パルフィンガー(PALFINGER):2026年10月28日
パルフィンガーは10月28日、2026年第3四半期までの業績を発表した。1~9月の売上高は16億1,670万ユーロ(約2,862億円、以下177円換算)、EBIT(利払い・税引き前利益)は1億2,070万ユーロ(約214億円)となった。ドイツ経済の低迷、米国での投資停滞、地政学的な不確実性などが事業環境に影響するなか、同社は効率化プログラムの拡大や事業ポートフォリオの見直し、ロシア事業のリスク低減などを進め、収益性と事業の強靱性の強化を図る。
2026年1~9月の連結純損益は6,150万ユーロの赤字となった。ロシア資産の減損処理に加え、テールリフト・旅客用リフト事業の売却計画に関連する評価損が影響した。
アンドレアス・クラウザー最高経営責任者(CEO)は、「地政学的・経済的な状況を変えることはできないが、自らの意思決定は変えられる。第3四半期には事業ポートフォリオを見直し、効率化プログラムを拡大するとともに、市場に近い組織体制への移行を着実に進めた。これにより、パルフィンガーの事業の強靱性を高めている」と述べた。
■地域ごとに異なる市場環境
2026年1~9月の市場環境は地域によって異なる動きを示した。
欧州では市場ごとに需要動向に差があり、北欧・南欧では堅調な需要が続いた一方、EMEA地域最大の販売市場であるドイツでは低調な状況が続いた。ドイツ政府によるインフラ投資促進策のプラス効果は、現時点ではまだ顕在化していない。
北米では商用車市場に回復の兆しが見られたものの、同地域最大の市場である米国では、主要製品分野の需要が依然として低水準にとどまった。顧客の投資に対する慎重姿勢が続き、生産ネットワーク全体の稼働率が低下し、収益性を圧迫した。一方、トラック搭載型クレーン事業は過去最高水準に達し、データセンターへの投資拡大も追い風となった。
中南米事業は、地域全体の市場環境が弱含むなかでも堅調に推移した。特に鉱業分野から好調な兆しが見られた。
マリン事業も引き続き好調に推移した。マリンクレーン、風力発電向けクレーン、クルーズ船関連分野で良好な市場環境が続いたほか、公共部門や政府機関向け事業も堅調だった。
効率化プログラムを拡大、2028年までに5,000万ユーロの削減
同社は2026年上期に発表した効率化プログラムを拡大した。組織構造の簡素化、グローバルな生産・調達ネットワークの最適化、自動化による生産性向上、人工知能(AI)の活用拡大などに取り組む。
2028年までに持続的なコスト削減額5,000万ユーロ(約89億円)の達成を目指す。このうち2,500万ユーロ(約44億円)は2027年から効果が表れる見通し。インフレや事業成長が続くなかでもコスト基盤を安定させ、長期的な収益性を持続的に高めることが狙いだ。
■地域別の責任体制を強化
これらの施策を実行する組織的な枠組みとして、グローバル組織体制「nextGPO(Global PALFINGER Organization)」の再編を進めている。地域ごとの業績責任を強化し、市場に近い場所で迅速な意思決定を可能にする。
地域重視の体制強化は、すでに具体的な成果につながっている。2026年10月には、北米の戦略的顧客から大型受注を獲得した。受注額は3,900万米ドル(約69億円)で、トラック搭載型フォークリフトとサービス契約を含む。納入は今後12カ月間にわたって実施する予定。
■事業ポートフォリオを見直し、ロシア事業のリスクを低減
効率化施策に加え、事業ポートフォリオとリスク構造の見直しも進めている。テールリフト・旅客用リフト事業については、戦略的投資家への売却に向けた法的拘束力のある事前合意書を締結した。革新的なクレーン・リフティングソリューションを中核事業と位置付け、経営資源と投資を集中する方針だ。
売却にはクロージング条件の充足とドイツ連邦カルテル庁の承認が必要となる。正式契約の締結は2026年末から2027年初めを見込んでいる。
一方、ロシア事業については、リスク低減を目的に法的な分離措置を進めている。これに伴う再評価により、約1億3,500万ユーロ(約239億円)の一時的な非現金減損損失を計上する。この損失は連結純損益に影響するものの、EBITおよびキャッシュフローには影響しない。なお、ロシア事業の各部門については引き続き同社が保有する。
■2026年業績見通し、売上高は前年をやや上回る
2026年通期については、市場環境の厳しさが続くものの、売上高は前年をやや上回り、EBITは前年をやや下回ると予想している。純利益については、独立国家共同体(CIS)地域およびテールリフト事業の再評価が影響する見通しだ。
CIS事業およびテールリフト・旅客用リフト事業に関連する評価損はキャッシュフローに影響しないことから、経営陣は監査役会に配当案を提出する方針。
今回開始した施策は、今後数年間にわたり効率性、競争力、収益性の強化に寄与する見込み。また、事業ポートフォリオの重点化とリスクエクスポージャーの低減により、より強靱な事業モデルの構築を目指す。
こうした施策を反映し、2030年の売上高目標を28億ユーロ(約4,956億円)に修正した。一方、長期的な収益性目標は据え置き、EBITマージン12%、ROCE(使用資本利益率)15%を目指す。
■パルフィンガーについて
パルフィンガーは、革新的なクレーン・リフティングソリューションを世界各地で展開する技術・機械エンジニアリング企業。幅広い製品ポートフォリオと地域に根差した事業基盤を強みに、バランスの取れた収益成長を目指している。
約1万2,300人の従業員を擁し、世界30カ所の製造拠点とグローバルな販売・サービスネットワークを通じて、各市場の顧客ニーズに対応している。
パルフィンガーAGは1999年からウィーン証券取引所に上場。2025年の売上高は23億4,000万ユーロ(約4,142億円)だった。