三菱重工業は2026年11月6日、2027年3月期第2四半期(4〜9月)の連結決算(IFRS)を発表した。売上収益は2兆5,232億円と前年同期比19.4%増、事業利益は2,493億円と同45.3%増となり、GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)、原子力、防衛・宇宙が業績を牽引した。通期の業績予想を上方修正するとともに、上限3,000億円の自己株式取得も決議している。
■決算概要
売上収益:2兆5,232億円(前年同期比19.4%増)/ 前年同期は2兆1,137億円
事業利益:2,493億円(同45.3%増)/ 前年同期は1,715億円 / 利益率は9.9%(前年同期は8.1%)
税引前中間利益:2,632億円(同51.5%増)/ 前年同期は1,737億円
中間利益:2,072億円(同78.7%増)/ 前年同期は1,159億円
親会社の所有者に帰属する中間利益:2,032億円(同76.9%増)/ 前年同期は1,149億円
1株当たり中間利益:60円49銭(前年同期は34円21銭)
なお、IFRSを採用しているため「営業利益」「経常利益」の区分はなく、本稿では営業利益に相当する「事業利益」、経常利益に近い「税引前中間利益」で記載している。また、旧三菱ロジスネクストに係る事業は非継続事業に分類され、売上収益・事業利益・税引前中間利益は継続事業ベースの数値となる。
■経営成績等の概況
受注高:3兆6,125億円(前年同期比9.0%増、2,978億円増)/ エナジー、プラント・インフラ、インダストリアル・ソリューションの3セグメントで増加した。GTCC、原子力、製鉄機械が大きく伸びた。受注残高は前年度末から9,880億円増の14兆2,256億円となった。
売上収益:全セグメントで増収となった。GTCC、防衛・宇宙、原子力が大きく伸びた。
事業利益:777億円の増益。増減要因は、売上増減・利益率改善等が1,030億円のプラス、為替影響が220億円のプラス、アセットマネジメントが50億円のプラス。一方、一時費用の増加が400億円のマイナス(前年同期は南アフリカ案件他で300億円、今期は石炭ガス化複合発電プラント「IGCC」で700億円)、賃金アップ等が122億円のマイナスとなった。
中間利益:事業利益の増加に加え、為替差益や金融収益もあり、大幅な増益となった。金融収益は206億円(前年同期は108億円)。非継続事業からの中間利益は53億円の黒字(前年同期は100億円の損失)だった。
EBITDA:3,134億円(前年同期比837億円増)/ EBITDAマージンは12.4%(同1.6ポイント上昇)
キャッシュ・フロー:営業CFは3,945億円(同1,866億円増)/ フリーCFは4,683億円(同3,172億円増)/ ロジスネクストの売却収入などもあり、投資CFは738億円の収入となった。
財務状態:現金及び現金同等物は1兆7,067億円と前年度末から3,718億円増加した。有利子負債は4,827億円(前年同期比1,249億円減)、純有利子負債はマイナス1兆2,239億円(実質ネットキャッシュ)、D/Eレシオは0.15。親会社所有者帰属持分比率は38.7%(前年度末は37.3%)となった。契約負債の増加(前受金の入金先行)が現預金の増加につながっている。
■セグメントごとの経営成績
【エナジー】受注高2兆3,042億円(前年同期比3,230億円増)/ 売上収益1兆1,225億円(2,515億円増)/ 事業利益1,451億円(643億円増、80%増)/ 利益率12.9%(前年同期は9.3%)
GTCCは主に北米・アジアで受注が好調で、売上増に加え採算改善により増益となった。主な事業別の売上収益は、GTCCが5,871億円(前年同期は4,273億円)、スチームパワーが1,759億円(同1,803億円)、航空エンジンが1,713億円(同1,257億円)、原子力が1,521億円(同1,027億円)。スチームパワーはIGCCで損失を計上し減益となった。航空エンジンはMRO(整備事業)の受注・売上が増加した。
【プラント・インフラ】受注高6,895億円(1,988億円増)/ 売上収益4,298億円(138億円増)/ 事業利益414億円(31億円減、7%減)/ 利益率9.6%(前年同期は10.7%)
エンジニアリング、製鉄機械、商船が受注好調だった。利益は前期の高採算工事の反動等により若干の減益となった。
【インダストリアル・ソリューション】受注高3,756億円(501億円増)/ 売上収益3,526億円(385億円増)/ 事業利益147億円(80億円増、119%増)/ 利益率4.2%(前年同期は2.1%)
エンジンのアジア向けが好調で、冷熱は空調エンジニアリング事業等が堅調だった。エンジンの増収効果や円安の影響により増益となった。今期から旧「物流・冷熱・ドライブシステム」を改称し、データセンター&エネルギーマネジメント事業を移管している。
【航空・防衛・宇宙】受注高2,968億円(2,481億円減)/ 売上収益6,334億円(946億円増)/ 事業利益763億円(159億円増、27%増)/ 利益率12.1%(前年同期は11.2%)
防衛・宇宙は前年同期の大型受注の反動で受注が減少したものの、工事の順調な進捗で増収増益となった。民間機は出荷機数の増加により増収増益。民間航空機の出荷機数は、777が14機、777Xが8機、787が43機だった。
