・欧州初の再生可能リチウム生産施設向け、電気設備を一括受注
ABB:2025年12月15日
ABBは、ドイツで進められるフォルカン・エナジー(Vulcan Energy)の再生可能リチウム開発プロジェクト「ライオンハート(Lionheart)」のフェーズ1において、主電気工事請負業者に選定されたと発表した。ABBは本プロジェクト向けに、包括的な電気インフラを提供する。
ライオンハート・プロジェクトは、再生可能エネルギーによる発電とリチウムの抽出・精製を組み合わせ、欧州電気自動車(EV)市場向けに電池品質の水酸化リチウム一水和物(LHM:Lithium Hydroxide Monohydrate)を生産する計画だ。年間生産能力は2万4,000トンで、約50万台分のEV用電池に相当する。また、副次的に発電量275GWh、熱供給量560GWhを見込む。
ABBは、総額4,600万ユーロに上る3件の契約に基づき、電気設備の設計、エンジニアリング、製造、試験、納入までを一括して担当する。対象は、独ライン川上流域に位置するランドアウ(Landau)のリチウム抽出プラント、フランクフルトのインダストリーパーク・ヘキスト(Industriepark Höchst)に設置される中央リチウムプラント、ならびに周辺の坑井設備である。
供給範囲には、高圧・中圧・低圧の配電設備、変圧器、ドライブ、無停電電源装置(UPS)、保護機器などが含まれる。110kVの送電網から各プロセス設備、建屋単位の運用に至るまで、安定的かつ効率的な電力供給を実現する。
今回の受注は、2024年4月に両社が締結した覚書(MOU)を基盤とするもの。同MOUは、設計最適化や調達効率向上、コスト競争力の強化を通じて、プロジェクト遂行力を高めることを目的としている。ABBの電化技術と、フォルカン・エナジーの再生可能リチウム製造プロセスを組み合わせることで、欧州初の完全統合型再生可能リチウム事業の確立を目指す。
ABBのプロセス産業事業部で鉱業・マテリアル分野を統括するビヨルン・ヨンソン(Björn Jonsson)グローバル・ビジネスライン・マネージャーは、「ライオンハート・プロジェクトは、クリーンエネルギーと先進的な電化技術がどのように連携できるかを示すモデルケースだ。欧州の電池サプライチェーン強化に貢献し、クリーンモビリティへの移行が加速する重要な局面でEV需要に応えていく」とコメントした。
一方、フォルカン・エナジーのマネージング・ディレクター兼CEOであるクリス・モレノ(Cris Moreno)氏は、「ABBの技術力とシステムは、当社が効率的に事業を拡大する上での確かな基盤となる。両社で、産業規模のリチウム生産モデルを確立し、電池サプライチェーンの脱炭素化を大規模に進めていきたい」と述べた。
なお、今回の契約締結は資金調達の前提条件となっており、フォルカン・エナジーは追加のプロジェクト契約および金融契約と併せて、2025年第4四半期の最終化を目指す。
ABBは、電化およびオートメーション分野を中核とするグローバル技術企業で、世界約11万人の従業員を擁する。140年以上の歴史を持ち、株式はスイス証券取引所(SIX Swiss Exchange)およびナスダック・ストックホルム(Nasdaq Stockholm)に上場している。プロセスオートメーション事業では、エネルギー、水、資源供給から製造・物流に至るまで、産業の効率化・高度化を支援している。
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