・船舶業界初、非熟練者でも締め付け状態を定量評価可能に
ヤンマーホールディングスは10月15日、傘下のヤンマーパワーソリューションが開発した舶用エンジン点検ツール「Tightening Checker(タイトニングチェッカー)」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞したと発表した。船舶業界初となる連接棒ボルトの締め付け状態を定量的に確認できる検査機器で、ヒューマンエラーによる海難事故の未然防止に貢献する画期的な製品として評価された。
背景:熟練技能の定量化が課題海難事故の多くはヒューマンエラーに起因するとされ、中でもエンジン関連事故では連接棒ボルトの締め付け不良が一因となるケースが少なくない。従来、締め付け状態の確認にはハンマー打音検査が用いられてきたが、熟練の技能が必要な上、検査結果を定量化して記録に残すことができないという課題があった。
製品特長:橋梁検査技術を応用
タイトニングチェッカーは、航空機や橋梁などの検査現場で用いられてきた電気抵抗値測定技術を舶用エンジンに適用したもの。金属同士の密着度を電気抵抗値で評価する手法を、約1年かけて締め付け具合との相関関係を検証し、実用化に成功した。
製品設計では現場作業性を重視。
狭いエンジン内部でも片手で操作できる測定部の形状、連接棒の合わせ面を特定するガイド機構、測定値を一目で確認できるアプリ連携など、非熟練者でも簡単に扱えるシンプルな設計を実現している。測定データは定量化されて記録に残せるため、保全作業の品質管理と記録の標準化が可能になる。
■審査員の評価
グッドデザイン賞の審査では、「熟練者の技能を定量化した地道な努力」と「非熟練者でも扱えるツールとして実用化した点」が高く評価された。審査員は「材料工学の理論を製品として結実させた優れたデザイン」とコメントしている。
■製品概要
型式名はTC01で、販売価格は89万円(税別)。販売はヤンマーエンジニアリングが担当する。同社は1912年創業、1933年に世界初のディーゼルエンジン小型実用化に成功した産業機械メーカーで、アグリ、建機、マリン、エネルギーシステムなど幅広い事業をグローバルに展開している。
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