【地域別売上】日本1兆273億円(構成比41%、前年同期は9,137億円)/ アジア・パシフィック3,929億円(16%、同3,334億円)/ 米州7,596億円(30%、同5,986億円)/ EMEA(欧州・中東・アフリカ)3,433億円(14%、同2,678億円)
セグメント別では、エナジーの米州が4,640億円(41%)、航空・防衛・宇宙の日本が4,686億円(75%)と、それぞれ特定地域への依存度が高い。
■通期業績予想と今後の見通し
2027年3月期通期の連結業績予想を上方修正した(前回公表は2026年8月4日)。理由は、第2四半期の事業進捗を踏まえたもので、GTCC、原子力、防衛を中心に当初想定を上回って順調に進捗しているためとしている。
売上収益:6兆円(前回5兆4,000億円)/ 前期比20.6%増
事業利益:6,000億円(前回5,400億円)/ 同38.8%増 / 利益率10.0%
税引前利益:6,000億円 / 同26.4%増
親会社の所有者に帰属する当期利益:4,400億円(前回3,800億円)/ 同32.5%増
1株当たり当期利益:130円91銭
受注高:8兆円(前回7兆円)/ ROE:14%(前回12%)/ EBITDA:7,200億円(前回6,600億円)/ フリーCF:8,000億円(前回6,000億円)
なお、経営成績の表で示された「営業利益」「経常利益」に対応する数値は上記のとおり事業利益・税引前利益であり、前回予想の税引前利益・当期利益は修正後との比較のため、前回数値は説明資料で確認できる項目のみ併記している。前提為替レートは1ドル150円、1ユーロ180円。
セグメント別の通期見通しは、エナジーが受注4兆4,000億円・売上2兆6,500億円・事業利益3,800億円(前回3,400億円)、プラント・インフラが受注1兆1,000億円・売上1兆円・事業利益900億円(据え置き)、インダストリアル・ソリューションが受注7,500億円・売上7,500億円・事業利益300億円(修正なし)、航空・防衛・宇宙が受注1兆8,000億円・売上1兆6,000億円・事業利益1,800億円(前回1,700億円)となっている。
事業利益の増減要因(通期、前期比1,679億円増)は、売上増減・利益率改善等が1,940億円、為替影響が250億円、アセットマネジメントが40億円のプラス。一時費用が300億円のマイナス(IGCCで700億円、リスクバッファーで200億円を織り込み)、賃金アップ等が252億円のマイナスとなる。
業績見通しには中東情勢の影響を含めていない。同社は足元の受注やサプライチェーンへの直接的な影響は限定的としつつ、情勢は流動的で引き続き注視するとしている。
配当:中間配当は14円(前期は12円)、期末配当は15円の予想で年間29円(前期は25円)。配当予想の修正はない。
自己株式取得:2026年11月6日の取締役会で、資本効率の向上を目的に決議した。取得株数は1億2,000万株(発行済株式総数に対し3.6%)、取得価額は3,000億円が上限。取得期間は2026年11月9日〜2027年11月8日、東京証券取引所での市場買付により行う。取得した株式は全株消却する。
■中長期の計画・ビジョン
同社は、事業利益について、24事業計画(2024〜2026年度)で公表した4,500億円以上を大きく上回る6,000億円を今期見込んでおり、「事業利益7,000億円を超えて成長を続ける基盤を確認した」としている。
キャッシュ・アロケーション(24事業計画期間のFY24〜FY26)は、キャッシュ・イン2兆9,000億円(伸長事業・成長領域1兆7,500億円、競争力強化6,300億円、物流機器1,200億円、資産売却等4,000億円)に対し、キャッシュ・アウトは1兆6,000億円と株主還元5,800億円(自己株式取得3,000億円を含む)で、現預金は1兆3,000億円増加する見通し。超過分は高水準な受注残の履行と、2027年度以降に稼ぐキャッシュと合わせた成長投資に充てる方針だ。受注残に伴う前受金残高は2.6兆円に上る。
主な成長投資は、GTCCの高温部品生産能力など5,000億円規模、防衛の装備品生産能力2,500億円、原子力の大型加工設備更新1,000億円、商船の高密度艤装船・船体ブロック建造能力1,000億円、データセンター向け発電用エンジンの生産能力1,000億円。このほか、領域拡大、次世代製品(GTCC、無人機など)やレジリエンス関連技術のR&D、M&A・出資も進める。
全社変革プログラム「ITO(Innovative Total Optimization)」では、生産プロセスの高度化(GTCC新設生産能力の倍増など)、データセンター事業の北米展開加速(関連機器の受注、ターボ冷凍機の北米認証取得)、Preferred Networks(PFN)との資本業務提携などを進めている。事業ポートフォリオの最適化では、三菱ロジスネクストの事業譲渡が2026年5月1日に完了し、ボンバルディア向けビジネスジェットTier1事業の譲渡も合意した。
中長期の方針としては、2050年に向けて国際政治の不安定化、現実的なカーボンニュートラルの進展、技術革新などの変化が続くと見て、「レジリエンス」を軸に社会インフラ・産業機械で価値を提供する。事業機会は、エネルギーの安定供給、安全・安心の実現、経済と環境の両立、社会インフラニーズの多様化、モノづくり産業基盤の再構築、BCM(事業継続管理)の強化の6つを掲げている。