タダノが2月14日に発表した2024年12月期(1〜12月)連結業績によると、売上高は2,915億円(以下前期比104.0%)、海外売上高比率は62.3%となった。うち日本向け売上高は、建設用クレーン・車両搭載型クレーン・高所作業車が揃って増加し、1,098億4千5百万円(110.2%)となった。海外向け売上高は、北米を中心に増加したものの、欧州・中東が減少し、1,816億5千4百万円(100.6%)となった。
売価改善の効果や為替等の影響により、営業利益は237億7千8百万円(129.6%)、経常利益は210億7千7百万円(128.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益は欧州事業再生に伴う工場再編関連費用を特別損失に計上したため、66億4千2百万円(85.5%)となった。
2024年12月期おけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する中、各種政策効果もあり、緩やかに回復した。海外においても、一部地域に足踏みがみられるものの、景気は緩やかに回復した。
一方で、世界的な金融引き締めや米国の政策動向による影響、中国経済の先行き不透明感に加え、地政学的リスクの高まり、物価・人件費をはじめとしたコスト増加等もあり、世界経済の下振れが懸念される。
タダノの関連業界は、日本では、大規模工事が実施・計画されているものの、慢性的なオペレーター不足や2024年4月1日から適用された労働時間上限規制の影響見極めの動きもあり、需要は減少しました。海外においては、需要は北米・アジアは横ばいで推移、オセアニア・アフリカは減少したものの、中東・中南米等が増加し、全体としては増加した。
2024年9月、米国Manitex International, Inc.の株式取得等に関する契約を締結した。同社の買収は、タダノグループの主要3品目である「建設用クレーン・車両搭載型クレーン・高所作業車」のうち、車両搭載型クレーン・高所作業車のグローバルビジネス拡大につながり、将来的には、よりバランスの取れたポートフォリオ構成となることを期待している。なお、2025年1月に買収手続きは完了している。
また、2024年11月、IHI(以下、IHI)の連結子会社であるIHI運搬機械の運搬システム事業をタダノグループ会社化することを決定した。今後IHIが、新たに設立する会社(以下、新設会社)に対して、対象事業を継承させた上で、タダノが新設会社の全株式を取得する契約を締結した。タダノグループは「移動式クレーン」の分野では長い歴史とグローバルでの販売実績を有しているが、同事業が有する「固定式クレーン(港湾クレーン・タワークレーン)」は新たな製品群となる。また、タダノグループがドイツで生産する「ラチスブーム式クローラクレーン」とも親和性があり、世界中でニーズが高まっている洋上風力分野においても今後の活躍が期待される「リングリフトクレーン」も有している。タダノグループの事業領域(LE:Lifting Equipment)
における新事業分野への挑戦として同事業の買収を決定した。買収完了は、2025年7月を予定している。
タダノ2024年データ
■セグメント別の状況
セグメント別とは、タダノ及び連結対象子会社の所在地別の売上高・ 営業利益であり、仕向地別売上高とは異なる。
1)日本:日本向け売上高は、建設用クレーン・車両搭載型クレーン・高所作業車が揃って増加、海外向け売上高は横ばいで推移した結果、売上高は1,959億9千万円(106.2%)、営業利益は271億8千1百万円(103.7%)となった。
2)欧州:建設用クレーンの需要は増加したものの、生産制約の解消途上にあることと、工場再編の過程における生産効率低下により、売上高は782億6千2百万円(86.7%)、営業利益は115億2千6百万円の損失(前期は、138億3千4百万円の営業損失)となった。
3)米州:建設用クレーンの需要が増加する中、売上高は1,047億1千8百万円(110.5%)、営業利益は64億8千1百万円(91.3%)となった。
4)オセアニア:建設用クレーンの需要が減少する中、売上高は157億6百万円(102.6%)、営業利益は13億4千3百万円(64.0%)となった。
5)その他:建設用クレーンの需要が増加する中、売上高は74億8千6百万円(104.3%)、営業利益は6億1千7百万円(70.4%)となった。
■主要品目別の状況
1)建設用クレーン:日本向け売上高は、需要が減少する中、販売に注力した結果、500億4千8百万円(101.7%)となった。海外向け売上高は、需要が増加したものの、1,492億6千万円(99.5%)となった。
この結果、建設用クレーンの売上高は1,993億8百万円(100.0%)となった。
2)車両搭載型クレーン:日本向け売上高は、トラックシャシ供給が改善し、需要が増加する中、174億7千6百万円(112.1%)となった。海外向け売上高は、19億5千6百万円(81.1%)となった。
この結果、車両搭載型クレーンの売上高は194億3千3百万円(108.0%)となった。
3)高所作業車:日本の需要が減少する中、トラック架装式高所作業車の拡販に加え、長野工業株式会社(現:株式会社タダノユーティリティ)の買収効果もあり、売上高は242億8千3百万円(149.6%)となった。
4)その他:部品、修理、中古車等のその他の売上高は、484億7千4百万円(103.6%)となった。
■ 次期の見通し
タダノグループは、「中期経営計画(24-26)」を策定し、「Reaching new heights ~新たなステージへ~」をスローガンに、業界のリーディングカンパニーとして、顧客の安全と地球環境に配慮した新たな価値を提供するための戦略を推進する。
成長戦略の骨子として、(1)脱炭素化を加速、(2)新たな領域への挑戦、(3)強みを活かしたものづくり改革、(4)変革を支える足場固め、を掲げると同時に、持続的な成長に向けた「資本コストや株価を意識した経営」と「サステナビリティ課題への対応」を重視し、「世界にそして未来に誇れる企業」を目指す。
米国の政策動向による世界の政治・経済への影響や中国・欧州経済の先行き不透明感に加え、地政学的リスクの高まり等もあり、より一層先行き不透明感が増している。
タダノグループを取り巻く市場環境については、日本では、公共投資は堅調に推移し、需要を下支えするものの、住宅関連などの民間工事に弱さが見え始めている。海外では、資源関連やインフラ関連プロジェクトが堅調な中東や中南米が底堅く推移するとみられるものの、先行き不透明感が増す欧州や北米では需要減少が見込まれ、全体として弱含みで推移する見込み。
原材料価格の上昇は落ち着きつつあるものの、人件費をはじめとしたコストは増加傾向にあり、製品価格の見直し等による利益確保を継続する。また、将来の持続的成長に向け、引き続き電動化などの環境対応をはじめとした新
製品開発や、買収企業の統合・生産体制の再構築に向けた投資を計画している。
2025年12月期の連結業績予想については以下のとおり。
売上高3,400億円(16.6%増)、営業利益240億円(0.9%増)、経常利益200億円(5.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益150億円(125.8%増)。
為替レートは、148円/米ドル、155円/ユーロを前提としている。
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