●年頭所感(2025年) 一般財団法人 機械振興協会 会長 釡 和明

 新しい年の幕開けに際し、一言ご挨拶申し上げます。

 ちょうど1年前の元日の夕刻、能登半島地震が発生し、多くの方々が被災されました。加えて、同地域は9月に豪雨災害にも見舞われ、未だに復旧・復興はその途上にあります。亡くなられた方々に哀悼の意を捧げるとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。さらに、昨年は秋田県・山形県でも7月に記録的な豪雨が発生するなど、地震災害に加え、地球温暖化に伴う豪雨災害が常態化する傾向にあります。そのため、こうした自然災害のリスクに対して、機械産業ではこれまで以上にBCP(事業継続計画)やBCM(事業継続経営)を徹底することが問われています。
 世界情勢に目を向けるならば、ロシア・ウクライナ戦争の長期化に加え、イスラエル・ガザ地区の紛争など不安定要素は増すばかりです。こうした政情不安の中で、今年は米国で再びトランプ政権がスタートします。今後、米国の政策動向は、日本の機械産業の交易環境にも少なからず影響を及ぼすことになるでしょう。
 では、こうした世界的な不確実性の高まりに対して、私たちは、どのような心構えで臨んだらよいのでしょうか。実は、そのヒントは昨年7月3日に発行された新紙幣1万円札に描かれている渋沢栄一の経済哲学に見出すことができます。彼は「日本の資本主義の父」と称される人物ですが、彼の有名な著書『論語と算盤』にそのヒントが隠されています。この書の中で彼が主張したのは、「道義を伴った利益の追求」です。換言すると「公益を大事にすること」でした。世界経済が保護主義、自国第一主義に傾く兆しが懸念される今だからこそ、私たちは、この公益を重視する日本型資本主義の精神の持つ重要性を再認識すべきではないでしょうか。
 一昨年、訪日外国人旅行者数は2,500万人を超え、昨年も増加傾向は続いています。この背景には、円安だけでなく、日本社会が内包している魅力が海外の人々を引き寄せる要因になっているものと思われます。それは「道義を伴った利益の追求」を常とする日本人一人ひとりの行動が、日本を訪れる海外の人々にとっては、新鮮に、また、爽やかに映るからではないでしょうか。
 機械振興協会は、まさにこの「公益性」を重視し、技術研究所、経済研究所、事務局の3事業所が一丸となって、巳年のたとえの如く、日本、そして世界の機械産業が様々な分野で「身を結ぶ年」になれるように、わが国の機械産業のますますの発展とその振興に寄与するとの使命を果たし、先進的研究とその成果の普及に取り組んで参ります。

 本年も皆様からのご指導、ご鞭撻の程、何卒、宜しくお願い申し上げます。

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