三菱重工、中国製鉄大手から新開発ガスタービン初受注

・江蘇沙鋼集団向け10万kW級GTCC、BTG代替市場に本格参入

三菱重工業は9月30日、中国大手製鉄グループ江蘇沙鋼集団の傘下企業、江蘇利淮鋼鉄(淮鋼)から、新開発の高炉ガス焚き中小型M100S形ガスタービンを核とした10万kW級ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電設備を受注したと発表した。本件は同ガスタービンの初号機受注となり、中国製鉄業界における新たな発電ソリューションの提供開始を意味する画期的な案件。

■製鉄業界の脱炭素化要求に応える新製品

M100S形ガスタービンは、中国製鉄業界で加速する省エネルギー化および低・脱炭素化の動きに対応して開発された。同業界で広く採用されてきた従来の小型ボイラー蒸気タービン発電設備(BTG)を代替する新たな選択肢として位置づけられる。開発には三菱重工が長年培ってきた大型ガスタービンの最先端技術が結集されている。

本機は、豊富な運用実績を持つ高炉ガス焚き大型ガスタービン技術と、高性能・高信頼性を誇る最新鋭天然ガス焚きJAC形ガスタービン技術を融合して開発された。コンバインドサイクル出力10万kW級でありながら、従来製品と比較して小型化と高効率化を両立させた点が特徴。

■多様な副生ガスに対応、柔軟な運転を実現

製鉄所では高炉に加え、コークス炉や転炉から多様なガスが副生される。M100S形はこれらの混焼に対応し、ガス量の変動に応じた柔軟な運転や製鉄所内の負荷変動への迅速な対応が可能だ。高炉ガス焚きGTCCは、製鉄所副生ガスの効率的な活用により環境負荷を低減するだけでなく、エネルギーの有効利用にも大きく貢献する。

■プロジェクト概要と供給体制

淮鋼の製鉄所は江蘇省淮安市に位置し、GTCC発電設備は2027年の運転開始を予定している。受注窓口は三菱重工の南京法人、三菱動力燃汽輪機工程技術(南京)。M100S形ガスタービン本体および関連機器は三菱重工高砂製作所(兵庫県高砂市)で製作・供給し、その他機器は東方タービン(東方汽輪機有限公司)など、三菱重工のライセンス供与先である東方電気集団グループ企業を含む中国現地で調達する。

燃料には高炉、コークス炉、転炉からの副生ガスを使用。据え付けや試運転では現地に指導員を派遣する予定。

■巨大な置換需要市場への先行参入

中国製鉄業界では、省エネおよび低・脱炭素化対応として、発電容量が小さく低効率の既設BTGから高効率機への置換需要が拡大している。本需要の主流は出力10万kW級の機種だ。従来、この出力領域における高炉ガスの発電利用はBTGに限られていたため、中国では非常に多くのBTGが稼働中。

三菱重工が従来の小型BTGより高効率なM100S形を投入したことは、製鉄業界の高炉ガス有効活用市場における画期的な取り組みといえる。同社は今回の初号機受注を弾みとして、中国製鉄業界における老巧化した小型BTGの置換需要に先行して応えることを目指す。

■高い技術評価と実績が後押し

淮鋼の親会社である江蘇沙鋼集団は、中国東部の江蘇省を拠点とする世界有数の鉄鋼メーカーだ。同グループはすでに三菱重工製ガスタービンを5台採用しており、これまでに納入した機器が高く評価されたことも、M100S形の受注につながった。

高炉ガスは天然ガスなどに比べてカロリーが低く、ガスタービンの安定燃焼には高度な技術が必要とされる。三菱重工グループの高炉ガス焚きガスタービンの世界シェアは6割を超えており、この分野における技術的優位性は揺るぎない。既存ラインアップに加え、M100S形を新規投入したことで、先駆者としての存在感をさらに高めることが可能となる。

■今後の展開

三菱重工グループは今後、エネルギーの有効利用と環境負荷の低減に貢献する高炉ガス焚きGTCC発電設備の提案によるソリューション活動を積極的に展開していく方針だ。カーボンニュートラル社会の実現に向けたエナジートランジションの一翼を担う存在として、製鉄業界の脱炭素化を技術面から支援していく。

ニュースリリース