ダンフォス(Danfoss):2025年10月27日
水処理施設や産業用途における非効率なエネルギー利用が地球規模で深刻化しているとして、デンマークのダンフォス(Danfoss)は10月27日、世界的に水分野のエネルギーフットプリントへの注目を高めるよう呼びかけた。水関連分野の電力消費は世界全体の約4%に達しており、その多くが非効率的に使用されているという。同社は、エネルギー浪費の是正が気候変動対策と水資源確保の双方に寄与すると強調している。
■水分野のエネルギー消費、2040年までに倍増見通し
ダンフォスによると、水の生産・配水・消費における非効率が、世界の淡水資源をさらに逼迫させている。現在の傾向が続けば、水分野のエネルギー消費は2040年までに2倍以上に増加し、一方でエネルギー産業自体の水需要も約60%増える見込みだ。
ダンフォス社長兼CEOのキム・フォウシング(Kim Fausing)氏は「水とエネルギーは密接に結びついたシステムであり、もはや別々に扱う余裕はない。水処理に使われるエネルギーの管理は非効率でコストも高い。今こそ変革が必要だ」と述べている。
■半導体やデータセンターも深刻なリスクに直面
古い設備や技術のままでは、多くの産業が持続不可能な速度で水を消費している。たとえばデータセンターは年間約5,600億リットルの水を使用しており、国際エネルギー機関(IEA)は2030年までにその量が1兆2,000億リットルに倍増すると予測している。これはEU全体の2022年の淡水取水量の約6倍に相当する。
また半導体産業でも同様のリスクがあり、2030~2040年には世界の製造拠点の約4割が「高いまたは極度の水ストレス地域」に立地すると見込まれている。
1900年以降、世界の淡水使用量は6倍に増加しており、2030年までに需要が供給を40%上回る恐れがある。現在でも世界人口の半数近い36億人が、少なくとも年1カ月は十分な水を利用できない状況にあるという。
■既存技術で解決可能―VSDや液冷など具体策を提示
ダンフォスが同日に発表した新レポートでは、水・エネルギーの浪費を抑えるための多くの技術がすでに実用段階にあるとし、政策的支援と投資の拡大を求めている。
• 海水淡水化:既存の全プラントを最新技術水準(2.0kWh/㎥)に改修すれば、年間約345億ユーロのコスト削減と1億1,100万トンのCO₂排出削減が可能。
• 下水処理:モーターやポンプを可変速制御できるVSD(Variable Speed Drive)を導入すれば、運転を需要に応じて最適化でき、インド・チェンナイの処理場ではエネルギー使用量を約22%削減した実績がある。
• データセンター:閉ループ式の液冷システムは、従来の蒸発冷却方式に比べて水消費が大幅に少なく、チップ直接冷却方式では空冷方式より15%以上高いエネルギー効率を実現。
■「水・エネルギー連関」への無関心が経済リスクに
同社は、水とエネルギーの相互依存関係(ウォーターエネルギーネクサス:Water-Energy Nexus)を軽視すれば、各国経済にも深刻な影響が及ぶと警告している。水不足がこのまま進行すれば、2050年までに先進国のGDPが最大8%減少する可能性があるという。
米国では2019年、老朽化した配水管から漏出した処理水の損失額が76億ドルに達し、2039年には167億ドルに膨らむと見込まれている。ダンフォスは、センサー、ポンプ、VSDなど既存技術の活用で損失水を減らし、水供給ネットワークの効率を高められると指摘する。
■政策支援と規制強化が不可欠
フォウシング(Fausing)氏は「漏水検知、スマートメーター、圧力管理、エネルギー最適化といった技術を普及させるためには、野心的な規制、水効率目標、投資を促すインセンティブが必要だ」と述べ、「政府はエネルギー監査に水効率を組み込み、産業水再利用の国家目標を設定すべきだ。節水の一滴一滴が、エネルギーの節約につながる」と訴えた。
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