日本ガイシ、約50億円投じて絶縁放熱回路基板の生産能力を約2.5倍に増強

 日本ガイシ(名古屋市瑞穂区)は3月7日、パワー半導体モジュール向けの絶縁放熱回路基板の生産能力を増強することを決定したと発表した。2026年度までに月間生産能力を現在の約2.5倍に引き上げる。供給能力の向上により、今後市場拡大が見込まれる車載用途などの需要を着実に取り込み、2030年度に売上高200億円を目指す。

 日本ガイシは現在、窒化ケイ素製のセラミック基板を用いた絶縁放熱回路基板の製造について、接合などの前工程を製造子会社NGKセラミックデバイス(愛知県小牧市)で、エッチング・めっきなどの後工程を製造子会社NGKエレクトロデバイスの山口工場(山口県美祢市)とNGKエレクトロデバイスマレーシア(マレーシア・ペナン州)で行っている。今回の投資では、NGKセラミックデバイスとNGKエレクトロデバイスマレーシアの設備を増強し、日本ガイシ全体での月間生産能力を現在の約10万枚から2026年度に約25万枚に引き上げる。投資額は約50億円を予定している。

 また将来のさらなる需要増に備え、主要市場の欧州への供給体制を強化するため、欧州での生産拠点も検討している。

 絶縁放熱回路基板は、モーターの駆動制御や発電機などの電力変換を行うパワー半導体搭載部品(パワー半導体モジュール)に使われる製品。パワー半導体が駆動する際に発生する熱を逃がすことで、安定駆動させる役割を担っている。窒化ケイ素製の絶縁放熱回路基板は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)のモーター制御用のインバーターなどに使われており、大電力による高温環境下でも安定した動作が要求される炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体への採用が増えている。日本ガイシの窒化ケイ素製絶縁放熱回路基板は、独自の接合技術により高い信頼性と優れた放熱特性を実現しており、パワー半導体の性能を最大限に引き出す製品として、2019年から欧州・日本のパワー半導体メーカー数社で採用されている。世界的なEV化の進展に伴い、車載用途向けに需要が拡大しており、中長期的にさらなる市場拡大が見込まれる。

 NGKグループは、2050年の未来を見据えた中長期ビジョン「NGKグループビジョン Road to 2050」で、カーボンニュートラル(CN)とデジタル社会(Digital Society:DS)分野への事業構成転換を掲げており、通過点である2030年に新事業で売上高1,000億円以上を目指す「New Value 1000」に取り組んでいる。絶縁放熱回路基板は、パワー半導体モジュール向け部品としてEV・HEVの車載用途を通じたCNへの寄与が期待される製品。日本ガイシは今後もCN・DS分野に注力し、独自のセラミック技術を通じて社会課題の解決に貢献していく。

■窒化ケイ素製絶縁放熱回路基板:窒化ケイ素製のセラミック基板と2枚の銅板で構成された基板。独自の高度な接合技術により、セラミック基板と銅板間の接合層がわずか数ミクロン以下の極薄構造となっている。これにより、接合層の熱抵抗の影響や内部のひずみを大きく低減させており、高い信頼性と優れた放熱特性を実現している。

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