・自律化・電動化技術が受注をけん引
エピロック(Epiroc):2025年10月29日
スウェーデンのエピロック(Epiroc)は10月29日、2025年12月期第3四半期(7〜9月)の決算を発表した。鉱山向け需要が引き続き高水準で推移し、設備や穿孔工具、サービス分野が好調だった。一方で為替影響や関税負担が利益率を圧迫した。
同社の受注高は前年同期比2%減の151億4,200万クローナ(SEK)、為替のマイナス影響を除く有機的成長率は7%だった。売上高は3%減の152億4,200万クローナで、有機的には5%増。営業利益は28億2,000万クローナ(前年同期32億7,700万クローナ)、営業利益率は18.4%(同20.9%)だった。調整後の営業利益は28億9,600万クローナで、調整後営業利益率は19.0%(同19.7%)。
営業キャッシュフローは38%増の24億7,600万クローナと大幅に改善し、ネット有利子負債/EBITDA比率は0.73倍(同0.97倍)に低下した。
■鉱山機械の受注堅調、自律化・電動化技術が浸透
CEOのヘレナ・ヘドブロム(Helena Hedblom )氏は「鉱山分野での顧客活動が活発で、設備および穿孔工具の受注が堅調に推移した」と述べた。鉱山探査分野の需要も高く、大型機械の受注は6億クローナ(前年14億クローナ)ながら、自律化・電動化技術を搭載した最新モデルの採用が増加。これにより、生産性向上、安全性強化、エネルギー消費削減、トータルコスト低減が進んでいるという。
建設分野では長期にわたったアタッチメント需要の低迷が続いていたが、販売代理店の在庫調整が一巡しつつあるとした。
短期的には「鉱山需要は引き続き高水準で推移する見通しだが、建設分野は低位で安定する」としている。
■部門別の採算動向
調整後営業利益率(EBIT)は19.0%(前年19.7%)に低下。事業再編や効率化に伴う一時費用(▲9,400万クローナ)が発生した。
事業別では、機器・サービス部門の利益率が21.9%(同22.9%)と製品構成およびニッケル関連の需要減で低下。一方、ツール&アタッチメント部門は11.6%(同11.3%)に改善した。同社は「特にツール&アタッチメント分野での改善策が奏功しつつある」として、収益性の回復に自信を示した。
■自動運転・安全分野の展開
同社は安全性を最優先課題とし、衝突回避システム(CAS)を既存車両に装着することで安全性を高める取り組みを推進。第3四半期にはインド最大の亜鉛生産企業ヒンドゥスタン・ジンク社(Hindustan Zinc Limited)と提携し、同社の全鉱山車両にCASを導入する契約を締結した。このシステムはメーカーを問わず適用できるのが特長である。
また、豪ロイヒル鉱山(Hancock Iron OreのRoy Hill鉱山)では、エピロックの自律運行ソリューション「LinkOA」により、全78台の鉱山トラック(他社製)が完全自動運転化を達成。これにより3億クローナの売上を計上した。
■代表機「ピット・バイパー」25周年、自律穿孔で9,000万メートル達成
エピロックの象徴的な穿孔リグ「ピット・バイパー(Pit Viper)」は本年、発売25周年を迎えた。10年以上にわたり自律穿孔を実現しており、これまでに9,000万メートル以上を自動で掘削。安全性・エネルギー効率・環境性能を兼ね備え、持続可能で生産性の高い鉱山操業の新たな基準を築いた。
■今後の見通し
エピロックは2025年9月に事業区分を再編し、2つのビジネスエリア体制で運営を開始した。今後は金鉱山・銅鉱山を中心とする需要拡大を背景に、探鉱分野の案件増加が見込まれる。
ヘドブロムCEOは「安全で生産性の高い操業を支援することが最優先課題。自動化・デジタル化・電動化を組み合わせた現在の製品群は、これまでで最も強力なポートフォリオだ」と述べ、「顧客とともに変革を加速させる」と締めくくった。
■エピロック(Epiroc)について
エピロックは鉱山・インフラ分野の生産性向上を支援するスウェーデンのグローバル企業で、自動化・電動化・デジタル化技術を軸に持続可能な社会への移行を加速している。穿孔リグ、岩盤掘削・建設機械、工具、地下および地表向け設備を開発・製造し、世界150カ国で約1万9,000人が従事。2024年の売上高は約640億クローナ(1兆240億円、16円換算)。本社はストックホルムにある。
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