・29年度上期稼働
TOTO(北九州市小倉北区)は10月30日、セラミック事業の主力製品である静電チャックとAD(エアロゾルデポジション)部材の次世代品を量産するため、TOTOファインセラミックス豊前工場(福岡県豊前市)の敷地内に新生産施設を建設すると発表した。2029年度上期の生産開始を予定し、投資額は約600億円。AI半導体やデータセンター向けなど、先端半導体製造装置のキーパーツ需要の拡大を見据えた先行投資となる。
■セラミック事業で最大規模の建屋
新設する生産棟は鉄骨造3階建てで、建築面積は約1.2万㎡、延べ床面積は約3.6万㎡。同社のセラミック事業の生産施設として過去最大の建屋になる。
あわせてAD部材については、TOTOサニテクノ本社・中津工場(大分県中津市)とTOTOファインセラミックス本社・中津工場(同)にも次世代品量産のための設備投資を実施する。投資額は約110億円で、2028年度内の生産開始を計画している。
■成長投資の総額は約330億円に
今回のAD部材向け投資(約110億円)は、4月30日に発表した成長投資「約300億円」の一部にあたる。既報の豊前工場の焼成棟新設、7月31日に発表したTOTO茅ケ崎工場(神奈川県茅ヶ崎市)の研究開発棟新設と合わせ、すべての投資計画が実行段階に入った。この結果、総額は約300億円から約330億円となった。一方、豊前工場の生産施設投資(約600億円)は、4月のリリースで示した「さらなる生産増強に向けた大規模な投資計画」に該当する。
TOTOは、現行品でも増産投資を継続して需要拡大に応えてきたと説明。次世代品でも将来の必要生産量を見越して先手を打つことで、半導体製造装置のキーパーツとして半導体の高性能化に貢献するとしている。生産・研究開発の両面で投資を続け、顧客や市場のニーズに対応する方針だ。
■静電チャック:プラズマ耐久性が強み
静電チャックは、主に半導体製造装置内でシリコンウエハを固定する部品。TOTO品の強みは、エッチング工程の装置内でプラズマに対して高い耐久性を発揮する点にある。セラミック部には耐プラズマ性に優れた高品位素材を使い、高純度で緻密な焼成体に仕上げることで、長時間のプラズマ照射による腐食に耐える。
メモリー半導体では大容量化に向け、メモリセルを垂直に積み上げる多層化が進む。深い層まで貫通させるため、エッチング時のプラズマ出力もハイパワー化しており、静電チャックの耐久性は重要性を増している。TOTOは耐久性に加え、多くの機能性と高い品質が求められる先端半導体向けに、次世代品の開発と量産化を計画的に進める。
■AD部材:「焼かないセラミックス」で世界初の実用化
AD部材は、AD法で製膜した部材を指す。AD法は1990年代前半に旧工業技術院機械技術研究所(現・産業技術総合研究所)が見いだした技術で、セラミック微粒子をガスに混ぜ、音速に近い速度で基材に衝突させて緻密なセラミック膜を形成する。TOTOは同研究所との共同研究を経て製品化し、エッチング工程の装置に採用されたことで、世界で初めてAD法の実用化・量産化を実現した。この功績で、2015年の第6回ものづくり日本大賞の内閣総理大臣賞を受賞している。
採用の契機は2010年代前半にさかのぼる。当時、エッチング装置メーカーでは、プラズマで装置内部が傷み、発生したパーティクル(チリ)がウエハに付着して不良を招く課題があった。TOTOは装置の天井部材に耐プラズマ性のセラミック膜をAD法で製膜。パーティクルがウエハ上に落下しやすい天井部に耐プラズマ性を持たせ、生産効率を大幅に改善した。
通常のセラミックスは焼成の過程で気泡が生じ、内部に微細な孔ができる。この孔から生じる隙間や亀裂がプラズマ浸食の起点になる。AD部材は焼成工程がなく、常温で微粒子の衝突により製膜するため、浸食の起点となる孔が存在せず、性質面・構造面の両方でプラズマに強い膜になるという。
AD部材が搭載されるエッチング装置ではロジック半導体が製造され、その進化は回路線幅の微細化と表裏一体だ。ナノメートル単位での回路形成が進み、より微細なパーティクルの抑制が求められる中、TOTOは次なる進化を遂げた次世代品の開発・量産を進める。
■住設に続く第二の柱へ
TOTOは、水まわりで培った知見を土台に、技術開発を強みとするオンリーワン製品を半導体産業に供給している。住設事業に加え、セラミック事業でも必要とされる製品をつくり続け、豊かで快適な未来社会と経済成長の実現をめざす考え。
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