庫の構築で協業を始め、その関係は大きく進展した。直近では、エピノワの先進事例となるプロジェクトで、アクセンチュアがエヌビディアの「オムニバース(Omniverse)」と「メガ(MEGA)」の技術を用いたデジタルツインとシミュレーション機能の構築を支援した。これにより、倉庫業務や自律システムを導入前に仮想環境で試験、最適化、立ち上げできるようになった。

こうした幅広いエコシステムによって、相互運用性のあるソリューションの開発を進め、世界のサプライチェーンへの迅速かつ効率的な展開につなげる。

■ロスマン倉庫でケースピッキング車両を納入

ドラッグストアチェーンのロスマン(ROSSMANN)の地域倉庫には、2026年10月、自律走行型の産業車両「ロボティック・ケース・ピッカー(Robotic Case Picker、RoCaP)」を納入した。AIによるカメラ認識と高機能グリッパーアームで、個々の荷物を識別してピッキングし、安定して積み付ける。既存設備が複雑な既設環境(ブラウンフィールド)や、梱包が破損している場合にも対応できるのが特長だ。

試験導入では速度と把持性能が期待を上回り、顧客は追加の車両を発注した。キオンは、フィジカルAIが人手のかかるオーダーピッキングの自動化やミスの削減、作業員の身体的負担の軽減に役立つ点が実証されたとしている。

■フィジカルAIとは

キオンによると、フィジカルAIは、機械が現実世界を感知・理解し、自律的に行動できるようにする技術だ。産業車両や倉庫ソリューションに人間のような環境理解を持たせることで、デジタルシステムと物理的な運用の隔たりを埋める。ソリューションは倉庫に導入する前に仮想環境でシミュレーションし、完成度を高める。世界の技術リーダーと連携し、人手不足や貿易の不安定化といった課題に直面する顧客の運用を、より強靭で効率的なものにするとしている。

■ キオン(KION)について

キオンは産業車両、統合自動化技術、AIを活用したソリューション、ソフトウエアと関連サービスを提供し、100カ国超の倉庫や工場、配送センターで物流を支える。MDAX上場で、2024年の販売台数ベースで欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域最大の産業車両メーカー。2024年の売上高ベースで中国の海外メーカー首位、国内メーカーを含めても3位。倉庫自動化市場では2024年の売上高で世界首位とする。2025年末時点で、稼働中のキオン製産業車両は200万台超。従業員数は42,000人超、2025年度の売上高は約113億ユーロ。

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