・国内拠点への投資を加速し、半導体材料事業をさらに拡大
・AI向け半導体の需要拡大に伴うアジアでの需要増に対応
富士フイルム(東京都港区)は12月5日、半導体材料事業をさらに拡大するため、熊本県菊陽町に立地する生産拠点に先端半導体材料であるCMPスラリー*1の生産設備を増強すると発表した。CMPスラリーの生産能力を強化することで、AI向け半導体の需要拡大に伴うアジアでの需要増に対応する。設備は2025年1月の稼働を予定している。
5G/6Gによる通信の高速・大容量化、自動運転の拡大、AIやメタバースの普及などにより、半導体のさらなる需要拡大と高性能化が見込まれている。このような中、半導体製造プロセスで使用する半導体材料では、より高品質・高性能な製品をグローバルで安定的に供給することがますます重要となっている。
CMPスラリーは、硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を均一に平坦化する研磨剤で、年率13%*2の高い成長性が見込まれている。富士フイルムは、先端半導体の製造工程に必要な銅配線用CMPスラリーにおいて世界でトップシェア*3を有しており、安定供給と品質に対する高い顧客要求にこたえるために銅配線用をはじめとするCMPスラリーの現地生産化を進めている。米国アリゾナ州、台湾の新竹市および台南市、そして韓国天安市にCMPスラリーの生産拠点を有しているほか、2024年1月より熊本拠点においてCMPスラリーの生産を開始した。
今回、AI向け半導体の需要拡大に伴うアジアでのCMPスラリーの需要増に対応するために、半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(神奈川県横浜市)が、約20億円を投じ熊本拠点に、銅配線用を含めたCMPスラリーの生産設備を増強する。同設備投資により同拠点のCMPスラリーの生産能力を約3割拡大する。
富士フイルムは、半導体製造の研磨工程で使われる材料として、CMPスラリーのほか、ポストCMPクリーナー*4を提供している。連続する工程で使用される2つの材料を組み合わせて提案できる強みを生かして顧客が抱える課題を解決し、半導体のさらなる性能向上に寄与していく。
富士フイルムは、フォトレジスト*5やフォトリソ周辺材料*6、CMPスラリー、ポストCMPクリーナー、薄膜形成材*7、ポリイミド*8、高純度プロセスケミカル*9など半導体製造の前工程から後工程までのプロセス材料や、イメージセンサー用カラーフィルター材料をはじめとした Wave Control Mosaic(ウエイブコントロールモザイク)™*10などをグローバルに展開。最先端からレガシーノードまで半導体製造プロセスのほぼ全域をカバーする豊富な製品ラインアップに加え、日米欧アジアの主要国に製造拠点を有するグローバルな安定供給体制や高い研究開発力を生かしたワンストップソリューションの提供により、顧客の課題解決に取り組み、半導体産業の発展に貢献していく。
<設備投資の概要>
場所:熊本県菊池郡菊陽町(富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング株式会社 九州の工場内)
総投資金額:約20億円
投資内容:CMPスラリーの生産設備
稼働開始時期:2025年1月
* Wave Control Mosaicは、富士フイルム株式会社の登録商標または商標。
*1 硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を均一に平坦化する研磨剤。CMPは、Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。
*2 米国調査会社「Linx Consulting」の半導体材料レポート2023年版より。
*3 「富士経済」の「2024年半導体材料市場の現状と将来展望」レポートより。
*4 CMPスラリーによる研磨後に、金属表面を保護しながら、粒子、微量金属および有機残留物を洗浄するクリーナー。
*5 半導体製造の工程で、回路パターンの描画を行う際にウエハー上に塗布する材料。
*6 半導体製造のフォトリソ工程で使用する現像液やクリーナーなど。
*7 低誘電率の絶縁膜を形成するための材料。
*8 高い耐熱性や絶縁性を持つ材料。半導体の保護膜や再配線層の形成に使用される。
*9 洗浄・乾燥工程に使われる高純度薬品。半導体製造の洗浄・乾燥工程で異物を除去したり、エッチング工程にて金属や油脂などを取り除くために使用する化学薬品。
*10 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOSセンサーなどのイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。