コマツの小川啓之社長は12月26日、年末恒例の合同取材会を開催し、2024年度の業績状況や中期経営計画の取り組みなど多岐にわたる説明を行い、質問に応えた。今回は、そのうち1月にスタートする米国のトランプ政権発足で最も危惧される「関税」について、建設機械に与える影響などをピックアップしてみた。以下は、小川社長の回答を要約抜粋。
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トランプ政権になって、最も危惧していることは関税だ。明らかに上がるだろうと言っているのがメキシコ、カナダ、中国。
コマツは北米での販売の半分は北米で生産しており、残り半分は輸入している。北米生産においては、当然、部品などは、中国、メキシコ、カナダから調達しているので、ここに関税がかけられると部品調達における影響がでてくる。ただ総額で見ると、それほど大きな額を調達してるわけではないので、全体の経営における影響はそれほどではない。
一方、コマツはアメリカでは
輸出企業だ。超大型の鉱山機械は全てアメリカで生産してグローバルに輸出している。2017年、ジョイ・グローバル社を買収して以降は特にそういう傾向が強い。
コマツの貿易収支を見ると、毎年輸出の方が輸入に対して上回っており、毎年約1,500億円、北米からの輸出の方が輸入より多い状況であり、アメリカでは輸出企業ということになる。
従業員も8,000名程度雇用しており、代理店も約9,000名程度、合わせて2万人弱を雇用している。投資も毎年300百万ドル、約450億円ぐらい、直近では新しい工場、新しい本社も300百万ドル程度投資している。そういった意味で、個別では、アメリカの経済に貢献しているんだということを、いろんなところで申し上げている。
関税でやっぱり我々が気をつけなければいけないのが報復関税だ。例えば、アメリカから出荷した超大型機械にカナダが25%の関税をかけた場合などだ。コマツは、超大型機械を北米で生産してグローバルに輸出しているが、その輸出を考えた時に、非常に大きな影響を受ける。カナダ、オーストラリア、中南米、 それからアフリカ、ここで超大型機械市場の大体80%以上。カナダは超大型機械の市場だから、アメリカからカナダに輸出する機械に報復関税が課せられた時に非常に大きな影響を受ける。
部品の調達については、コマツはクロスソーシングという体制を構築しているから、別にカナダ、メキシコ、中国で調達しなくても、例えばインド、インドネシア、タイなどから部品調達できる。
これは従来からそういった体制を構築しているし、単純にコスト比較をして最適な調達先っていうのを変えていけば、部品調達における影響は最小限というふうに考えている。
1番大きい輸出は日本で、 キーコンポーネントだとか、北米で生産していない機種の輸出というのは、日本がいま関税は殆どゼロだが、10%になると非常に大きな問題だ。我々が1番危惧してるのは、製品そのものに関税かけられること。代替ソースがないから関税をかけられた時は、やはり1番困る。
では北米で生産するのかという話になるのだが、自動車と違い建機のボリュームは2桁違う。車で1億台だが建機はおよそ130万台で2桁違う。こういった量が少ない中でその各地域で生産することは投資の重複になる。だから、そういった意味でもなかなか難しい。では北米に生産を持ってくるかというと、北米のコスト競争力は正直言ってなく、鋼材や人件費も非常に高く、競争力がないので難しい。
だから、我々が懸念してるのは、製品に対して関税の影響が及ぶというのが1番危惧にしている。ただ、トランプ政権が高関税政策をやると、北米そのものが傷んでくる。最終的にコストを負担するのはエンドユーザー、つまり顧客になる。これは我々の機械だけじゃなくて消費者だと思う。そうすると、当然またインフレが再燃する。欧米において、いまやっとインフレが少し収まりかかっているが、またインフレが再燃することなると、今度また金利上げるということになるので、そういったことは多分しないだろうというふうに思う。
1月20日、トランプ大統領がどういった方針を発表するのか我々としては注視することになるが、おそらく移民問題と関税だろう。それに対してきちんと対応していくことが非常に重要だ。
参考:コマツの統合報告書
参考:コマツの2025年3月期第2四半期決算説明資料
参考:中期経営計画
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