日立建機の先崎社長が年末会見、新社名「LANDCROS」への移行、鉱山機械の大型受注や中南米事業強化を説明

日立建機は12月16日、年末恒例のメディア合同ミーティング(対面・オンライン併催)を開き、先崎正文社長が今後の経営方針や事業動向について説明した。会見では①新社名「ランドクロス(LANDCROS)」への変更、②アフリカにおける鉱山機械の大型受注、③中南米事業基盤の強化――の3点を柱に説明した。

このうちブランド変更について先崎社長は、2027年4月1日付で商号を「ランドクロス(LANDCROS)株式会社」に変更し、コーポレートブランドも同名称に統一する方針を改めて示した。75年にわたり培ってきた技術と信頼を基盤に、独立・自主経営を行う企業として、ソリューションプロバイダーへの進化を図り、次の100年を見据えた成長を目指すとしている。新ブランドの下では、オープンなパートナーシップを通じて顧客や販売代理店を含むステークホルダーとの連携を強化し、社会からの要請に迅速かつ的確に応えることで、信頼性と企業価値のさらなる向上を図る考えだ。

2点目として、鉱山機械分野での大型受注について説明した。日立建機は11月、ザンビアのカンサンシ銅鉱山を運営するファースト・クォンタム社から、積載量約221トンの超大型ダンプトラック「EH4000AC-3」(画像)42台を受注した。ファースト・クォンタム社からは2022年にも同機種40台を受注しており、今回は鉱山拡張による増産対応が目的という。今回の受注により、同鉱山で稼働する同社製ダンプトラックは約140台となる。同社とは、フル電動ダンプトラックや鉱山向けソリューション「LANDCROSコネクトインサイト」の実証実験でも協力関係にあり、今後も持続可能な鉱山運営への貢献を続けていく方針だ。

3点目は中南米事業の強化。4月から地域統括会社「日立建機ラテンアメリカ」が稼働を開始し、9月にはチリ・サンティアゴで初の販売代理店会議を開催、50人以上が参加した。中南米事業では2030年度に売上高1,000億円超を目指し、2030年度までの累計投資額は約290億円を見込む。チリでの部品倉庫設置に加え、アルゼンチンとメキシコに現地事務所を開設する計画も進める。

先崎社長は「今期は現行中期経営計画の最終年度にあたる。目標達成に向けた施策を着実に進めるとともに、次期中期経営計画の策定に向けた議論も全社で活発に行っている」と述べ、今後の成長に引き続き注目を呼び掛けた。

■質疑応答要旨は概ね以下のとおり。

会見ではこのほか、2025年度の業績総括と次期中期経営計画に向けた考え方についても説明した。先崎社長は、足元の需要環境について「当初の想定よりもやや弱含みで推移している」としながらも、過去3年間でキャッシュ創出力と資本効率を重視した経営管理が定着してきたと強調した。

具体的には、在庫コントロールの高度化により、市況変動局面でも在庫を過度に積み上げることなく安定した営業キャッシュフローを確保できる体制が整ってきたと説明。営業キャッシュフローマージンはおおむね13%水準を見込むとし、投下資本利益率(ROIC)についても各事業部門の評価指標に組み込むなど、資本効率を意識した経営を進めているとした。

事業構造面では、新車販売に加え、部品・サービス、再生事業、レンタルなどを含むバリューチェーン事業の拡大が着実に進展していると説明した。売上高に占めるバリューチェーン事業の比率は約47%まで上昇しており、先崎社長は「中長期的には50%超を安定的に確保することで、景気変動に左右されにくい収益基盤を構築していく」と述べた。

次期中期経営計画については、詳細は今後詰めるとしつつも、マイニング事業への注力を一段と強める方針を示した。現在、同社のマイニング関連売上高は約2,900億円、中南米の売上は約440億円(いずれも24年度)だが、競合大手の規模から判断すると成長余地は大きいと分析。中南米を中心とした再参入・拡販や、部品・サービス体制の強化、超大型ダンプトラックを含む製品競争力の向上を通じて、事業規模の拡大を図る考えだ。

また、電動化への対応については、電動建機の普及には機体性能だけでなく、現場での電力供給インフラ整備が不可欠との認識を示した。先崎社長は「電動建機は充電時の電力需要が大きく、メーカー単独では解決できない課題も多い。社会全体でのインフラ整備と歩調を合わせながら普及を進めていく必要がある」と述べ、当面はパワーバンクなどの活用で需給ギャップを補完していく考えを示した。

欧州では、電動化や次世代技術の開発を加速するため、ドイツに新たな開発会社を設立した点にも言及した。従来、販売代理店との協業で進めてきた開発機能をメーカー主導に移行し、電動化、水素関連技術、デジタル分野などでの研究開発を強化する。欧州の大学や研究機関との連携も視野に入れ、欧州発の技術をグローバル展開につなげる狙いだ。

このほか、AI活用についても説明があった。現在、在庫管理や部品管理、データ分析などでAIを活用しており、今後は社内業務の効率化にとどまらず、顧客向けサービスへの応用も進める方針。新たにCTOを迎え、全社横断でAI・デジタル活用を推進していくとした。

地域別の市況見通しについては、米国では関税の影響が徐々に顕在化しており、先行きは不透明としつつも、レンタル需要が一定の下支えになるとの見方を示した。アジアは総じて堅調で、インドは中長期的な成長期待が高い一方、足元では慎重な見方も必要とした。中国市場については、マイニング分野を除き、成長市場としての魅力は限定的との認識を示した。

先崎社長は最後に、「今後も研究開発、バリューチェーン強化、人材投資を優先しつつ、安定的な配当を通じた株主還元も継続する。『LANDCROS』ブランドの下で、持続的な成長と企業価値向上を実現していきたい」と語り、理解と支援を求めた。

以上